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瞼の上から光を感じた。意識が深い水の底から、水面へと浮上するのを感じる。


「ふあっ……」


ボクは大きく欠伸をした後、伸びをした。どうやら、朝が来たようだ。なんだか、頭がとてもスッキリした。前世と今世の記憶が合わさり、統合された気がする。


精霊たちを見ると……何故か人形に成っていた。


ボクは目を擦る。


人形に成っていた。


キャッキャと笑い声が聞こえる。


もう一度、目を擦る。


拳の半分程の、幼児のような顔立ちの精霊たちに成っていた。体は其々の属性の色合いで、それを身にまとっている。


例えば火なら、全身が燃え上がっている。水なら水の粒を纏っている。でも、其々の属性の纏かたは、若干違う。大きさも少しずつ違うようだ。


…まぁ、いっか。かわいいし。


急に、みんながじっと此方を見た。


「かわいいー?」


「かわいいー!」


「わぁーい!ユリウスー!」


「……喋ってる」


ボクは呆然とつぶやいた。どうやら、意思疎通能力が開花したらしい。心が読まれるほど、そんな能力発達して欲しくなかったが。


「ユリウスいやー?」


「ユリウス好きー!」


「ユリ!ユリ!ユーリッ!」


「あ、嫌いじゃないよ。好き」


実際、守護精霊たちは、ボクの1番の友達と言っても良い。悲しい時も嬉しい時も、共に分かち合った仲だ。


「やったー!」


「わーい!」


「ユリユリー!」


うん。まぁ…可愛いし良いや。すべてはその一言に集約された。朝から、なんだからドット疲れた気がする。まぁ、体調は良いんだけどね。


さて、と。ボクはカーテンを開き、立ち上がる。この貫頭衣も卒業したいしね。今日は服や靴を買おう。…よく考えたら、僕ってずっと裸足だった。それに、報酬をまだ貰ってない。


まぁ良いや。エルフ珍しい効果でみんな気が付かなかった様だし。


この部屋に入り、1番に目を引いたのが、古そうな姿見だった。他とは若干の差異を感じたからだ。鏡には、丁寧に布が掛けられて、汚れを防いでいた。


基本的には、この部屋は雑な雰囲気だ。壁には、何かの角やボロボロの短剣が飾られていた。家具や小物も、1か所に適当に置かれているよう感じた。


ボクは、姿見を見ることにした。掛けてある布は埃っぽくて、湿り気があった。ボクは布を取っぱらい、近くにあるベットボートに置いた。


姿見には、何時ものボクが映っていた。鏡みたいに、透明度が高いモノで自分の姿見を今まで見た事がなかった。


真っ白な白髪は短い。本来なら、エルフは長い髪を大切にする種族なので伸ばすのが当たり前だ。


でも、ボクは生贄なので神様に捧げるのに邪魔だど、伸ばすことができなかった。…よし、これからは髪を伸ばそう。


エルフの中でも色白な粉雪のような肌、ルビーのように赤いキラキラとした瞳。


瞳の輝きは、魔力の保有量に比例するらしい。そう言えば、転生直後、落ちてくる時に全身が宝石のように成っている、と思っていたけど、あれは魔力だ。あの時、ボクはまだ私だった。恐らく、霊体のような状態だったのだろう。


あの時、空や森、白亜の城辺りと、満遍なく散っているキラキラは魔力で、小さな宝石と思っていたのが、守護精霊たちだった。


顔立ちは、エルフの中でも端正に思える。自画自賛だが、結構イケメンではないだろうか?少し嬉しくなる。


少し痩せ気味に思えるのは、前世の記憶のせいだろう。エルフからすれば普通だ。そもそも、エルフは太り難い。


…つまり、甘いスイーツを食べても、太らないってことかな?……よし。お金が手に入ったら、目一杯食べよう。


…あれ?瞳の色は…赤色というよりも、赤味がかったピンク?……んん?


顔の角度を変えてみる。


…あ。紫に成った、何これ…? 


チェインジアイズって奴?いや、なんで!?


顔の角度により、赤、青、黄色、緑、白、黒、と色合いを変える。なんだか、前よりも混沌としている。


……どうしよう。急に瞳の色が変わるなんて、変だよね…?


「へん〜?」 


「かくす〜?」 


「ひみつ、ひみつー!」


守護精霊たちが、口々に言ってくる。


「元通りの色にできる?」


「できる〜!」


「できるー!」


守護精霊たちが、顔に飛び込んでくる。驚いて瞳を瞑る。ゆっくりと開けると、瞳の色合いが元に戻った。守護精霊の半数くらいが、居なくなっていた。


力の半分が、ゴッソリ抜けた感覚がした。


「わぁーい!火の色だぁ!」 


「ちがうよー!神様のいろなのー!」


「白は光のいろー!死者のいろー!」


「のろいじゃないよ〜?」


「しってる〜!のろいじゃないよー!」


「エルフたちは、わかってないよー!」


「死者の色?それに、神様の色って?」


ボクは精霊たちに聞く。


「白は死者のいろー!赤はかみさまの色ー!むらさきは神様に近いんだよー!」


「エルフたちは、へん!ささげるのは駄目なのにー!」


「大切にしないとねー!」


「ユリユリー!ユリユリー!」


どうやら、ボクを捨てたエルフたちに怒ってくれているらしい。精霊たちは、話せるように成っても、細かい意思疎通までは無理そうだ。


それでも、ボクは彼らが怒ってくれた事が嬉しかった。



ーーコンコンコン


扉がノックされる。


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