表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/18

闇を統べしもの 15


 闇を統べしもの 15


 青姫と朱姫は印契を構え真言を唱えるが、崇徳上皇の結界を破る事は出来なかった。


「なあ、青姫 私たちを束ねる“春の力“を持つ青姫なら、この結界を破る真言を唱えられるんじゃないのか 」


「はい、確かにそれを唱えれば強力な結界でも破る事が出来ると思います しかし、この結界は崇徳上皇が千年かけて張り巡らせた結界 おそらく私一人の力では無理でしょう 」


 青姫はタダユキを振り返り、その顔を見つめる。


「君、この結界を破る為に力を貸してください 」


 もちろんタダユキは二つ返事でOKする。


「どうすれば、いいですか? 」


「私に後ろから抱きついて、この結界を破るイメージを強く持って下さい 集中して、それだけを考えて下さい 出来ますか? 」


「出来る、と思います 」


 タダユキは後ろから青姫に抱きつくと、見えない結界を砕くイメージを描こうとするが、柔らかい青姫の体の感触に、つい他のイメージを描いてしまい思わず腕を離す。


「姫、僕の頬を叩いてください 」


 青姫は訳が分からないまま、タダユキの頬を平手でピシッと打つ。タダユキは、良しと気合いを入れると再び後ろから青姫に抱きついた。もう、これで最後かも知れない。タダユキは、また余計な事を考えそうになるのを、いかんいかんと振り切り結界を砕くイメージに集中する。青姫も印契を結び、真言を唱え始める。二人の体が光に包まれて輝いていく。


「おおーっ 」


朱姫とクロは二人の姿を見て、このまま結界を破れそうだと安堵したが、背後に不穏な空気を感じ振り返った。


「こいつら…… 」


そこには、何体もの魍魎が集結していた。


「一つ目巨人の“泥田坊(どろたぼう)“、骸骨の魍魎“狂骨(きょうこつ)“、巨大な猪“白沢(はくたく)“、長い舌を鞭の様に使う“天井嘗(てんじょうなめ)“…… 厄介な奴らが集まりやがって…… でもな、青姫の邪魔はさせないから 」


朱姫は魍魎に向かって飛びかかるが、一手早く“天井嘗(てんじょうなめ)“の長い舌が朱姫を捉える。動きを封じられた朱姫に“白沢(はくたく)“が突進し、その巨体で体当たりする。


「がはっ 」


空中に飛ばされた朱姫に“狂骨(きょうこつ)“が襲いかかる。鋭い手刀で朱姫を串刺しにしようとするが、間一髪、朱姫はそれをかわし、逆に蹴りを入れる。“狂骨(きょうこつ)“は雪面に叩きつけられるが、今度は“泥田坊(どろたぼう)“の拳が朱姫の顔面にヒットし、朱姫は雪煙を上げて転がった。


「一対四か…… でも、青姫の邪魔はさせないよ 」


朱姫は鼻血を流しヨロヨロと立ち上がるが、またも“天井嘗(てんじょうなめ)“の舌で動きを封じられ、腹部に“泥田坊(どろたぼう)“の拳がめり込む。


「おげぇぇーーっ 」


胃液を吐いて苦しむ朱姫に、間髪入れずに“白沢(はくたく)“が突進し朱姫は吹き飛ばされる。そして、意識をとばした朱姫に“狂骨(きょうこつ)“の手刀が突き刺さろうとした瞬間、“狂骨(きょうこつ)“が逆に吹き飛ばされ、鋭い爪でバラバラに切り刻まれる。


「ふぉぉーーっ」


断末魔の悲鳴を上げ、“狂骨(きょうこつ)“は消滅した。


「ク、クロ…… ありがとう 」


魍魎化したクロが朱姫の顔を嘗めていた。


「二対三だな それに、このペアは私たちの最強タッグだ、これで私たちに負けはない 」


朱姫は鼻と口から血を流しながら不敵に笑う。クロも隣で大きく咆哮し威嚇した。

青姫とタダユキは結界を破る為に集中していたが、背後で何が起こっているのか気にならない訳はなかった。


「君っ、今は結界を破る事に集中してっ 朱姫とクロちゃんなら、きっと大丈夫っ 」


「はい 」


青姫も、朱姫たちを心配しない訳がない。でも今はこの結界を破る事に集中しなければならない。その気持ちが痛いほど伝わりタダユキも、気持ちを集中させる。


「多人数相手だと真言を唱える間はないけど、私をそれだけだと思うなよ 」


朱姫は、鞭のように朱姫を狙ってくる“天井嘗(てんじょうなめ)“の舌をかわし一気に間合いを詰める。クロは“白沢(はくたく)“を吹き飛ばし、“泥田坊(どろたぼう)“に向かっていた。


・・・良し、今だ ・・・


朱姫は“天井嘗(てんじょうなめ)“に集中して攻撃を加えながら、雪面に四芒星・ベツレヘムの星を描いていく。そして、四芒星を描ききった瞬間、朱姫の拳が赤く輝く。


「デネブ 」


朱姫が“天井嘗(てんじょうなめ)“に拳を打ち込む。


「ベガ 」


そして、二発目の拳も打ち込んだ。さらに、三発目……。


「アルタイル 」


三発の拳を三角形の形に打ち込まれた“天井嘗(てんじょうなめ)“は、ゴオッと燃え上がり消滅していった。


・・・残り、二体 ・・・


見ると“泥田坊(どろたぼう)“、“白沢(はくたく)“二体の魍魎を相手にクロが苦戦している。朱姫がクロの加勢に飛び出した時、クロの背後に更に一体の新たな魍魎が現れた。クロは前面の二体に集中していて、背後に現れた魍魎には気付いていないようだった。


・・・“鎌奇(かまいたち)“か あいつの真空刃はまずい クロっ 間に合うか ・・・


「クロォォーーッ 」


朱姫が叫ぶが、戦闘中のクロはまったく気が付かない。“鎌奇(かまいたち)“が両腕の2本の鎌を振りかざし、クロに向かって真空刃を放つ。


「がぁぁぁーーっ 」


悲鳴を上げたのは朱姫だった。朱姫は、クロと“鎌奇(かまいたち)“の間に立ちはだかり、自らの体でクロに向かって放たれた真空刃を受けていた。クロも、ようやく気付いて振り向いた。


「クロ…… 無事か、良かった…… 」


両腕を広げクロを庇って血塗れの朱姫を、クロは驚いた顔で見つめるが、すぐに嬉しそうな顔になる。そこへ、さらに追撃の真空刃を間髪入れずに“鎌奇(かまいたち)“が放ってきた。


ザンッ


それは朱姫にヒットした。本来、当たる筈のない攻撃を受けてしまう。一撃目の真空刃を受け怪我を負っていた事、雪に埋もれた足で動作が鈍った事、色々な要因が重なっていた。それが最悪の結果を生んでしまう。


「あっ… あ、あ、あ 」


雪原に血が飛び散る。朱姫の首が切断され、朱姫の頭がゆっくりと雪原に落ち転がった。頭を失った朱姫の体は、首から大量の血を噴き出し二三歩歩くと雪原に倒れていった。

雪原に転がった朱姫を見て、クロは体を震わせ大きく咆哮する。その咆哮で異界にいる数百の猫又が集まってきたかと思うと、次々にクロに吸収されていった。巨大化しているクロの体がさらに巨大化する。クロは涙を流し、その顔は怒りに満ちていた。


「グオォォォーーーーッ!!! 」


九尾や大嶽丸をも凌駕する最後のブラックイットが覚醒する。その闇の波動は、遥か遠くで戦いを繰り広げている大嶽丸と九尾の元にも届いていた。


・・・この波動は、わたくしと同等以上…… いったい何者ですか? ・・・


・・・これは、クロか? 何があったんだ こんな無理に力を使えば身体が砕け散る クロ、死ぬ気か ・・・


全ての力を解放したクロは、その燃えるような目で三体の魍魎を睨み付ける。魍魎はクロの眼力で身動きすら出来なくなっていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ