美しき庭園
ふと目を覚ますと、俺は木や花が鮮やかに生い茂る庭園にいた。
小鳥の囀る木々に囲まれ、色美しい花が辺りに咲き乱れている。
そこは、西洋式の美しい庭園だった。
はてさて、なんでこんなところにいるんだ? たしか俺は大学の図書館からの帰りで駅のホームにいたはず・・・。
さっきまで高層ビル群に囲まれ、帰路につくサラリーマンや、これから遊びに行くであろう同年代のやんちゃそうな若者達であふれる新宿駅にいたというのに現在、目前に広がる光景はどこぞのお金持ちや貴族が住む屋敷にあるような気品のある庭園だ。
しかも驚くのはそれだけではない。
来週ゼミで提出する論文作成に手こずってしまい閉館時間ぎりぎりまで居残っていたため、図書館を出た時はもう夜だった。
だが、俺が今いるこの場所は昼間のように明るい。屋内なのか木が生い茂っているせいで陽の光を直接確認できないが、空から明るい光が指している。
今の時刻を見ようとズボンのポケットからスマートフォンを取り出す・・・が、あれ、なんでないんだ? いつもの定位置である右ズボンのポケットに入れたはずなのに!
腕に何かを付けると鬱陶しいいため、普段から腕時計をしていないのがここで裏目に出るとは。念のため、ズボンの左ポケットや後ろのポケット、それからシャツの胸ポケットを探してみるが見つからない。
気づかず鞄の中に入れたかなぁーと思いきや、そういえ背負ってたはずのリュックサックもない。
手荷物ゼロの状態で、俺はよく分からない所に迷い込んでしまったのか。なんてことだ・・・鞄の中には論文のデータが入ったusbメモリや財布もあったというのに。
運転免許書とかクレジットカードなんて紛失したら色々手続きめんどくさいんだぞ!
そんな感じで途方に暮れていると、庭先からコツ、コツ、コツ、と足音が聞こえてきた。
「ええっと・・・九重遊星さんですね? お待ちしておりました」
柔らかな声と共に奥から姿が現れる。白を基調としたフリルのドレス姿に背中まで伸びた金色の長い髪、宝石のようにきれいな赤みのある瞳、凛としていながらもどこか穏やかで温かみのある風貌をした美少女であった。
歳は俺より少し下な感じだが、大人びた雰囲気をする女性がなにやら俺をお待ちしていたようだ。
容姿に見惚れてしまい腑抜けた面をかます俺のことはお構いなしに、彼女は言葉を続ける。
「この度はお悔やみ申し上げます。不慮の事故とはいえ、私としても大変心苦しいです。まだまだ先もあったでしょうに・・・」
「あ、これはどうもご丁寧に・・・」
丁寧に一礼をして、悲しげな顔を向けてくる。なんのことやらわからんが、俺もぺこりと頭を下げる。
なんだ? もしかして俺の知り合いの誰かが死んだのか?
「誠に残念ですが、これも運命というものでご理解を何卒お願いします。ああ、自己紹介がまだでしたね。私はサレン。今回、あなたを導く女神です。改めまして死後の世界へようこそ、九重遊星さん」
「・・・はあ?」
どうやら死んだのは、俺のようです。
初投稿ですが、よろしくお願いします。