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S級探索者は推し活のために探索する  作者: 黒井隼人


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S級探索者は素材集めをする


とあるA級ダンジョン


「さて…やりますか…」


静かに一人つぶやくクロウ。軽く体を伸ばして準備運動をしてからダンジョン探索へと挑む。


「マスター準備良いー?」


そんなクロウの耳についているインカムからシェルフの声が聞こえてきた。


「いいけど本当にやるのか?」

「うん。ちょうどいろいろなタスクが溜まっているからそれの消費もしたいって話だったからね。せっかくだからマスターの探索を配信して作業配信しようかなって」

「ご迷惑だったでしょうか…?」


シェルフの言葉に対し、同じくインカムからみらいの申し訳なさそうな声が聞こえてきて思わずため息を吐いてしまう。


「まあ、許可しちゃったからいいけどさ…。需要あるんかね?」

「そこらへんは大丈夫でしょ。それになんだかんだ言って公式配信者ではあるけど、内輪のノリが強いのは確かだし」

「まあ、それもそうだがな」


探索ギルドの公式配信者として活動しているみらい達。定期的なダンジョン探索や雑談配信などで着々とリスナーを増やしてはいるが、それでも探索者になる前にいたリスナー達の割合が高く、昔の内輪の状態に近くなっている。

新規リスナーに関してもそのノリになじんできている部分はあるので、問題はないのかもしれないが。


「公式配信者がそれでいいのかはいささか疑問はあるがなー」

「公式だろうとなんだろうとその配信者の色が出るのは仕方ないことじゃない?」

「まあ、そうなんだがな…」

「それにマスターがよく出るのもみらいさんの配信の特色の一つだよ!」

「それに関してはかなり不服なんだがな!」

「アハハ…」


明らかに不服そうにしているクロウに対してみらいも苦笑を浮かべてしまう。

基本的にクロウは配信には出ないのだが、それでもみらいたちだけで対処できない問題が発生する頻度が多く、クロウの立ち位置が一リスナーではなく、準レギュラーレベルにまでなっているのが不服なのだ。


「まあ、マスターじゃないと対処できないことが起きてるからねぇ。N級魔物とかそう言うのならまだしも、異世界転移とかめったに起きる物じゃないよ?」

「俺もまず聞かんからな…ほんと、なんでこんなトラブルが多いのやら…」

「なんででしょうかね…?」

「取れ高多いのは悪くないんだけどねー。っと、こっちのほう配信準備終わったよ」

「へいへい。んじゃドローン飛ばすか」


シェルフに言われて配信準備を進める。


「………うん、こっちでも映像受信完了したよ。それじゃシェルフちゃん、始めよっか」

「はいはーい」


そう言って二人は配信を始めようとする。その間もトコトコとクロウはダンジョン内を呑気に歩いていた。


「こんにちわー。今日は本来ダンジョン探索予定だったんだけど、ちょっとやることが多くてね。それで作業雑談枠を開くことにしたんだ」

『作業雑談か。助かる。俺も仕事進めなきゃ』

『配信見てねぇで働け』

『そう言うお前はどうなんだよ』

『授業中だが?』

『真面目に授業受けろ』

「平日の昼間だからねー。配信に来てくれるのはうれしいけど、怒られない範囲でいてね。お仕事やお勉強サボっちゃだめだからね」

『みらいちゃんはなにするの?』

「私はいろいろなことをね。探索者として必要な手続きの書類とか、配信のサムネ作りだったり、動画編集だったり」

『探索者になってもやることは多いのねー』

「というか、通常の配信者がやるタスクに加えて探索者がやるべきことも含まれてるから単純に仕事増えたよね」

「そうだねー。税関係の話は全部ギルドの方でやってくれるからそのあたりは楽だけど…」

『確定申告…うっ…頭が…』

『経費やらなにやら大変だぁ…』

『探索者って個人事業よね?そこらへんどうなん?』

「ギルドの方で素材の換金とか装備の購入とかやっていればそこで管理されて経費の方は算出してくれるよ。配信者に関してはドローンとかレンタルしてくれてそれも経費になったりするし」

『ほえー、楽でいいね』

「そうだね。経費とかの計算に関しては普通の配信者よりかは楽かな」

『あっち、どこからが経費でいいのかわかりにくかったりするからね…』

『配信者の難しい所よねぇ…』

『そう言えばクロウさんが静かだけどどうしたん?』

『いつものROMかな?』

「ううん、今日はね、作業枠なんだけどせっかくだからってことでクロウさんの探索風景を流しておこうかって話になってね」

『マ?』

『よくあの人が許可したね』

「ごり押した!」

『相変わらずシェルフちゃんに言い負かされてるのか…』

『まあ、あの人みらいちゃん引き合いに出されたら弱いし…』

『悲しきガチ恋勢の性よなぁ…』

「あはは…というわけでクロウさーん、いいかなー?」

「いいよー」

「それじゃあ…よっと。これで映ったかな?」

『うん、見えてる見えてる』

『すでにダンジョンの中か』

『相変わらずの不審者スタイル』

『いつものクロウさんだ』

「やかましい」

「それでマスター今いるダンジョンはどこ?」

「ここはとあるA級ダンジョンだな」

『A級ダンジョン?』

『なんかどこかの洞窟の中みたいだね』


リスナーの言う通り、クロウが歩いている場所は広い洞窟のような場所であり、クロウが作り出した光球によって照らされている範囲では土がむき出しの状態となっている。


「それで何しにここに?」

「ちょっととあるものを作るためにミスリルって鉱石が必要でな。それを集めに来たんだよ」

『おお!ミスリル!』

『それってわざわざ取りに来ないといけない物なの?』

『そう言えばあまり市場には流れてこないな』

「そうなの?」


リスナーの言葉にみらいが首を傾げていた。クロウたちS級探索者や詩織のようなB級ないしA級探索者もそれなりの数がいるし、結構な頻度で探索をしている。確かにレアな物というのはなかなか市場に回らないのだが、それでもミスリルというのは結構有名な鉱石だ。そこまでレア度が高いとは思えないのだが…。


「需要と供給の問題だな。確かにミスリルはそれなりの量が取れてはいるが、それでも装備の材料や補修に使われたりしているし、魔道具の材料にもなるからね。結構な量が定期納品みたいなかんじで企業の方に流れたりしてるんだ」

『へー』

「優先度としては装備の補修や作成が第一、その次に企業の方への納品、その次が市場流通って感じだね」

「探索者が個人で使うにはどうするんですか?」

「とれる人は自力で採取して、無理な人は市場に流れてきた奴を買う感じだね。まあ、需要が高いから結構な値段がするけど」

「それで、クロウさんは自力で集めに来たって感じだね」

「そんな感じ。まあ、数必要だからってのもあるけどね」

『どれくらい必要なの?』

「ん~…ちょっとそれなりの数作りたいってのもあるから…インゴットとしては三十個くらい?」

『それってどれくらいなの?』

「これから討伐する予定のミスリルゴーレムで言うと…平均値で言えば四十くらいかな?」

『そんなにいるの?』

「見つけるまで探索するんだが?」

『ちなみに運が下ぶれしたら?』

「何時間コースになるだろうなー」

『あはは…無理しないでね』

「わかってるよ」


みらいの言葉に頷き、少し歩く速度を速める。


「さて、そろそろ最初の敵だ。こっちは適当にやってるからみらいちゃんたちも作業に入ってね」

「うん。クロウさんも気を付けてね」



その後少しして最初の敵が現れた。

地を這う巨大なトカゲのような魔物。全身に薄水色の鱗が生えているトカゲ、ミスリルリザードだ。


「トカゲかー、こいつしょぼいんだよなぁ」

『ミスリルリザード、A級下位の魔物だね。その鱗はミスリルでできているからか、魔法攻撃はまともに当たらないし、硬いから物理攻撃にも十分な耐性がある厄介な魔物だね』

「そい」


コメントが流れた直後に軽い調子でクロウが拳を振るうとミスリルリザードの頭が叩き潰されて魔石と素材になった。


『………厄介な魔物なんだけどなぁ』

『まあ、クロウさんだし…』


ころりと落ちた魔石といくつかの牙。そして小さな小石程度のミスリル鉱石を手にする。


「これじゃあ二千は倒さんと足りんなぁ」


そう言いつつ素材らを空間収納へと放り込む。


『メインは何を狙っているの?』

「一番ミスリルが取れるのがミスリルゴーレムだからそれだね。はてさてどれくらい出てくれるか」

『鉱脈とか探さないの?』

「ミスリルの鉱脈ってないんよ」

「そうなんですか?」

「正確にはありはするけど、一つの鉱脈から採れる量ってかなり少なくてね。速攻で取りつくされて消えるからあってないような物なんだよね」

「どれくらいとれるの?」

「インゴット換算で三つくらいだったかな?平均値だから多いところだと七とかできたりするらしいけど、少ないところだと一つも作れないとかあるからね」

『それは鉱脈なのか?』

「少量が散らばってる感じだから一応そうなんだろうさ」


そんな会話をしている時にドシンッ!と振動が響き渡る。


「お?来たか?」


その振動がゴーレムが歩く振動だとわかったクロウがその元である方向へと向かう。

そこにいたのは全身赤茶色の姿をした高さ五mほどのゴーレムだった。


「お前じゃねぇ!!」


その言葉と共に叩き込まれた拳が一撃でゴーレムの巨体を粉々に砕いて崩壊させた。


「まったくもう…なんでミスリルゴーレムより上のアダマンゴーレムが出てくるんだよ」

『え?アダマンゴーレム?』


ぼそりとつぶやいたクロウの言葉をリスナーが拾う。


「ああ。今の奴はアダマンゴーレム。全身アダマンタイトっていう鉱石でできた奴だね。A級最上位、S級N級といった特殊クラスを除けばゴーレム種で最強の魔物だな」


そう答えつつドロップした魔石とアダマンタイト鉱石を拾って空間収納に入れる。


「そんな魔物を一撃で粉砕するからすごいよねぇ」

「ゴーレム種、前に戦ったことありますが硬いんですよねぇ…」


みらい達も前にD級ダンジョンに挑んでいた時にストーンゴーレムと戦ったことがあった。その時はシェルフの攻撃がまともに通らないせいでなかなかに苦戦した覚えがあった。


『アダマンタイトって有用なの?』

「んー…何とも言えん。鉱石としてはかなり硬いから武器や鎧として加工するとかなり有用なんだけど、その硬さのせいで加工しにくいし、鉱石自体重さが結構あって武器によっては片手剣のサイズでも鉄の大剣より少し軽い程度だもんで扱いにくいのよ」

「そうなんですか?」

「うん。まあ、頑丈だからかなり硬い相手…例えばさっきのアダマンゴーレム。あいつだってアダマンタイトで作られた剣で斬りかかっても欠けもしないだろうさ。まあ、斬れることもないんだが」

「そんなに頑丈なの?」

「きちんと作られた物なら俺もへし折るの大変レベルだからなー。その分重いから扱うのもだるいんだが」

『まってへし折る事できるの?』

『それもだけどこの人アダマン製の武器扱えるの?どんだけ多彩なんだよ』

「人並みに扱える程度だけどね。っと、また別のところにゴーレムいるな、この感じ。次こそミスリルゴーレムでありますようにっと」


僅かな大気の揺れからゴーレムの気配を感じたクロウがトンッと地面を軽く蹴って跳躍して目的地へと移動する。そこにいたのは…。


ゴゴゴゴッ(アダマンゴーレムが振り向く音)


「だからテメェじゃねぇ!!」

『草』


クロウの怒りの一撃と共にアダマンゴーレムが砕け散り、一瞬で魔石と素材になるのであった。



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