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冒険者ギルド 1


おじさんを視線で探すと、沢山の荷馬車のある場所にいた。従業員も居るようで、荷物の確認をしている。


私に渡された地図は冒険者ギルド、宿屋、そしておじさんのお店の位置が書かれている。とても精密な地図で、中世ヨーロッパでは無理そうな技術である。


あの、カードチェックの台座にしても、妙に近代的な部分はどうやら魔導具を利用しているらしい。


聞いてみると、地図はやはり魔導具で、国が所有する地図を正確に書ける魔導具によって描いたらしい。相場は一つ銀貨5枚だそうだ。一般人でも持っている人は多いだろう。


私は地図の通りに歩くものの、人通りが多すぎて、ぶつかりそうになる。そうでなくても、私の顔を見た半数は、凝視してくる。若干、居心地の悪さを感じた。


私は精霊に意識を集中して、冒険者ギルドまで案内を頼んだ。


ビュー!!と、風切り音が聞こえる。


「きゃっ!?」


「おわっ!」


「わっ!?」


スカートを抑える女性、帽子を捕まえようとする禿げた男性、母親にしがみつく子供、周りの人々は強風に煽られ、各々の表情を浮かべている。 


風が強すぎる。もう少し抑えて欲しい、とお願いすると、そよ風程度に収まった。


精霊の吹かす風を追いかけて、私はギルドへ向かった。


暫く歩いてると、到着した。冒険者ギルドは、横に民家を2つ繋げ、2階を増築したサイズ感の建物だった。


入り口はスイングドアで、屋根には1本の鳥の羽で剣を包むようなエンブレムが掲げられていた。


ーキィイイ…


扉が軋む音を立てる。中には、8つのカウンターがあった。その内の、登録&依頼申請と書かれたカウンターへ赴く。


「いらっしゃいませ。本日は、どのようなご用件ですか?」


素敵な微笑みを称えているのは、茶色がかったストレートの金髪に、猫目な空色の瞳を持つ、20代前半くらいの女性だ。服装は、受付嬢の正装らしく、黒と白を基調としたスーツと制服の間くらいの服だ。胸元には、紐で結ぶタイプであろう緑色のリボンが付いている。このリボンは受付毎に違うようだ。


「冒険者登録をお願いします」


私の顔を見ても動揺しないのは、評価が高い。私も少し微笑んでいた答えた。


「畏まりました。こちらの用紙へご記入ください。最低限お名前だけ、ご記入いただければ、結構ですよ。ですが、パーティーを組む場合は、特技をご記入される方が宜しいですよ。」


「分かりました」


記入用紙には、こう書かれていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


必須)名前


種族


年齢


武器


魔法


備考)武器や魔法以外の特性や特技を書いてください。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


あれ…ちょっと待って?私…じゃなくて、僕の方の名前が無いんだけど…?仕方ない、私の方の名前を書くか。因みに、エルフには名字がない。


でも、百合(ゆり)は、女名過ぎるか?

だったら…






「はい、確かに。ユリウス様ですね。カードを発行致しますので、少々お待ちください。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


必須)名前 ユリウス


種族 エルフ


年齢 15


武器 弓


魔法 精霊魔法


備考)武器や魔法以外の特性や特技を書いてください。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


備考は、特になかったので書かなかった。













私の名前は、オリビア。ここ、アットラ王国の首都エルマータにある、冒険者ギルドで受付嬢をしています。


冒険者ギルドの受付嬢は、大変なことが多くて、特に、冒険者は荒くれ者なので争いごとに巻き込まれてしまう事も多々あります。


ですが、その事に目を瞑れば、お給料の良さに大抵のことはみんな許せるそうです。私には分かりにくい感覚ですが、みんなが嬉しいのなら、私も嬉しいです。


また、高位ランクの冒険者ともなれば高給取りで、1日で白金貨1000枚を稼いだ冒険者も要るとの噂です。


そうした訳で、玉の輿を練らう受付嬢は、登録初期から将来有望そうな若者にツバを付けて置く、という話もよく聞きます。


受付嬢にとっては、将来有望な冒険者を見極める、もしくは、そこそこ有望な冒険者に自分を好きにさせる、それこそが最大の関心事でした。


ですが、私の頭には今、そんな事はあこれっぽっちも有りませんでした。他の受付嬢たちも同様の様子で、彼、ユリウスくんを一心に見つめています。


彼の優しそうな双眸を思い返すだけでも頬が熱くなり、その場で蹲ってしまいたい衝動に駆られつつ、なんとか冒険者カード発行専用の、私の胸の辺りまである魔導具へ足を運び、紙をセットして、ボタンを押しました。


本当に、どうしましょう…?


こんなにも、好きが溢れてくるなんて、今まで一度もありませんでした。


これが運命…?いいえ、きっと違います。他の受付嬢たちも、きっと運命を感じている筈です。私は冷静に分析し直します。


それでも、心臓の辺りへ手を当てると、ドクドクと大きく高鳴るばかりで、全く言うことを聞いてくれませんでした。


冷静に対応できたのは、仕事が見に染み付いていたからでしょう。ベテランで良かったと、今日この時ほど思ったことはありません。


ーピーピー!


どうやら、カードが完成したようです。手に汗握ってゆっくりとカードを引き抜くと、私ははやる心を抑えて、丁寧に歩みを進めました。

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