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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

普通の岩と輝く花

作者: 草薙 山葵

 御伽話の王子様みたいにキラキラしている人。

 そんな人とは無縁であると、俺は思っていた。

 ましてやその王子様を好きになるだなんて、思ってもいなかった。


     ◎


 俺は岩﨑真琴。成績も運動もごく普通な高校2年生。

 姉貴の結婚祝いの花束を買うために、商店街のとある花屋に来ていた。

 とは言っても花に関する知識は全くない。

 なんとなく、派手好きな姉貴にはゴージャスな感じでお祝いしたいから薔薇かなぁと考えているんだけど……。

「うーん、どれが良いんだろう」

「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」

「あ、いや、えーっと。姉が今度結婚するんで、そのお祝いに〜って思って来たんですけど……どういうのが良いのかさっぱり分からなくて」

 俺は店内に並んでいる花を眺めながら答える。

「おっ、そうなんですね! おめでとうございます! じゃあこの白い薔薇なんてどうですか? 白には『これからの人生を2人の色に染めてください』っていう意味があるのでピッタリだと思いますよ」

 へぇー。薔薇って赤色以外にもあるんだ。

 透き通るように綺麗な白色の薔薇。

 俺はこの花を買うことにした。


「じゃあお会計こちらで承りますね」

「あっ、はい、ありがとうござ──」

 顔を上げ、その店員の顔を見た俺は固まってしまった。

 まるで自分が絵本の世界に飛び込んでしまったかのような感覚になった。

 一目惚れ……というのはこういうものなのだろうか。

 いや違う。恐らくこれは憧れの一種なのだろう。

 誰だって一度は“顔のいい人間になりたい”と思うだろう? 

 今 目の前にいるその店員が、たまたま、THE俺の理想みたいな顔をしているのだ。

 綺麗に整った顔。

 花束を作っているときの嬉しそうで優しい顔。

 ラッピングに使うリボンの色を選んでいる時の真剣な顔。

 俺はその、引き込まれるような笑顔と時折見せる真剣な顔、他にもコロコロと変える表情に、見惚れてしまっていた。

 あと身長も高い。なんか、色々ズルすぎない?

「……? どうかされましたか?」

「えっ、あっ、いや、その……。ありがとうございます、これ、お金です。丁度あるんで。じゃ、ありがとうございました」

 まともに目を合わせることが出来ないまま、俺は花屋を後にした。



     ◎


 それからというもの、俺はその花屋の店員のことが忘れられないでいた。

 で、今何をしているのかというと、

「ヤバっ。この新作バーガー、マジ美味くね?」

「バーガーもいいけどさぁ、こっちのピーチパイもバリ美味い。今期の新作気合い入りすぎっしょ!」

 ファーストフード店で女子高生たちの会話をBGMにしながら、向かいの花屋の様子を見ています……。

 あ、ちなみに俺が今いるのは窓側の端っこの1人用席ね。

 決して女子高生たちと一緒に来ているとかじゃないから。

 てかあの喋り方、今ドキの女子高生にしては珍しくないか?

 ……っとそんなことはどうでもいい。

 放課後にファーストフード店のこの席から花屋を眺めるという行為を、俺はかれこれ1週間は続けてしまっている。

 それをやっていて気づいたんだけど、あの花屋店員、結構女の子ファンが付いているのよね。絶対あの店員目当てだろっていう子がチラホラ出入りしている。

 まぁ、そりゃそうだよな。

 あの優しそうな目や無邪気で楽しそうな笑顔、一緒に花を選んでくれている時の真剣な顔。あんなにキラキラしている人を目の前にしたら、誰だって好きになっちゃうだろ。

 何かにおいて特別な人ってすごく羨ましい。

 何もかもが普通の俺とは正反対だ。

 得意なことも何もない、好きなことも夢中になれることも見つからない。もう高2なんだからそろそろ将来進む道考えなきゃいけねぇんだけどさ。

 でも、もし俺があの店員と付き合うことになったら、少しは俺も変われるのだろうか。特別な人間になれるのだろうか。

 ──って、付き合う!? ないないない!

 あの店員は男! もちろん俺も男!

 てか、あの店員にはもう既に素敵な恋人がいるに決まっている! じゃなきゃこの世界狂ってる! 

「あのー、隣、いいですか?」

「え? あ、はい、……ってえぇ!? 何で!?」

 俺は大声で叫んでしまった。

 目の前に現れたのは、その王子様だったからだ。

「最近いつもここに来てますよね。ずっと待っていたんですけど花屋の方には全然来てくれないんで、オレの方から会いに来ちゃいました!」

 キラキラ眩しい笑顔で、王子様はそう言った。

 え、てかバレてる!? 俺がここから花屋を見てたのバレてる!? うわー、クッソ恥ずかしい。

「オレ、花森大輝っていいます! 花屋の花に森林の森、大輝は大きく輝くって書いて大輝です! 向かいの花屋でアルバイトしています! 高校1年! 背高くて見た目も……まぁ自分で言うのもアレなんですが割と大人っぽいのでよく大学生かと思われがちですけどね」

 あー、うん、俺も今びっくりした。絶対歳上だと思ってたから。

 にしても、名前まで輝いているなー。

 眩しすぎる。直視出来ない。

「あ……俺は……岩﨑真琴。普通によくある岩﨑に、真実の真、楽器の琴……岩﨑の﨑は“大きい”じゃなく“立つ”みたいなやつだけど」

 あー、辞めて、そんなにキラキラした顔で俺をじっと見ないで。

「ねぇ岩﨑さん。何か悩み事ありますよね?」

「え? いや、な、何もないけど……」

「いーや、絶対何かあります。オレで良ければ話聞きますよ」

「あー、や、別にいいんだ。誰かに話すようなことじゃないし」

 俺がそう言うと、目の前の王子様改め花森大輝は、しょんぼりした顔をする。

 この顔も好きだと思ってしまった自分が恥ずかしい。

 どうしたんだ俺! なんでこんなことで心臓がバクバクしているんだ!? こんなのまるで恋みたいじゃないか!

 いや、それは違う、ずぇったい違う! 男が男に恋をするなんて有り得ない!

 第一俺とコイツは正反対なわけだし、仮に恋だとしても上手く行くわけがない。

 ま、まぁ一応意見として? 他の人の意見を聞いてみるってのもアリかもしれないな?

 とりあえず『友達の話』というていで聞いてみるか?

 よし、あくまでも友達の話だからな、友達の!

「あ、あのさ、これは友達から相談された話なんだけどさ、もし目の前に自分の理想の王子様みたいな人が現れて、最初はただの憧れって理由で興味を持ったとする。でもその後もその人のことが頭から離れなくて何かが自分の中をぐるぐるしている。で、これは恋なのか何なのかとか悩み始めた時……花森はどうする? あ、一応、その友達も王子様も両方男なんだけど。流石に男が男に恋するなんてないよな……?」

 花森は数秒考えたあと、

「うーん、オレだったらそれは恋って認めちゃいますねー。何かが心の中でぐるぐるしてる時点で、もうその人はその人のことを好きになっているんですよ。例え男同士だとしても」

「じ、じゃあさ、もしソイツと自分が住む世界すらも違う正反対な者同士だとしたら? 流石に釣り合わなすぎて諦めるしかないよな?」

 そうなんだよな、釣り合わないんだよな。

 所詮俺は普通の人間なんだ。特別な存在である王子様には合わないんだよ。

 こんなことコイツに聞いたって何も変わるわけがない。

 あー、俺、何やってんだろ。恥ず。

「────────ですよ」

 コイツの顔を見るだけでなく、声を聞くだけでもモヤモヤした感情が出てくるようになってしまった。

 もうここに来るのは辞めよう、コイツの顔は見ないようにしよう。

「岩﨑さん?」

「……あぁ、ごめん、ちょっと考え事してた。俺から話振っといて悪い」

「大丈夫ですか? ちょっと涙目になってますよ」

「え、あぁ、うん、大丈夫大丈夫、季節外れの花粉症」

「岩﨑さん」

 その時だった。花森の顔が近づいてきたと思ったら、突然自分の唇に花森のそれが重なってきた。

「ちょ、なに、ここ店ん中……!」

「大丈夫です! ちゃんとこの花で隠しましたから! 誰にも見られてないですよ。はい、この花あげます。オレの気持ちです」

 そう言いながら、花森は赤い薔薇の花を1本俺に渡した。


 さっきのあれは、別に嫌だとは思わなかった。

 花の甘い香り、柔らかい唇の感触、花森の体温。

 全てが心地よいと感じた。

 この気持ちは確かなものなのだろうか。信じてみても良いのだろうか。認めてもいいのだろうか。

 でもきっと、この気持ちに素直になってみても、花森なら受け入れてくれる気がする。

 俺はそう思った。


 御伽話に出てくるような王子様を、俺は好きになってしまったのだ。


     ◎


 ────後日

 花森から貰ったこの薔薇、とりあえず花瓶に入れてみたけど1本だけだとなんだか寂しいな?

 あ、アイツんとこ行って買い足すか? いや、でもオレの気持ちとかなんかそんなようなこと言ってたっけ。じゃあ手を加えるのはなんだか気が引けるよな……。

 てか薔薇の花1本が気持ちってなんだよ意味わかんねぇよ。

 ……あ、もしかして。

 俺はすぐさまネットで花言葉を検索した。

 すると……


 『本数で変わる! 薔薇の花言葉!

   1本→ ひと目ぼれ・あなたしかいない』


!?!?!???

 この意味でオレに薔薇を渡したのだとしたら、なんだか今後すごい展開になっちゃいそうな気がするんですけど!?




初投稿なので温かい目で見てください。

想像力と文章力の乏しさに泣けてくる。

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