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S級探索者は推し活のために探索する  作者: 黒井隼人


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同居人は過去を語る


主要人物たちが集められた会議室。そこで視線を集めているシェルフは一度お茶を飲んで一息ついてから口を開いた。


「私はもともとこことは別の世界に住んでいたの。私みたいな…」


座っている状態で一度深呼吸をすると風がシェルフを包み込み、本来の精霊としての姿に戻った。


「精霊たちが住まう世界に」


その姿になって驚いたのは詩織だった。みらいはシェルフとパーティーを組む時に聞かされており、他の面々もシェルフについては聞かされていた。

マーサたちフェンリル一家に関しては精霊かどうかまではわからなかったが、それでもクロウたちとはどこか違うものだということは本能的に察していた。


「えっと…もしかして知らなかったの私だけでしたか?」

「あー…それに関してはすまん。ちょっというタイミングというか…一応機密事項でもあるから伝えるべきかどうか悩んだんだよね」


詩織の言葉にクロウがばつの悪そうな感じで答える。

もともと詩織に対しても話すというのも話として出てはいたのだが、明確にみらいのパーティーに入ったわけではなく、機密事項でもあったがゆえに判断が難しかったのだ。


「みらいちゃんに関してはパーティーになる以上、いざという時のために知らせる必要があったから知らせたけど、詩織さんはどっちともとれる立ち位置だから言うべきかどうか判断がつかなくてね。必要になったら、でいいかという判断になったんだ」

「そうなんですか…」


中がいいのは確かだが、たまに共に探索する程度であれば言う必要がないとも判断できた。もしこのまま何事もなくみらいたちのランクが上がり、正式にパーティーを組むようなことがあればその時に伝える予定ではあった。

まあ、この間の探究者の一件でこんな感じで伝える形になったのだが。


「精霊界ってどんなところなの?」


シェルフ達が住んでいたところと仮名として精霊界として、遥が問いかけてくる。


「いい所だよ。自然豊かで、平和で…この世界みたいに便利ってわけではないけど、飢えることもないし、争うこともなかったんだけど…」


言葉の途中でシェルフの表情が暗くなった。


「なにかあったの?」


流華の問いかけにシェルフは首を横に振る。


「明確に何かがあったってわけじゃない。でも、何かが変わり始めていたんだ」


思い出すようにシェルフが遠い目をする。


「私たちが暮らしている世界では光の大精霊様の元、穏やかに、静かに暮らしていたんだ」

「光の大精霊?」

「うん、光の大精霊様を王として、火、風、水、地の四大精霊様が仕えているんだ」

「もしかしてシェルフちゃんって風の大精霊の娘だったり?」

「んー…そうとも言えるけどそうじゃないともいえるというか…」

「どういうこと?」

「私達精霊ってあの世界にあるこっちで言うところの魔力が形を作って生まれるんだけど、その時集まった魔力によってそれぞれ扱える属性が決まるんだ」

「火の魔力が集まれば火の精霊に、風の魔力が集まれば風の精霊って感じ?」

「そうそう。だから同じ属性の精霊たちは皆兄妹や親子みたいな感じなんだよね」

「へー」

「ちなみに全員に名前がついているの?」

「ううん、名前が付くのは次期大精霊候補の子達だけ」

「は?じゃあシェルフって次期大精霊だったのか?」

「そうだよ!まあ、まだまだ新米だから実力は全然だけどね」


初耳だったようでクロウも驚き、それに対してシェルフは誇らしげに胸を張るがすぐに苦笑を浮かべていた。


「私たち精霊は一定の年齢になると姿が変化するんだ。ある一定の力以上になると今の私みたいな姿になるんだけど、その姿になれる精霊は珍しくて、一世代につきそれぞれの属性で一人いるくらいなんだって」

「へぇ…シェルフちゃんエリートなんだね」

「まだまだ見習いだけどね」


遥の言葉に苦笑で返した。


「それで…話を聞いていて疑問に思ったんだが一ついいか?」

「なに?」


クロウの問いかけにシェルフは首を傾げる。


「精霊界のトップである光の大精霊。そして火、風、水、地の大精霊。世界を構築すると言われている四大属性、そこはわかる。そしてそこに光が加わるのなら、相反する闇の大精霊もいなきゃいけない。じゃないとバランスが取れない。しかし、その話が出てこないのはなんでだ?」

「あー…」


クロウの疑問にシェルフも困ったような声を上げた。


「闇の大精霊様に関してはいるという話は聞いてるよ」

「会ったことはないの?」

「うん。というか、闇の大精霊様に関しては精霊界ではタブーとされている話なんだ」

「タブー?なんで?」

「わからない。なんか昔大きな事件があったって話だけど、詳しいことは誰も教えてくれないんだ」

「具体的に知ってそうな人に心当たりは?」

「五人の大精霊様たちは知ってるんじゃないかな?でも、誰も話したがらないし、調べようとしても怒られちゃうんだよね」

「調べようとしてたのか?」

「うん、私と同じ次期大精霊候補の子達とね。いろいろとやんちゃしてたんだよねぇ…懐かしいなぁ…」


そう言葉を漏らしながらシェルフはわずかに微笑んだ。


「………さて」


それまで黙って聞いていたギルマスが重い口を開く。


「君が住んでいた精霊界なる場所に関してはわかった。そのうえで問おう。なぜ君はそこから逃げてきた?なぜボロボロの状態になっていた?」

「……明確な理由はわからない。でも、私は…他の大精霊様たちに追われたんだ」



――逃げなさい!シェルフ!!――

――でも!お母さん!!――

――私の事はいいから早く!できる限り遠くへ!闇に呑まれる前に!!――


「闇に呑まれる前に?」

「それにお母さんって…」

「あはは…私たち精霊候補の子たちは大精霊様たちの子供として修練を受けるからね。だからそう言う呼び方になっちゃうんだ」

「へぇ…そうなんだ…」


みらいの素朴な疑問に対してシェルフは恥ずかしそうに笑っていた。


「それより闇に呑まれるってどういうこと?」

「探究者も言っていたな『闇に呑まれた精霊』って」

「タブーとされている闇の大精霊。そして闇に呑まれるという言葉…何らかの異変が発生し、その異変の元凶が闇の大精霊?」

「その異変がどんなものかにもよるがな。シェルフ、どうなんだ?」

「異変は最初、火の次期大精霊候補の子…イフに起きたんだ。その子、火の属性だからか、熱血漢というか…熱くなりやすいタイプなんだけど、いつからか、ずいぶんと乱暴になったんだ」

「乱暴に?」

「うん。結構活発で頭に血がのぼるタイプだったんだけど、それでも暴力に訴えるようなことはしない子だったんだ。だけど、いつからかすぐに手が出るようになって…まだ産まれたばかりの精霊たちに対して攻撃を仕掛けることも増えたんだ」

「普段はやらないの?」

「うん。言葉遣いは乱暴だし、すぐに頭に血がのぼることはあるけど、暴力なんてしなかった。自分より弱い子を守るために、いじめっこに立ち向かうような子だったんだ」

「…そんな子が突如乱暴にねぇ…」

「その子だけじゃない。他の次期大精霊候補の子たちもどんどんおかしくなって…それだけじゃなくて、他の精霊たちも乱暴になってるのか、喧嘩が増えたんだ」

「そのことを大精霊たちは?」

「気づいていたよ。そしてかなり深刻そうな顔して話し合ってた」

「大精霊たちには今回の異変の原因がわかっていたってことかな」

「たぶんね。でも、そんな大精霊様たちも異変に呑まれて…」

「凶暴化したと」


雷亜の言葉にシェルフが頷いた。


「突然火の大精霊様と地の大精霊様が暴れだし、それを水の大精霊様とお母さんである風の大精霊様で抑えようとした。普段は拮抗している四人の実力もその時は暴れている二人の方が上だった。勝つことも、抑えることもできないと判断したお母さんは私を逃がそうとした。だけど、逃げている途中で他の次期大精霊候補の子達に見つかって襲われちゃって…」

「それであんなボロボロの状態に…」


クロウの言葉にシェルフが頷く。


「いくらなんでも三人がかりで襲われたんじゃ逃げる事しかできなくてね。それで逃げ続けている時に空飛んで逃げたんだけど…途中で撃ち落とされちゃって、気が付いたら…」

「ダンジョンに移動してて俺が拾ったと」


クロウの言葉にシェルフは頷いた。


「それ以降の事はマスターのほうが詳しいでしょ?」

「まあな」


シェルフと出会った時、シェルフはかなりボロボロの状態だった。まともに身動きできる状態でも無く、瀕死の状態だったので治療をしてから回収した。その後は極秘の研究施設でいろいろと監視されていたが、問題ないとしてクロウが監督する条件で居候となった。


「それにしても…闇の大精霊…闇に呑まれるねぇ…過去に何かあったみたいだし、その闇の大精霊がその異変の元凶?」

「そう考えてもおかしくはないとおもうけど、問題はなんでそんなことをしたか。どうやってやったのか、だね」

「そこらへんどうなんだ?クロウ」


雷亜の言葉に少し考えだす。


「………シェルフ、精霊の使う属性は俺が扱う属性と大きな違いはないか?」

「ないよ。どの世界であっても、その属性の基礎までは変わらないからできることにそう差異はないはずだよ」

「それなら…闇の属性には精神に干渉する力がある。闇の大精霊がどこまでその力に長けているか、そこらへんはわからないけど…」

「闇の大精霊に関して話がタブーになっていること。そして他の大精霊たちも今回の事件について何か知っていた。もしかしたら過去に同じような事件があったのかもね」

「そのうえで対処で来ていないってことは、相手の能力がそれだけ高いってことかな?」

「おそらくな。何かしらの対策しておかんといかんかなぁ…」


闇の大精霊による精神汚染。対策無しで挑めるような状況か不明である以上、事前の対策はある程度必要だろう。


「では、クロウはその対策をできる限りしてください」

「了解。この間作ったあの腕輪の魔道具改良すればどうにかなるかな」

「私達に関してはいつも通り?」

「そうですね。変わらずいつも通り過ごしたうえでいつでも対応できるようにしてください。それとシェルフさん」

「?」

「精霊界について、主に戦力となる人員や強さについてある程度聞いておきたいのでね」

「はいはーい」

「それと詩織さんとみらいさん」

「はい」

「なんでしょう」

「今回の一件、シェルフさんが狙われる可能性が高いです。危険ではありますが、詩織さんにはみらいさんたちと行動を共にしてもらいたいのです」

「わかりました」

「でも、私達で相手になりますかね?」

「そこらへんは大丈夫だと思うぞ。おそらくみらいちゃんたちで対応できないのは大精霊レベルくらいだ」


話の中からシェルフ以外の次期大精霊候補たちの子も強くはなっているだろうが、それでも詩織やフェンリルであるリルやフィンが一緒ならばまず負けることはないだろう。


「それでも油断はしないようにね。精霊たち全員に異常がある場合、数で攻めてくる可能性もあるからね」

「わかりました」


遥の言葉にみらいたちは頷いた。


「さて、んじゃあとりあえず話は一段落ってことで俺は腕輪の調整してくるよ。もし何か異常があったら連絡くれ」

「ああ、わかったよ」


後の事はギルマスに任せ、クロウは一度自宅へと戻ることにした。



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