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魔導具店 2


「子供扱いすんな」


ジル坊?は不機嫌そうに言い放つと、近くにある魔導具を観察しだした。


「仲が良いんですね」


「…まぁ、世話には成ってるからな。仲が良いかは知らん。」


ジル坊?は視線を上げずに答える。


「ジル坊さんは…」


私の言葉を遮って、ジル坊?は告げる。


「ジル坊さんってなんだよ!?」


「名前が、ジルなのか、↑ジル↓ボ↑ウなのか、分かりませんでした。」


「ジルだ。ジィーールゥーー!…さすが今日出てきたばかりの田舎者だ。田舎者の匂いがプンプンする。」


ジルさんは、眉間にシワを寄せながら鼻をつまむ。


「田舎者連呼しない下さい。まるで、泥臭いみたいじゃないですか。自然溢れる良い所ですよ?」


「それが泥臭いんだよ」


「花屋も泥臭いですか?」


「ああ、土の匂いがキツイな。ドギツイ花の匂いも嫌いだ。」


「…それなら、仕方ありませんね。花が嫌いな人間がいるとは、知りませんでした。申し訳ないです。」


「謝罪する程のことじゃ…」


私はジルさんの言葉を遮って、告げた。


「では、取り消さないので、代わりに謝罪して下さい。」


「何でだよ?」


「傷つきました」


「事実だろ?」


「……匂いますか?本当に匂いますか?泥の匂いですか?それとも、草の匂いですか?さぁ、さぁ、さぁ!ちゃんと確かめて下さい!」


「はあっ!?」


ジルさんは目を見開く。


私は、自分が臭いかもしれないという事実に、転生してから一番の焦りと不安を感じていた。


よく考えれば、今まで一度も風呂なんて入ったことはなく、泉で水浴び程度しか、して来なかった。 


汗の匂いは花々に飛び込んで誤魔化し、精霊に頼んだ花の香水で誤魔化してを繰り返していた。


私は思いっきり、ジルさんを逃さないように抱きしめる。だが、身長差で胸元に抱きしめる事が出来ない。


これでは、匂いが上手く届かない。


ガッテム!なんてこった!?


「精霊!早く!」


私は、精霊にお願いしてジルさんの片足元を泥濘にする。私はジルさんの無事な方な足を足払いし、私は倒れるジルさん支えつつ胸の中で抱きしめた。  


って、そうだった!?この貫頭衣には、クローバーを入れこんでいた。一番泥臭いヤツだ………


ぱっと私はジルさんを手放した。ジルさんは、よろめき尻もちをつく。


私はすぐに精霊に頼んで、泥濘を取っ払った。これで靴が汚れる事はない。所詮は魔力で生み出した魔法だ。幻に過ぎない。

 

「うぅぅうう゛う゛ーー!何も答えないでえぇくださいぃぃ……」


私は項垂れ、ガクリと膝を付き四つん這いで、拳を床へ叩きつける。


絶対、泥臭いって思われる。


拳を叩きつける。


絶対、臭いって思われる。。


拳を叩きつける。


絶対、っ汗と泥(まみ)れって思われた!


拳を叩きつけた。


でも、叩きつけた辺りが精霊のお陰で、粘土質に成ってほぼ痛みがない。


「……っんだよ、ソレ」


ジルさんの飽きれたような声が聞こえた。


「どういう状況だ…?」


ガッツさんの声が聞こえる。


「さぁ…?」


マージェさんが答えた。












ボクは溜息をついて立ち上がる。


「あ、ボクはユリウスです。呼び方は…ユリでも、何でもいいですよ。」


「あぁ…ユリか」


ジルさんは、一瞬で立ち直った私に瞠目しているらしい。この切り替えの早さは、私の長所だ。能天気とも言える。


私はジルさんに、手を伸ばし起き上がらせる。この体になってから、いや。憑依転生してから、妙に力が強くなっている。その証拠に、ボクよりも体格のしっかりしたジルさんをサッと起こせて、たたらを踏ませた。


「あ、すみません」


ボクはジルさんを支える。特に重いとも思わなった。


「…エルフってのは、みんな怪力なのか?思ってたイメージと随分違うな。」


ジルさんは少し頬を染めて少し目線をそらしながら言う。守護精霊がピュンピンと楽しそうに弾んでいた。


「…ん〜ボクが特殊なのかもしれません。」


「だろうな」


「だろうなって、なんですか?」


「ガッツ、持ってきたか?」


ジルさんから視線を外し、ガッツさんの方を見える。急に話しを反らされて、少しムッとした。


「もちろんだよ。こっちのペンダントが精霊阻害、このマントが認識阻害だよ。着用した者を目立たなくする効果があるからね。」


ガッツさんが、カウンターに並べる。ペンダントには、緑色の宝石の様なものが埋め込まれていて、守護精霊たちが、其方へ行こうとしていた。緑色の宝石からは、高い魔力を感じる。


ジル坊さんが、カウンターから取って精霊阻害のペンダントを私に渡す。持つと、守護精霊の一部が緑色の宝石に吸い込まれた。


「わっ…!?え、コレ大丈夫なんですか?守護精霊が吸い込まれて行くんですが……」


「…そうか!エルフだから、見えるんだね。守護精霊に害はないから大丈夫だよ。」


「へぇ〜」


「あまり変わらないんだが?」


「吸い込まれる量が少ないのかもしれません。」


「…ペンダント自体は機能してるけどねぇ。」


ガッツさんは、不思議半分、困惑半分の表情だ。


「自力でやってみます。」


守護精霊たちにお願い、私の体から少し離れていて。


「…はっ!?」


「…えぇっ!?」


私の周りに、一瞬光の膜が現れて、すっと消えた、様に見えたのだろう。実際は、その位置に精霊たちが居るだけだけど。


大体、30cmくらい空けて私の近くに精霊たちが居る。精霊たちが密集したせいで、人間にも認識出来たのだと思う。


それに、周りに居た普通の精霊たちも協力してくれている。もしかしたら、この結界擬きを広げれば広げる程、ソレに触れた精霊たちにも、お願いし易くなるかも。


「今のは…」


ガッツさんが呆然と呟く。


「守護精霊が可視化されたモノだと思います」


「…初めて見たよ。まさか、精霊が見える日が来るなんてね。」


「ガッツ、そのペンダントの逆の効果を持つものはあるか?」


「……あーそれがね、有ると思われがちだけど、実は無いんだよ。精神系は規制が厳しくてね。」



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