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闇を統べしもの 17


 闇を統べしもの 17

 


「貴様、何者だ!! 」


 ”崇徳上皇”は、神々しい光に包まれ宙に浮く青姫に向かって問う。


「私の体を依り代に女神ラクシュミー様に降臨して頂きました 今の私は女神様と同様の力を得ています もはや”崇徳上皇”あなたに勝機はありません 」


「女神と同化だと? 神と同化など出来るわけがない はったりは私には通用しないぞよ 」


 ”崇徳上皇”は再び黒雲を呼び”いかずち”を青姫に向かって落とすが、ラクシュミーの壺に吸い込まれ消滅する。


「ぬぅっ」


 連続で”いかずち”を落とす”崇徳上皇”だが、そのどれもがラクシュミーの力を得た青姫には無意味だった。”崇徳上皇”の顔を汗が伝う。


「なるほど 私の”いかずち”を全て無効にするとは女神と云うのも頷けよう だが、神の世ではなく現世に降臨したという事は、現世の(ことわり)に縛られる筈 つまり倒せない道理はないという事だ 」


「流石ですね、上皇 女神様は私の体を依り代(よりしろ)にして現世に降臨しています けれど人間の弱い体で神の力を宿し続けられる筈がありません 私の体は消滅していくでしょう しかし、問題はありません 私の体が消滅する前に”崇徳上皇”、あなたを滅するからです 」


 クロを抱きながらタダユキは、やはりと思った。卯月や他のみんなの態度から、薄々と最終奥義とはそういうものなのでは感じていたが、まさに想像通りの戻ることの出来ない一撃必殺の技だったのだ。


・・・姫、いや卯月さん 酷いですよ、僕だけ残して、みんな消えてしまうんですか ・・・


 タダユキの苦悩を他所に青姫と”崇徳上皇”は睨み合う。”崇徳上皇”には多少余裕が戻っていた。


「貴様は馬鹿だな 自分で自分の弱点を教えるとは愚の骨頂だ つまり、私は貴様の攻撃を掻い潜り逃げていれば、貴様は自滅すると云うことだ 」


「愚かなのはあなたですね”崇徳上皇” 私は私の残り時間を把握しています つまり、こうしてあなたとお喋りしていても十分すぎる時間が残っているのですよ そうですね、お喋りついでに一つ訊いて良いですか? 何故あなたは、ここまで人間を怨むのです? 」


「私を裏切った者たちに復讐する為に決まっておろう 」


「あなたを裏切った方たちは、とうに亡くなっているではないですか 」


「私を裏切ったのは醜い人間だ そんな醜い人間は現世に存在していてはいけないのだ!! 」


「独り善がりな愚かな考えですね あなたは裏切られた自分を反省した事がありますか? 何故、自分が裏切られたか真剣に考えた事がありますか? 勿論、あなたを裏切った方に非はあるでしょう でも、裏切った方にすれば、あなたを裏切るに値する何かがあったのです それを真摯に受け止めて深く考えもせず、あなたは復讐という手段を選んでしまった そして、多くの人間を不幸に追い込んでしまった、それは許される事ではありません 」


「そんなものは裏切られた事のない人間の詭弁だ 貴様を倒して復讐を続けるとしよう 」


「そうですね お喋りはここまでです ”崇徳上皇” あなたに引導をお渡しします 」


 宙に浮いていた青姫が、更に飛び上がり”崇徳上皇”に襲いかかる。と、”崇徳上皇”が素早く印契を結ぶ。


「九尾、来い 」


 そして、空間が歪んだかと思うと、それは突然、青姫の前に姿を現した。九本の尾を持つ黒い獣ブラックイットが青姫の前に立ち塞がる。そして、その九尾に”崇徳上皇”が融合していく。


「こ、これは 」


 突如現れた九尾に青姫は動揺を隠せなかった。以前、九尾にされた仕打ちが脳裏に甦り、体が萎縮し動かなくなっていた。


「ふははっ!! 貴様は以前、この九尾に半殺しにされたようだな いくら女神の力を手に入れようと所詮人間 人間の心は弱いものだ この九尾を前にして貴様は恐怖で動くこともできまい 」


”崇徳上皇”の言葉通り動けず震えている青姫の足を九尾がガシッと掴み振り回す。


「あ、あ、あ、あ、あ、あ 」


そして、小さく悲鳴を上げる青姫を雪面に思い切り叩きつける。


「あがぁぁぁーーっ 」

 

 絶叫する青姫を何度も何度も雪面に叩きつけた九尾は、今度はその巨大な足で青姫を踏みつけ押し潰す。


「ごはぁぁーーっ 」


 その激しく吐血する青姫の頭を摘まんで持ち上げた九尾はその裂けた口が更に裂けニヤリと笑う。


「このまま待っていても貴様は死ぬだろうが、目障りなので早々に始末して差し上げましょう 」


 ぐったりと吊り下げられた青姫に向かい九尾は、九本の尾を槍のように変化させる。そして、一本の尾が青姫の腹部に突き刺さり貫通する。


「ごっばぁぁーーっ 」


 青姫は口から血を吐き、貫通された腹部からも血が噴き出す。

 

「いい様だな 九本の尾、全てで貴様を串刺しにして始末してやる 」


 九尾は高らかに笑いながら二本目の尾を青姫に突き刺し貫通させる。そして、三本目、四本目、五本目。次々に体を串刺しにされ青姫の体は痙攣を始めた。


「やめてくれぇ!! 姫が、卯月さんが本当に死んでしまう!! 」


 タダユキは絶叫する。玄姫、白姫、朱姫に続き青姫までここで殺されてしまう。まさか”崇徳上皇”と九尾が融合するなんて、そんなの反則だろう。タダユキはそう思いながら自分の無力を呪った。


「さあもう残り少なくなってきましたね 貴様の最後まで後僅かです 」


ドスッ!!ドスッ!!


 青姫は七本の尾で体を串刺しにされ、ビクンビクンと大きく痙攣し始めた。手足はぐったりと垂れ下がり、首もうなだれ体を大きく痙攣する姿は、もう死へのカウントダウンが始まっているとしか思えなかった。


「姫ぇーーっ 」


 タダユキは絶叫しながら雪面にがくりと膝を落とす。誰か姫を助けて下さい。タダユキは泣きながら串刺しにされ瀕死の青姫を見つめる。


「ふはは、残り後2本です この2本で心臓と頭を串刺しにして差し上げます それで目障りな貴様も終わりですね 」


 ”崇徳上皇”と九尾の混合体は、勝ち誇ったように余裕の表情で高らかに笑う。


「ふはははっ!! 八本目、心臓です 」


ズガッ!!!


「あっびゃぁぁぁーーーっ!!! 」


 これまでにない激しい絶叫が青姫の口から迸り、青姫の心臓が九尾の尾で貫かれ、青姫は心臓を貫かれた瞬間、その反動で両手両足を大きく広げ、その後力が抜けたように、だらりと垂れ下がる。そして遠目にもわかるほどビクンビクンと大きく体を痙攣させる。青姫の心臓は貫かれたまま押し出され、背中に突き抜けた九尾の尾の先端で、その動きを止めた。


「さて、いよいよ最後の一撃になりますね 最後は特別サービスで最大の苦痛を与えて差し上げましょう 股間から頭まで一直線に串刺しにします 完全な死ですね 」


 九尾は今まで青姫の体を串刺しにしていた尾を抜き、青姫の両足を持ち逆さにし、足を大きく広げる。以前、九尾の変身した姿の玉藻の前にやられた姿、そのままだった。しかし、あの時と違い助けてくれた玄姫も白姫ももういない。しかも、青姫はすでに心臓を破壊されていた。もうこのまま串刺しにされる運命から逃れる(すべ)はなかった。


「さあ、最後の瞬間です 頭まで串刺しにされて完全に死になさい これでもう私の脅威となる者は存在しないでしょう 」


 九尾は最後の一撃を容赦なく放つ。


ドスッ!!!!


 青姫の股間に突き刺さった九尾の尾は、青姫の体をズブズブと貫いていき脳天からその先端を現す。青姫は股間から頭まで完全に串刺しにされ、被っていた面も落ち素顔が晒される。青姫の顔は、涙と鼻水で汚れ恐怖に歪んだ表情のまま哀れに固まっていた。


「姫が殺された 殺されてしまった 」


 タダユキは、串刺しにされ、まったく動かない青姫の無惨な姿に力が抜け雪面に横たわる。


・・・ああ、もう僕も早く殺してください ・・・


 冷たい雪の感覚が心地よかった。クロも倒れたタダユキの顔の前で弱々しく鳴いた。もう全てが終わりだ。僕たちが(かな)う相手ではなかったんだ。タダユキが絶望に打ちひしがれた時、急にクロが、ガバッと頭を上げる。そして、聞き覚えのある声が頭上から聞こえた。


「何やってるんだ、タダユキ 青姫を救えるのはお前しかいないんだぞ!!」


 クロが力が戻ったかのように力強く立ち上がると、その人影に向かって嬉しそうに飛び付いた。


 




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