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やらかし女神と忘却の勇者  作者: 鹿苑寺ゲン
第一章 女神との再会
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武器の調達

前話で説明回になると書きましたが、当初の予定より大きく内容が変わりました。

ということで、今回は主人公の武器選び回です。

 そして翌日。

 

 宿で朝食を済ませた俺達は、装備を整えるために武具店へと向かう。

 前日の宿泊料金同様、サレン様の朝食の代金はもちろん俺持ちだ。

 今日のクエスト報酬から返済するとは言っていたが、本日の宿代分を含めて、そんだけ稼げるのだろうか?


 異世界に来て早くも少額の負債を抱える女神様を連れて、街の大通りを歩いていく。

 俺達が向かう武具店は、昨日とは違うお店である。なぜかというと、昨日のレナード武具店は神器を売った後に、やっぱり返品しろととわがままを言ったせいで、気まずいからだ。


 宿屋のお姉さんから街の地図をもらい、お店の場所も聞いているので道に迷うことなく店の前に着いた。


 ちなみにサレン様に道が分かるかと聞いたところ、

「ごめんなさい。地図に書かれている国や街、村の場所まではわかるのですが、一つ一つの街内部の地理までは把握していません」ときっぱり言われてしまった。

神様も万能ではないようだ。なんでもできると思われがちだが、そこは人間の勝手なこじつけなんだろうか。


 そんな女神様を横目に見ながら、俺はお店の扉を開けて中に入る。

 店の内装はレナード武具店とそんな変わらず、様々な武器屋や防具が至る所に展示されている。


 「いらっしゃい。何かお探しかな?」


 店の奥から背の高いすらっとした、おしゃれなちょび髭のおじさんが現れた。

 てっきり大柄な熊のような店主が来るかと思いきや、このお店の店主は気さくな近所のおじさんという感じがする。


 「武器と防具を揃えたいので、何か見繕ってもらえませんか?」

 「ほうほう、お兄さんの装備一式ね。ちなみに予算を聞いても?」


 神器を売ったおかげでお金はたんまりあるが、いまいち相場が分からん。

 このあとも買い物はあるし、半分以上は残しておきたいから四割くらいでいいか。


 「四十万リギルくらいっすね」

 「おおーそんだけあれば、結構良いものが揃うな。よし、俺に任せな! かっこよくていいやつを見繕ってやる!」


 提示した金額におじさんは鼻息を荒くすると、意気揚々とカウンターから出てきて、店内を案内してくれる。

 

 「よし、まずは武器だな」


 おじさんの後についていき、様々な武器が展示してある一角にいく。


 「剣、槍、斧、弓、ナイフ、格闘用の手甲や足甲なんかもあるぞ」


 うわあーどれも目移りするな。選択肢が多くて分からないから、アドバイザーに聞いてみよう。


 「サレン様から見て、俺に合う武器ってなんですかね?」

 「たいていの武器は使いこなせるになっていますが、相性もあるので、神器と同じかそれと同系統の物が良いですね。おじさま、刀はありますか?」


 サレン様が聞くと、店主は額に手をあてて答える。


 「わるいなお姉さん、うちに刀は置いてないな。元々流通数が少なくてあんまり出回んない上に妙に人気でな。つい昨日、レナードの店に一本だけあったらしいが、それも一瞬で売り切れたようだ・・・ん? なんで二人して顔を背けるんだ?」


 「「いえ、なんでも・・・」」


 思い当たる節のある話なので、俺も彼女も気まずそうな態度をする。

 話題を変えるとしよう。


 「刀以外となると、同系統の物は剣とかナイフですかね?」

 「あっ、そうですね。どちらかというと剣の方が良いかと」

 「剣か! よし、それならこの前入ってきた良い物があるぞ!」


 サレン様の言葉に店主はいち早く反応し、ドタバタと売り場ではなくカウンターの奥へと消えていった。

 待つこと数分後、細長い木箱を抱えて戻ってきた。


 「先日、ドラグマから剣を数本卸したんだが、その中でも一級品の代物だ」


 店主は自信ありげに言うと、木箱を台の上に置いて蓋を開けた。

 ドラグマとは産業都市の名前で、なんでも生産者ギルドの本部がある街だそうだ。そこには腕の良い鍛冶師や薬師などが、数多く店を出しているらしい。

 サレン様がこっそりと耳打ちで教えてくれた。


 箱の中には一本の剣。黒い鞘に入れられており、持ち手には金色のナックルガードが付いている。


 「こいつは、剣の種類でいうサーベルというやつだ。軽くて片手で扱える上に切れ味もいい、それに持ち手も守れるから万能なもんよ」


 箱から剣を取り出して、こちらに物を見せながら上機嫌におじさんは語る。


 「ほら、お前さんも持ってみろ」


 剣を手渡されたので受け取ると、俺はゆっくりと鞘から抜いてみた。

 白くきれいに輝き、かすかに湾曲した刀身、程よい重量、派手な装飾はないがどこか強い存在感を放っているように感じる。


 「うん、いいんじゃないか。なんかしっくりくるし」


 剣を鞘に入れて、いったん店主に返す。


 「そうだろう、そうだろう。こいつはローグという名の知れた鍛冶師が作っていてな。それにこの剣には名前が付いているから、作った中でも自信作なんだろうよ」


 おじさんは腕を生んで満足げに言うと、木箱の裏側に書いてある文字を見せてきた。

 そこには『アルバコア』と書いてある。

 なんか響きがいいな。隣でサレン様が笑いをこらえているのが謎だが。


 「よし、これください」

 「まいどあり! こいつは三十万リギルだ。これから防具も見るんだし、お代は後でまとめてでいいぞ」


 店主は剣をカウンターに置くと、次は防具のコーナーに移動する。


 「残り十万リギル相当となるとフルプレートは無理だが、必要な部位だけ買うという手もある。数万リギル程度でも良質な物はあるから、高い品も買ってくれたしサービスしよう」

 「ありがとうございます!」


 おじさんに一言告げると、再びサレン先生の肩を叩いて知恵を借りる。


 「うーん、正直ステータスは十分高いと思うので、防御力はそこまで気にしなくていいかと。それよりかは動きやすさ重視で選んだ方が良いと思います」

 「ええーほんとかなそれ・・・」

 「そしたら動きやすくて、ほどよく防御力のある物と上下の服をお願いします!」

 

 全部乗せで、みたいな感じで女神様が無茶ぶりを言うものの、それに答えるかのように店主は親指を立て、ガチャガチャと店の棚から探し始める。

 待つこと数分、防具一式を腕いっぱいに抱えて店主が戻ってきた。

 

 「ミスリル製の胸当てに、肩当てと籠手だ。原料のミスリルは、軽いわりに頑丈な鉱石だから剣や防具の素材に打ってつけなんだ。それから足回りだが、これはデルポッカという魔物の皮で作られているブーツで撥水性に優れている。そして上下の服、シャツとズボンは騎士団にも採用されている動きやすさ重視の物だ。こいつはサービスしといてやる」

 

 一つ一つ説明され、カウンターの上に次々と店主おすすめの品が並んでいく。

 すごい、サレン様の無茶ぶりに答えるかのように商品を探してきたのか。

 

 武器と防具の選定が終わったので、ポーチからお金を取り出して会計を済ませると、装備を着るのに店の奥を貸してくれるというので、早速着替えてみることにした。

 着替えること数分後。


 「おおーいいですね! 冒険者らしい格好で素敵ですよ!」

 「やはり俺のセンスに狂いはないな。似合ってるぜ、お兄さん!」

 

 買った装備一式を身に着け、サレン様と店主にお披露目した。

 お披露目間に鏡を見てきたが、自分でも割とかっこいいと思っている。

 それにこのミスリル製の防具だが、ほんとに軽いな。金属製の防具なのに身軽に動けるし、肩周りと腕を動かしても鬱陶しさをまるで感じない。

 

 値は張ったが、これは良い買い物をしたぞ。

 店主にお礼を言って店を後にする。

 装備もそろったことで、次は冒険者ギルドへ向かうのだ。

 

 「そういえば、剣の名前を聞いた時に笑ってたのは何でですか?」

 

 ギルドへと向かう道中、そういえばと隣を歩くサレン様に尋ねてみた。

 

 「ああ、そのことですか。実はですね・・・」

 

 肌をポリポリとかきながら、少しバツが悪そうな表情をする。


 「この世界ではたぶん呼ばれていないんでしょうけど、『アルバコア』って九重さんの世界ではお魚のマグロの別名なんですよね・・・。いやぁ、語感はすごくかっこいいのですが、つい・・・」

「ああ、そういうことでしたか・・・」

 

 左の腰に差してある俺の愛刀にそっと目を向ける。

 アルバコア、お前は泣いていい。だが恨むならサレン様ではなく、お前を作った鍛冶師を恨んでくれ。  


次回は異世界転生でお馴染みのギルド、そして凄まじい能力で周囲が騒ぎになる・・・的な回です。

いよいよ遊星とサレンのステータスが分かります。

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