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S級探索者は推し活のために探索する  作者: 黒井隼人


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S級探索者はのんびり推しの配信を眺める


「それじゃあ今日は雑談配信やっていこうか」

『おー!』

『待ってた』

『ダンジョン探索だけじゃ疲れるもんね』


配信を始めたみらいに対してコメントが流れ始める。

探索者ギルド公式の配信者となったみらいだが、それでも毎日ダンジョン探索の配信をしているわけではない。

本人はたまに休みを取るつもりでそれ以外は基本的にダンジョン配信をするつもりだったようだが、そこはクロウとシェルフが止めた。

クロウの傍にいていささか感覚がバグっているが、本来ダンジョン探索とはいつ死んでもおかしくないほどの危険な行為。それを毎日続けていたらその緊張感や疲労から普段しないようなミスをしてしまい、それが命取りとなりかねない。

故にみらいは長くても三日探索配信したら一日か二日は休息をとることを約束してもらった。

といっても、あくまで休息に関してはダンジョン探索に関してだけ。それ以外に制限をつける気はクロウ達もなかったし、もともとみらいは配信でリスナー達と話すのが好きなので、こうして普通の雑談配信として休息日に配信することとなった。


『そう言えばみらいちゃんこの間変な世界に召喚されてたけど、あれから特に何も起きてない?』

「うん、大丈夫だよ。クロウさんのおかげでこっちに帰ってこれたし、あの件に関しても調べてくれているから」

『そうなん?クロウさん』

『んあ?まあ、一応ね。といっても何の進展もないのですが(´・ω・`)』

「そうなの?」

『調べてみたけど、過去にああいった事例があったって報告はないんよねー。といっても、むしろ今回みたいに発見できたのが稀であって、発生している可能性のある件はいくつかあるんだけど』

『どういうこと?』

『ダンジョン内の行方不明者って結構いてね。魔物にやられたり転移トラップとか引っかかって行方不明になったとかもあるんだけど、大抵痕跡が残るんよ。遺品だったり、その付近に転移トラップがあったりね』

『あー、確かにたまにニュースとかで見るよなー』

「だね。私も何度か見かけたことある」

『それで、ごくまれにだけどそう言った痕跡が全くない行方不明があったりするんだよ。もともとそう言った痕跡がない行方不明に関しては、モンスターに攫われたとか、異世界に迷い込んだとかそう言う噂が流れていたんだけど…』

「今回の私の一件で異世界に呼ばれた可能性が出てきたんだ」

『うむ(―ω―)。だけど、今回の件でもそうなんだけど、ああいう転移魔法陣って時間が経つとダンジョンの魔素に紛れて痕跡が消えちゃってね。それ以降の調査ができなかったんだ』

『クロウさんでもできなかったんだ』

『おまえら俺をなんだと思っているんだ(´・ω・`)』

『万能超人』

『すべてを魔法で解決する男』

『みらいちゃんの敵絶対殺すマン』

『お前ら(´・ω・`)』

「あはは…クロウさん、今後もあんなことが起きたりするの?」

『絶対にないとは言えないねー( ˘ω˘ )まあ、みらいちゃんに関してはこっちで何とかしておくけど』

「うん、困ったときはお願いね」

『任せんしゃい( ˘ω˘ )』

『すごい安心感』

『クロウさんがやると言ったら本当にやるからなぁ…』

『良くも悪くもな…』

『どういう意味じゃい(´・ω・`)』

「クロウさん、時々とんでもないことやるもんね…」

『みらいちゃんまで…(´・ω・`)解せぬ』


そんな雑談をのんびりとしていく。その後他愛もない話をしていると。


「あ、そう言えば」


思い出したように声を上げ、みらいがごそごそと何かを探し始める。


『お?なんぞ?』

『なになに?何か見せてくれるの?』

「うん、ちょっと待ってね…えっと…確かここに…あったあった!ほら、じゃーん!」


そう言って笑顔で見せてきたのはみらいの探索者カード。といっても個人情報のほうはしっかり隠されており、確認できるのは名前と顔、そして現在の探索者のランクだけだ。そのランクの部分にはDという文字が書かれていた。


「昨日報告に行った時にね、D級に昇格できたんだー!」

『おおー!おめでとう!』

『まだ探索者になって一月だよね?それでFからDって早いの?』

『通常の速度に比べると早い方だよ』

『ふつうはE級になるのにしばし慣れも必要になるから一月ほど、次のD級には慣れからくる慢心とかも踏まえて二月ほどかかるから、大体三月ほどかかるのものだね』

『つまり通常の三倍の速度でランクが上がったと?』

『赤い人かな?』

『その銃は赤く塗らないのか?』

『貴様…塗りたいのか?』

『ん?…へっ、冗談だよ』

『おう、ネタの渋滞やめーや』

『それにしてもそんなに早いなんてこういっちゃなんだけど、クロウさんなにかした?』

『ん?俺は特に何もしてないよ( ˘ω˘ )むしろ少し評価厳しめでお願いしたくらいだし』

「え、そうなの!?なんで!?」

『ほら、N級騒乱の時、みらいちゃん俺達と一緒にN級と対峙してたやん?』

「そうだね」

『ああいう圧倒的に実力差がある相手と対峙すると感覚…俗にいう恐怖センサー的な奴?あれが麻痺するんだよ』

『どういうこと?』

『そうだな…一つ例を出すと…例えばみらいちゃんは今はランクはDだ。そのランクだとCだと相手次第、Bだとまず勝ち目がないんだよね』

「うんうん」

『通常ならばそれが肌でわかる。魔力の多さとか、やばさが見てわかるし、そう言った危機感値を持つのが探索者にとって大事だからね』

『そうだね。たまに配信者の中にも自分より上のランクの魔物に挑んでそのまま、ってこともあるし』

『でも、それって普通に育っていく物じゃないの?』

『普通はね。でも、みらいちゃんはこの間俺達とN級魔物と対峙した。それはつまりB級やA級より上のさらにやばいやつと相対したってことだ。そうなると当然比較しちゃう。そして比較した結果考えちゃうのが『あれよりマシかも』って考えだ』

「あー…」

『あれか、バンジージャンプとかで五十mでも最初無理無理言ってた人が百m飛んだ後だよ余裕で飛び込む的な』

『あー、何となくわかるかも、ゲームとかでもスーパープレイ見た後に上手い人のプレイ動画見てもなんかしょぼく見えるというか…』

『あー…あるあるやな…。いや、どっちもすごいのはわかるんだけど、上を見るとその分その途中のところがしょぼく見えるというか…』

「あー、私もそう言うのあるかも…」

『うん、それが起こりえたもんでね。ちょっと感覚を戻すために少し厳しめの査定にしてもらってたんだ』

「へー…」

『まあ、速攻で突破されたけどね(’-‘)』

「あはは…」

『でも、その審査も通ったってことは文句なしの実力を持っているってことでしょ?』

『まあねー』

「まあ、クロウさんがそう言うなら少し気を付けておくね」

『そうしてくだしあ( ˘ω˘ )どうにもやばそうだったら手を貸すけど、基本的に手出ししたくないんで』

「うん、わかってる。ありがとうね」


その後は他愛もない話を進めながら和やかな雰囲気で配信が続いていった。


そして翌日。朝早くにスマホへとメッセージが入り、呼び出しをされたクロウは探索者ギルド内のギルマスの部屋へと来ていた。


「やあ、朝早くからすまないね」

「それだけ急ぎの案件ってことか?」

「いや、急ぎってわけじゃない。ただ、君には早めに伝えたほうがいい事柄なんでね」

「どういうことだ?」

「これを見てほしい」


そう言って何枚かの紙をクロウへと差し出してくる。

そこに書かれているのは何人かの探索者からの報告らしく、それらを読み進めていくうちにクロウの表情が険しくなっていく。


「こいつは…どういうことだ?」

「…はっきりとしたことはわからない。故にこれから要調査という形になる」

「……こいつが俺と関係があると?」

「それに関しても不明だ。だが…知らせておくべきだと判断した」


その言葉に渋い表情を浮かべつつ再度紙へと視線を落とす。

そこには探索者達が何者かに襲撃を受けたという報告が上がっていた。それだけならばよくある事でもある。

探索者はそれなりに規律があるが、それでも力がモノをいう世界。それゆえに中には他者を襲撃して装備や素材を奪う盗賊行為に及ぶ輩もいる。しかし、そう言う輩であってもダンジョン入り口のセキュリティを突破することは至難の技であり、それをすると即座に把握されて捕まるので、そう言った盗賊行為を行う人物であってもゲートは普通に通らざるおえない。

まあ、だからといってダンジョン内での略奪行為を咎めることになっているのかというとそう言うわけでもないのだが。

そして、本来ならばそこからこの襲撃の犯人を割り出すことができたのだが、その肝心な襲撃犯の中に、該当する人物がいなかった。なぜなら…。


「犯人は子供…しかも六歳ほどの背丈の子供…」

「ああ。本来その年の子供がダンジョンの中に入ることは許されていない。たとえ保護者がいたとしても、だ」

「だというのにそんな存在に襲撃を受けた…か。この間のカーミラみたいに子供の魔物という可能性は?」

「それに関してもわからない。特徴を聞いても該当する魔物は存在しなかったし、襲撃された探索者からもどことなく魔物とは違う気がしたという証言もある」

「………つまり、俺と同じでダンジョン内で育った子供の可能性があると?」


クロウの言葉にギルマスが頷く。


「だが、時期が合わんだろ」

「ああ。その襲撃があったダンジョン…B級ダンジョンではあるが、そこもおよそ二十五年ほど前にダンジョンの入り口の監督はしていた。それ以降、あそこに赤子を捨てることはできないはずだ」

「だよなぁ…」

「現時点で考えられる可能性は二つ。一つは異世界から来た存在だ」

「…ああ。この間のみらいちゃんの一件か」

「そうだ。向こうから呼び込むということは、何らかの事故でこちらに迷い込んだという可能性もありうる。これならばこちらから把握することはできないがゆえに、そこにいたとしてもおかしくはない。問題は…」

「もしそうだったとしてなぜ襲撃してきたか、ってことか」

「そうだ」


何らかの事故で迷い込んできたというのであれば、同じ人の姿を見れば最初は対話を求めるはずだ。ここがどこであるのか、どうすれば帰れるのか、そこら辺を聞こうとするはず。だが、報告書を読む限りそういった対話をする前に襲い掛かってきたようだ。


「そして二つ目、これがクロウを呼んだ理由なのだが…」


ギルマスがどことなく言いにくそうにしている。それゆえにクロウが代わりに口を開いた。


「俺と同じようにダンジョンに捨てられ、生き延びた人の子供…だろ?」


ギルマスは渋面を浮かべながら頷く。


「件の事件がおよそ三十年前、どれくらいの割合で生き残っているのかわからない。そもそも本来ならばあの事件によって捨てられた子供達は皆死亡したと思われていた。しかし…」

「俺という例外があらわれた」

「ああ。そうなると彼らの中で一番年上と考えて三十歳。六歳くらいの子供がいてもおかしくはない」

「……また面倒だな…」

「ああ。この一件、まだ君が動くべきかどうか、判断に悩む。襲撃を受けたとはいえ、死者は出ていない…というか、B級探索者であっても、勝つことはできなくても対処はできる程度の問題だ。言っては何だがこの間のN級騒乱ほどの緊急性もあるわけでも無いいじょう、君が動くほどの事ではないと判断できる。とはいえ…」

「俺と同じなら無視もしにくい…か。話は分かった。とりあえず今は俺は静観しておく」

「いいのかい?」

「ああ。気にならないと言えば嘘になる。だが、どうにも何かしらの作為的な物を感じるんだ」

「作為的な物…例の探究者…か?」


その言葉にクロウは頷く。


「なんというか、誘われている感じがしてな。俺一人なら問題ないが…あんたみらいちゃん達巻き込むだろ」

「む」

「この間みたいなことになっても困るんでな。動くとしてもしっかりとした準備をしておきたい」

「そうか…。まあ、先ほども言ったが今回は今のところ緊急性はない。君の予感通り、何かしら作為的な物があるのならば慎重に事に当たってほしい」

「了解」


そう答え資料を手にクロウはギルマスの部屋を出た。



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