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泊まる


「こちらこそ、宜しくお願いします。」


オリビアさんは、私の握手に笑顔で答えてくれた。


オリビアさんはニコリと微笑み、部屋を勝取って来ますね、と言ってカウンターに奥へ消えた。


ベラさんの方を見ると、精霊はふわふわと鈍く動いている。安堵と、少しの落胆、そして気合…?何処から、気合が来たのだろうか?


「…あ!援軍は、ベラさんが、送ろうとしてくれたの!」


「そうだったんですね、ありがとうございました、ベラさん。無駄足になって済みません。」


「い、いえ!だ、大丈夫です!」


精霊は楽しそうにビュンビュンと飛び回る。あまりの勢いに、私は少し笑ってしまった。見ていて飽きない人だと感じた。


「なぁ、さっきから、何でそんななんだよ?」


ルークがベラさんへ不思議そうに尋ねる。


「飴玉上げるから、黙っててね〜?」


ベラさんは、ルークへ飴玉を握らせた。


「やった!いいだろ〜!?」


ルークはアリスへ飴玉を見せびらかす。


「アリスも欲しい!」


「はい」


ベラさんは、アリスへ飴玉を渡す。


「わぁー!ベラお姉さんありがとうー!」


「どう致しまして」


ベラさんは微笑んだ。笑うと、顔の片側だけ、笑窪が出来ていた。


他の受付嬢は、今、私の方を注目していない。ローブとペンダントのお陰だろう。ただ、ペンダントに入っていた筈の守護精霊が、何故か出てきている。かと思えば入ったりと、ペンダントが遊び道具と化していた。


「ユリ様どうしたの?」


「何でもないよ。」


「あ、忘れてた!ユリ様、先っぽだけ、先っぽだけでいいから、触らせてよ〜!」


アリスは再び懇願してくる。先っぽかぁ……う〜ん。


「一生のお願いだから、ね!」 


アリスは瞳をウルウルさせながら、懇願してくる。…か、かわいい。


…でも…うーん。耳は恋人や家族でも触れるのをなるべく避ける部分だ。長い耳や大きな耳は穢れとされていて、忌避される。


まぁ、人間とかはそもそも種族が違うから、ただの動物と見做されるから、特別視される事はない。


言い方は悪いけど、エルフにとって人間とは、人間にとっての猿なのだ。あらゆる生き物を自分たちとそれ以外に分類するエルフは、自分たちよりも上の存在を認められない。だから、エルフ以外の種族と殆ど関わらないのだ。


…でも、これはエルフの感じ方で、人の、それも今の私は神様だ。それに、人間の世界に来た変わり者でもある。


……別に良いかもしれない。先っぽだけなら。


「ユリウス様、部屋のご用意が出来ましたよ。」


アリスへ返事をする前に、オリビアさんが帰ってきた。


「ありがとうございます、オリビアさん」


「ユリ様、耳は〜?」


「迷惑掛けちゃ駄目よ。」


ベラさんは、ピシッとアリスを叱る。


「……はぁ〜い」


アリスは不満そうに返事をした。だが、精霊の雰囲気から、まだ根気が残っていそうだ。


「此方へどうぞ、ご案内します。」


オリビアは言った。


「よし、あんた達は、アタシが送っていくわ。」


ベラさんが言った。


「2人で帰れる!」


「保護者が心配するわ。何処に住んでるの?」


「…教会」


ルークの精霊から、焦りと少しの恐怖が伝わった。


「アリス、諦めないからっ!」


去り際、アリスの声が私の耳に届いて、私は苦笑いした。


「好かれていますね」


オリビアは告げた。


私は自然と広角が上がり、笑みが浮かんだ。


「そうですね。」


部屋は、2階の奥から2番目の部屋だった。


「昔、私の兄が使っていた部屋なんです。申し訳ありませんが、少し散らかっている所もあるので、気を付けて下さい。」


「お兄さんが暮らしてたんですか……ギルドマスターの親戚なんですか?」


「孫です。」


「あぁ、そうだったんですね。だから、勝ち取ると。」


「はい。見事、論破してみせました。お気になさらなくて結構ですよ。もし不便があれば、仰ってください。それと、トイレは1番手前です。」


「ありがとうございます。」


「いえいえ、本当にお気になさらず。私が勝手にした事なので。」


オリビアさんの精霊は機嫌良さそうに揺れている。言葉の通りだろう。もしかして、世話好きなのかな?また借りを返す人が出来た。

 

オリビアさんは、部屋の前で止まり、鍵を入れて回す。


ーーガチャ、ガチャ


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