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第4話

   

「ぎゃーっ!」

 鞄の中の生首と目が合って、大きな悲鳴を上げてしまう。

 遠くへ投げ飛ばしたいくらいだが、私の手は鞄をしっかり握っていた。

 動揺しながらも、頭の一部分では冷静に考えていたのだろう。中身は殺人事件の証拠品になるはずだから損壊させてはまずい、という理性が働いたのだ。


「何だ、何だ?」

「どうしましたか……?」

 私の叫び声を聞きつけて、人々が集まってくる。

 ほとんどは野次馬だったが、ホームで仕事中の駅員も含まれていた。彼は私の様子を目にした途端、こちらを指差して喚き始める。

「ひ、人殺し……!」

「違います、私じゃありません。これは車内に残された忘れ物で、私は持ち主を追って降りただけで……」

 むしろ駅員よりも、他の人々の方が頼りになりそうだ。スマホを取り出して撮影する者もいたが、その中から「警察に電話を!」という声も聞こえてきた。

 そうこうしているうちに……。


「すいません。それ、私の忘れ物ですよね?」

 のほほんとした口調で、あのハンサム男が現れた。この騒動の張本人だ。

「さ、殺人犯人! 逮捕する……!」

 それまで私を責めていた駅員が、ぶるぶると震えながら、今度はハンサム男に指を突きつける。

 別に人殺しの現場を捉えたわけではないから、駅員に逮捕権はないと思うのだが……。

 心の中で私がツッコミを入れている間に、当のハンサム男は軽く笑っていた。

「失礼な……。私が殺人犯人? いったい何の冗談ですか?」

「しらを切るな! こちらの(かた)が、証拠の生首を……」

 さらに追求しようとする駅員に対して、彼はバタバタと手を振って否定する。

「いやいや、勘違いしないでください。生首は生首ですけど、作り物ですよ、それ」

   

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