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S級探索者は推し活のために探索する  作者: 黒井隼人


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S級探索者の同居人は襲撃される


「な~んも起きねぇな」


シェルフたちを交えたギルドでの会議。そしてその後行っていたミスリル採取からの対策用装備の作成。それらを行ってからおよそ二週間。その間もみらいたちは探索配信をしていたが、特に大精霊候補の子たちが接触してくるようなことはなかった。


「そうねぇ。でもそれ相応の痕跡はところどころに見かけたわね」


クロウの背もたれとなっているマーサが顔を持ち上げ答える。

今日は探索配信がお休みの日で、シェルフはみらいと打ち合わせに、六華はいつも通り学校へと行っており、クロウも自室でアクセサリー作成を進めていた。


「火と水そして土、風の精霊はシェルフでこっちにいるからか、その三つの痕跡しか見つからなかったな」

「そうね。クロウの話からするとシェルフがいなくなってからおよそ二年経過している。それなのに新しい候補がいないということは、それだけ特殊なのかもしれないわね」

「だなー。まあ、こっちとしてはありがたいが」


シェルフに代わる大精霊候補がいないということはそれだけ他の精霊たちの実力が低いということになる。そうなると警戒すべきなのは大精霊の五人とその候補である三人ないし、四人となる。闇の大精霊が動くかどうか、そして光の大精霊候補がいるかどうか。そこらへんもいまいちわかっていない。


「シェルフは光の大精霊候補に関しては何も知らないんだっけ?」

「ああ。どうも特殊な生まれらしく、光の精霊自体が稀に産まれる程度で見たことある精霊のほうが少ないらしい。産まれたとしてもその特異性からか、隔離されたりするらしくて、他の候補の子たちとも会うことはないらしい」

「つまりいる可能性はあるけど、いない可能性も十分にあるという事かい」

「そういうこと。仮にいたとしても表に出てくるのかどうか」


風、火、土、水の四精霊に関してはシェルフからある程度話を聞いているから、それなりに情報を得られたが、光と闇に関してはシェルフですら情報をあまり持っていない。それだけ情報統制がされているのか、数が少ないがゆえに目に付くことがないのか、それとも情報自体が少ないのか。


「ま、なんにしろ今痕跡が見つかっているのは三人だけだ。それに同時に活動しているんじゃなくて個別にいろんなダンジョンを探索しているみたいだ。いつかは接敵するだろうが、まとめて戦うなんてことはなさそうだ」


痕跡は複数見つけてはいるが、どれも一つの属性の痕跡だけだ。複数の痕跡が見つからないことから、それぞれ単独で動いていると予測がつく。複数集まられた場合クロウたちS級なら問題はないが、みらいたちでは対処しきれないだろう。まあ、そうなった場合でもクロウが動くから問題ないと言えば問題ないのだが、他の探索者への被害が懸念されるが、そこらへんはまあどのダンジョンでもある事なのでどうしようもない部分でもある。


「それにしても…相手の方はどうやってダンジョン間を移動しているのかね?」

「さてなぁ…そもそもダンジョンに来ている方法も不明だからなぁ」

「確かに、こっちと同じように入り口ができているのならもっと多くの精霊が来てもおかしくないものね」

「そうじゃないということはそれなりに制限されているのかもね。裏で糸を引いているであろう探究者がどう動いているのかにもよるのかなぁ」


世界の狭間として出現していると考えられているダンジョン。隣接している世界ならば移動も容易ではあろうが、それでも別世界に移動する手段がないとできないものだ。

転移ができるクロウですら入り口のないダンジョンへの転移は難易度が高い。不可能ではないのだが、そのダンジョン内の構造などがわからない以上、壁の中や床の中といった場所に転移することもあり得るし、特定のダンジョンに行ける保証もないのでリスクとリターンが見合ってないのだ。


「もし引き込んできているのが探究者だとしたら、ダンジョン間を自在に移動できる手法を持っているってことかね」

「………そう言えばハデスの時もダンジョン間を移動できるゲートとかあったな」


あの時の戦いで崩壊したダンジョンと最初に潜ったダンジョンは別のダンジョンだった。そしてあのメンツの中にダンジョン間を移動できそうなスキルを持った魔物はいなかった。つまり、ダンジョン間を移動できるゲートを生み出したのは別の存在だということだ。あの中でそれができそうなのは探究者だけだ。ハデスやタマモもそれなりに魔術には精通していたようだが、どうにも毛色が違う感じだったのでおそらく違うだろう。


「探究者が移動を手助けしているのか、それとも移動手段を渡したのか…」

「後者じゃないかな?もし手助けしているとしたらばらけさせる必要ないだろうし」

「確かになぁ。そもそもあいつなら俺達の居場所とかわかりそうなものだけど」


いまだに探究者ができる事がわかっていないのでどうにも策を練りにくい。


「とりあえずしばらくは待ちでいいんじゃないかしら?クロウが作ってる腕輪だってもう少し時間かかるでしょ?」

「そうなんよねぇ…地味に調整に時間かかってる…」

「調整もそうだけどミスリル集めるのが時間かかったんじゃないの?」

「そうなんよねぇ…」


あれから数日かけてミスリル集めをしていた。本来だったら一日か二日で終わると思っていたのだが、意外にミスリルゴーレムが現れず、現れたとしても少量しかミスリルを落とさなかったので集まりが悪かったのだ。結果予定よりもアクセサリ作成に取り掛かれる日が後にずれてしまった。それゆえに作成や調整に想定以上の時間がかかってしまったのだ。


「まあ、相手方がまだ動かないならそれでいいんじゃないかな?最近は作業配信であの子たちも休めてただろうし」

「それならいいけどなぁ。というか、あんなんで需要あるのかね?」

「さあ?そこらへんは私にはわからないわね。あなたのほうがわかるんじゃない?再生数とかそう言うので」

「あー…まあ、確かに再生数は悪くはなかったが…あれって俺の戦い方が珍しいからだろ」

「なのかね?まあ、そこらへんはわからないけど好評ならいいんじゃないかしら?」

「どうなんだろうなぁ…」


確かにクロウがA級魔物をワンパンで倒している様を珍し気に見ている人が多かった。しかし、それが当たり前になると今後のみらいたちのチャンネル運営にいろいろと影響をあたえそうなので、あまりやりたくなかったのだが、二人に押し切られて結局他の日の探索の様子も作業配信として流すことになった。あれがよかったのか悪かったのかはいまだにわからない。


「ま、明日からはまた詩織さんと一緒に探索するんだし、元の雰囲気に戻るんじゃないかい?」

「だといいけどなぁ」


N級騒乱のせいで当初想定していたチャンネル運営とは全く別の方針になってしまった。それも一つの形だろうが、あまり表に出るのを望まないクロウとしてはどうにも不満が募っていたのであった。



翌日


とあるC級ダンジョンにてみらい、シェルフ、リル、エメルの四名と詩織とフィンの二名、合計六名が集まった。


「さて、それじゃあ打ち合わせの通りに今日はこのダンジョンを探索でいいのかな?」


詩織がみらいたちに確認する。

現時点でまだみらいたちはD級探索者。その実力からもう少しでC級になりうるだろうが、それでもまだ、C級ダンジョンには少し早いかもしれない。

それでも詩織とフィン、リルがいるからC級ダンジョンに行っても問題ないだろうと許可を得ることができた。


「お願いします。すいません、詩織さんはもっと上のところで探索したいのに…」

「気にしないで。こういうことも必要になると思うから」


クロウ達S級とかかわるようになってから、詩織も明確にS級を目指すために鍛錬をし始めた。

実力としてはまだまだ届かないが、それでもソロで戦えるだけの実力を身に着ける事。そしてクロウ達が戦うように相手と戦いながらも周囲を見れるだけの余裕や視野の広さを持つべきだというのがわかった。

詩織としても実力は少しずつ上がっては来ているが、どうしても戦いになると視野が狭くなってしまう。だからその分みらいたちのフォローをしながら戦えるようになれば、その分視野を広く持てるかもしれないと思っているのだ。


「にしても本当にくるのか?シェルフと同じ大精霊候補ってやつが」

「さあ…?それに関してはわからないかな。ただ、痕跡はいろんなところにあったからいるのは確かなんだよね」

「その痕跡もいろんなダンジョンにそれっぽいのがあったから、どこにいるかまでは本当にわからないんだ」


フィンの疑問にシェルフとリルが答える。実際クロウが作業している間に遥たちがいろいろなダンジョンを探索していたが、痕跡は見つかれど大精霊候補に関しては発見できなかった。


「マスター曰く、探究者の助力でいろんなダンジョンを探索しているだろうって。だからいつ会うかわからないのもあって警戒だけはしておかないといけないんだよね」


クロウ自身もある程度発見された痕跡から法則性や居場所を探ろうとしたのだが、それでも何もわからなかったので、基本的にダンジョン探索しているときは警戒するようにと言われている。

特にシェルフは同じ精霊であるがゆえに顔を知られており、ターゲットにされやすいのもあるからだ。


「まあ、危険なのはどのダンジョン探索でも変わらないから、警戒はいつもしておかないとね。とりあえず問題ないのなら配信の準備を始めて探索をしましょうか」


詩織の言葉に全員が頷き、それぞれ準備をし始めた。



ダンジョン内へと入り、配信を開始する。


「こんみらい。今日はダンジョン配信をしていくよー」

『待ってた』

『今日はどこ行くの?』

『お、しおりんもいる』

『最近は毎回一緒に探索してるね』

『なんかあったの?』

「まあそんなところ。といっても明確に何か起こったというわけじゃなくて起こりそうって感じだけどね」

「そそ。それで一番巻き込まれやすそうな私達のサポートとして来てくれたんだ」

『あー…でも、その元凶って主にクロウさんじゃ…』

『俺は悪くねぇ(´・ω・`)』

『ご本人も巻き込まれた側だからねぇ…』

『探究者とかいうよくわからん奴に目をつけられたばかりに…』

『どうするのクロウさん、あいつのせいでみらいちゃんの配信に弊害が出てるよ!』

『そのうち消し飛ばしとくから(´・ω・`)』

『うーん物騒』

『でも冗談じゃないんだろうなぁ…』

『もともとどこにいるかわからないから手が出せないだけだからねぇ…』


みらいと詩織の二人がそれぞれの枠で配信しているので、各々でコメントが流れていく。


「まあ、私としてもS級であるクロウさんたちの戦いを身近で見れるのはいい勉強になりますので」

『……なるの?』

『何やってるかわからんと思うんだけど…』

「それでも戦い方や周囲の見方とか学べるところは多いからね。それに目標が明確にわかるほうがやる気になるし」

『う~ん、ストイックやねぇ』

『こういう高みを望む姿を見ると応援したくなるよね( ˘ω˘ )』

「そう言うならまた稽古つけてあげたら?」

『時間がある時にね( ˘ω˘ )』

「はい!その時はよろしくお願いします」


クロウのコメントに詩織は笑みを浮かべて答えた。

雑談もほどほどにダンジョン探索を進めていく。


『ここってどんなところなの?』

「ここは動物系が多い森林タイプのダンジョンでC級ダンジョンだね」

「猪とか熊とかそう言うタイプの魔物が多いかなぁ。一撃が重いから当たると結構厳しいんだ」

「ですね。だから極力ダメージを受けないように気をつけましょう」


そう言いつつ進んでいく。そして何度か該当の魔物と接敵するが、危なげなく討伐していく。


『うーん、安定感がやばい』

『B級のしおりんもいるし、みらいちゃんやシェルフちゃんもC級相当の実力はもってるからねぇ』

『それにリルやフィン、エメルといった強い従魔もいるわけだからね。そりゃ余裕よ』

『もう一つ上のランクでもよかったんじゃないかな?』

「どうでしょうね。あまりリスクのある事はしない方がいいんですが、それでもある程度のリスクは許容しないといけない部分もありますし…」

『平常時なら少しくらいは言いと思うけど今はねぇ…(´・ω・`)』

『なに、なにかあんの?』

『そういやクロウさんもミスリル集めてたね。何かあるってことか』

『最近掲示板では不可解な痕跡がちらほら見かけているっていうし、それ関連?』

『そんなところ( ˘ω˘ )どこまで言っていいか今のところわからんから何も言えんのだけど』

『そうなんだ。ちなみにみらいちゃんたちは?』

「私たちは巻き込まれる可能性が高いのである程度聞いています」

「といっても、まだ何も起きてないからねぇ。だからこっちから言えることはないんだ。ごめんね」

『まあ、クロウさんですらいえないことをみらいちゃんたちに求めるのは酷よな』

『それだけ情報統制されてるってことだしねぇ』

『まあ、まだ事が動いてないからね( ˘ω˘ )動いたら必要な分は説明するよ』

『ならそれまで待とうか』

『まあ、クロウさんが関わるなら大抵のことは何とかなるでしょ』


みらいたちは周囲を警戒しながら進み、クロウたちリスナー達は各々でコメントで会話していく。そんな中。突如フィンとリルが何かに反応した。


「リル!」

「エメル!」

「わう!」


僅かに遅れてエメルも何かに気が付いたようで、フィンが詩織を、リルがみらいを、エメルがシェルフを背に乗せてその場から飛びのいた。

直後…


ドゴォォォォォォン!!


すさまじい爆音とともに業火がみらいたちのいた場所へと叩き込まれた。


『なにごとぉ!?』

『え、炎!?そんなの使うやつがいるのか!?』

『………かち合ったか』

『クロウさん?』


すさまじい熱と爆風。それによって周囲の木々があおられ、火が燃え移る。しかし、次の瞬間には広がった火がどこかへと集まり始めた。


「これは…」


その光景に驚きの表情を詩織は浮かべていた。


「久しぶりだなぁ…」


集まる先、そこに一つの人影が現れる。


「やっと見つけたぜシェルフ!!」

「イフ…!」


炎のような真っ赤な髪をした少年、イフは好戦的な笑みを浮かべてシェルフを見据えていた。



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