私に私が話しかける?聖女様助けて! 美人ゴリラのメイクで変わる私!これで、悲しみの男爵家に光を届けられるのか?
「息ができない、苦しい・・・」
日が暮れる前、教会の小さな女神像に祈りを捧げていた時です。
急に、ノドを絞められたような苦しさ、そして開放されました。
「はぁ、はぁ・・・」
何なの?
私の名はナッツ、教会にお世話になっている孤児で、13歳くらいの女の子です。
最近、自分で金髪をブラッシングすること、覚えました。
◇
昨日、女神像に祈りを捧げた後、何かが、心に引っかかったままです。
「私に、私が、何かを話しかけてくるのです」
教会で、神父様に相談しました。
「訳が分からなくて、怖いです」
「フラン様なら、助けて下さるでしょうか?」
フラン様は、私を子分にしてくださった銀髪の聖女様です。
「神は、貴女を導いているようです」
神父様が、手紙を差し出しました。
「今朝、フラン嬢から、手紙が届きました」
「貴女に、王都へ来て欲しいとの内容です」
中に、馬車のチケットが入っています。
「行きます、行かせてください」
◇
王都の停車場で馬車を降りると、神殿の前でした。
「大きな建物ですね」
なんだか威厳を感じさせる建物です。
「ナッツ、久しぶり」
振り返ると、灰色の服に銀髪の女性です。
「フラン様」
思わず抱きつきます。
「あ、フラン様、ごめんなさい、服が汚れますよね」
「大丈夫よ」
フラン様は、優しいです。
「大丈夫、ナッツのために、腕利きのメイク師を予約しているから」
「え? いや、私でなく、フラン様のお洋服の話なのですが」
「早速、付いてきて」
フラン様は、天然具合も変わりないご様子です。
◇
メイク師さんが、椅子に座った私の顔を、触りまくります。
「フラン様、これは奇跡です。先日の娘さんと、骨格まで同じです」
メイク師さんが、驚いています。
メイク師さんは、どこかのお姫様みたいに綺麗なお顔なのですが、体形がゴリラです。
「大丈夫よナッツ、こちらのメイク師さんは、男性ですが腕は一級品ですので、安心してね」
「男性?」
「あら、私の心は女性よ」
メイク師さんがウインクしました。
(ステキ・・)
世の中の男性、女性が、イチコロで落ちるほど、魅力的なウインクです。
「わ、私はナッツ、心も体も女性です。フラン様の子分です」
「緊張しないでね、ナッちゃん。私もフラン様の子分だから、一緒よ」
逆に怖いです・・・
「ナッちゃん、貴女の肌や髪の毛は綺麗ね。何か付けてるの?」
「いえ、何も、普段は泥にまみれています」
農作業などで、泥まみれな田舎ライフです。
「なるほど・・」
メイク師さん、なぜか、目が光ってますよ。
メイクが終わりました。
自分で言うのも変ですが、可愛いです。
「この顔で、街を歩くのは危険ですね」
「そうですねフラン様、違いは目元の小さなホクロの位置、逆なだけです」
フラン様とメイク師さんが、私のことで、何やら話しています。
「ベールで隠しましょ」
というわけで、なぜか黒いベールで顔を隠します。
服も、黒を基調とした気品のあるものに着替えさせられました。
「私、お金を持っていません」
「大丈夫、王子様から頂いたチケットを使うから」
フラン様とメイク師さんが笑ってます。
逆に怖いです・・・
◇
お屋敷の前に着きました。
「ここのお屋敷は?」
「知り合いの男爵家です」
ベールを下ろしたまま、フラン様に続いて、玄関ホールに入ります。
案内された部屋には、金髪の少女の肖像画が飾られ、白い花で飾られています。
フラン様と一緒にお祈りをします。
ベールを上げると、目の前に、もう一人の私がいます。
「え? フラン様、この絵は、私に話しかけてくる私です!」
「大丈夫よ、ナッツ」
「これから、もっと驚くから」
フラン様、逆に怖いです・・・
部屋に誰か入って来ました。
「男爵様、男爵夫人様、先日、お話しました、ナッツです」
フラン様? お二人が固まっていますよ。
「ナッツ、このお二人の養女になって欲しいの」
「え?」
フラン様、急すぎます・・・
私も固まります。
「フラン様、養女ではありません」
男爵夫人様が、やっと言葉を絞り出しました。
「このナッツ嬢は、娘の双子の妹、私の実の娘です」
私のこと? 何を言っているの?
「私は、双子を産み、当時のしきたりで、一人を神殿にあずけました」
「目元のホクロ、私は、忘れたことがありません」
男爵様、男爵夫人様と、色々話しました。
初めて会ったのに、すぐに打ち解けました。
これが家族なのですか?
私は、今日からこのお屋敷に住みます。
◇
フラン様は、神殿にお帰りになるそうです。
家族全員で、フラン様に忠誠を誓います。
「私は、フラン様の一番の子分になるよう、精進いたします」
家族全員が、、、肖像画のお姉さまも、笑いました。
フラン様も笑っています。
(ステキ・・・フラン様は、女神です)
━━ FIN ━━
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この短編は独立していますが、フランが主人公の短編
「聖女は謙虚に成り上がる!婚約破棄の原因は、私が平民だから?あんたの浮気が原因でしょ?」
https://ncode.syosetu.com/n8552id/
と一緒に読まれますと、さらに面白いと思います