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闇を統べしもの 6


 闇を統べしもの 6



 朱姫から火のようなオーラが立ち上り、クロからは闇の気配が溢れてくる。


「これ、朱姫さんもクロも本気ですよね 」


「もちろん 手は抜いてくれないでしょうね 」


「勝てるんですか? 」


「このペア相手ではかなり難しいでしょうね…… でも、やるだけやってみましょう 」


 青姫は明るく言うが、あの朱姫さんとクロだぞとタダユキの不安は大きくなるばかりだった。とても勝てるとは思えないが青姫は嬉しそうにタダユキにこんな流れでいきましょうと作戦を伝えてくる。その嬉しそうな声を聞いているとタダユキは、もしかして姫、僕と一緒に戦うのが嬉しいのかなんて邪推し顔を赤らめていた。


「おーい そろそろいいかい? 」


 焦れたように言ってくる朱姫に、青姫とタダユキはオーケーと頷いた。その途端、朱姫とクロが飛び掛かってくる。なんとか初撃をかわしたタダユキだが、続けざまに襲ってくる攻撃をかわすのは不可能だった。クロの猫パンチ(さすがにクロは爪を出さずにパンチで攻撃していた)をかわしたところで、朱姫のローキックがタダユキの足にヒットしバランスを崩したところへ、再び襲ったクロの猫パンチが炸裂し青姫とタダユキは大きく吹っ飛ばされ、地面に叩き付けられる。


「ふぎゃ 」


 タダユキの下敷きになった青姫が可愛い声を上げる。


「だ、大丈夫ですか、姫っ 」


「大丈夫です 私に構わず転がって、作戦通りなんとか距離をとってください 」


 青姫の指示でタダユキは地面を転がって朱姫とクロから距離をとろうとするが、転がる度に青姫が、アッとかウッと声を出すので大丈夫なのかとタダユキは心配になった。そして、転がっているうちに公園の端にある水飲み場の石の土台にぶつかってしまい、これ以上転がれなくなってしまった。その追い詰められた青姫とタダユキを見て朱姫が向かって来る。そして、足を振り上げようとした。


・・・踵落とし ・・・


 タダユキは印契(いんげい)を結び言霊を発しようとしたが、朱姫は足を振り上げるのを止め、タダユキにニヤッと笑いかける。


「危ない危ない、玄姫と同じ過ちを犯すところだった 私はタダユキにパンツ見せてあげる程、気前良くないからね 」


 そう言いながら朱姫は印契(いんげい)を結び真言でけりをつけようとする。


「姫っ、どうすれば? 姫っ 姫?…… 」


 返事がない青姫をどうしたのかとタダユキが振り向くと、青姫は水飲み場の石に頭をぶつけグタッと気絶していた。


「姫ぇぇーーっ 」


 タダユキの絶叫が響き渡る。朱姫とクロ、白姫と玄姫も何事かと駆け寄ってくる。



「うーん…… 」


 しばらくして青姫は車椅子の上で気が付き、心配そうに覗き込んでいるみんなの顔を見回す。


「すいません、姫 僕が転がった位置が悪かったみたいです 」


 タダユキはひたすら頭を下げて謝る。


「いえ、私の油断です 頭がぶつかると分かっていれば耐えられたのですが、不意にガツンときたので…… ぶつかるまでは作戦通りうまくいっていたのですが、ごめんなさい 」


 青姫もタダユキに頭を下げる。


「でも、朱姫さんは僕たちの作戦にはのらなかったですよ 」


 残念そうに言うタダユキに朱姫は、私が同じ手にかかる訳ないだろうと笑ってみせる。


「その場合は私が真言で朱姫を倒すつもりでした 」


 青姫があっさりと言い、朱姫がなにぃとタダユキを睨み付ける。僕が言ってるんじゃないですよとタダユキは慌てて手を振った。


「朱姫は真言唱えるの遅いですからね…… 朱姫を倒してクロちゃんと一対一になれば君の言霊と私の真言でなんとかなるかなと思ったのですが…… 」


「そういえば、朱姫さんはクロと戦った時も真言を唱えきれずにやられてましたね そうか、あれは唱えるのが遅かったからか 」


 タダユキは真顔で朱姫の顔を見て、うんうんと頷く。クロも、そういえば遅かったという顔を朱姫に向ける。玄姫と白姫も朱姫の顔を見つめ、口元にフッと笑みを浮かべた。みんなに笑われたような気になり朱姫の顔が赤くなる。


「おのれ、タダユキ、そこへ座れ 」


 朱姫の恐ろしい剣幕にタダユキは、なんですかとぶつぶつ言いながらも地面に座る。すると朱姫は、ぐわっと大きく足を上げた。


「な、何するんですか、朱姫さん パンツ見えてますよ 」


「かまわない 殺す…… 」


 朱姫の踵が高速でタダユキの頭に落ちてくる。ひぃとタダユキは横に転がってかわし、朱姫の踵は地面にめり込んだ。それを見てタダユキは、この人本気だと背筋が寒くなった。


「ほらほら、朱姫 冗談はそのくらいにして、今後の対策を考えないと…… 」


 玄姫が、どうどうと朱姫を押さえ付ける。朱姫は、ふうふうと息を荒くしながらも、わかりましたと素直に頷いた。


「実は私の幼馴染みに手足の製作もお願いしているんですよ それが出来れば多少戦いやすくなるかもしれません 」


 タダユキが驚いて、姫、それで戦えるようになるんですかと少し残念そうに言う。


「いえ、戦えるわけではないですが…… 君に背負ってもらって防御とかは出来ると思います 」


「ふんふん それは攻撃する方からすると攻め辛くなりそうですね 」


「となると…… やっぱり問題はタダユキだな これから、西園寺弥生との戦いまで私が毎日鍛えてやる 」


 朱姫が、ニコリと笑いながら恐ろしい目でタダユキを睨めつける。タダユキはビクッとしながらも、お願いしますと朱姫に頭を下げた。とにかく、青姫の為に少しでも強くなりたいという気持ちはタダユキの偽りのない思いだった。



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