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新たな場所、新たな生活

「――あれ……?ここは……。」

紹介してもらった住居とやらは何の因果か、俺たちが初めに目を開けた場所からすぐ近くの建物だった。

大きな建物だ。

確かにこの辺の建物は、ほとんどが大きいものだが、その中でも最高級の住宅とのことだった。

この大きな建物の中の一室が、俺たちの住居ということになるらしい。

外観に驚きつつ中に入る。


中へ入ると……何もなかった。

「どうぞこちらへ。」

いや、リネアが示した場所に、青く光る円形の足場がある。

「――これは?」

「――とりあえず、こちらへいらっしゃってください。」

答えるまでに妙な間があり、なんだか説明を省かれた気がする。

説明が面倒だったのだろうか。

「わ……分かった。」

とりあえず、言われるがままにリネアに案内された円の中へ入る。

次の瞬間。

一瞬で別の場所へ移動していた。

円から出る。

すると、移動先の青い円の中から、ミオ、ベル、ユン、最後にリネアが出てくる。

どうやらここは、建物の上の階らしい。

そこそこの高さがありそうだが、何階なのだろう。

「こちらは、転送機です。端末の情報に応じて転送を行います。」

リネアは、移動後に簡単に説明をする。

説明後、リネアは先頭を歩き、俺たちの案内を再開する。


部屋へ向かう際にも、ロボットとすれ違う。


ベルよりも少し背丈の低いロボットで、動くゴミ箱といった感じだ。


いや、あるいは掃除機だろうか?


「――リネア、あれは?」


「あちらは、憎き清掃用ロボットです。」


「そうか、清掃用ロボットか……。」


……ん?なんか、リネアの主観的な返答じゃなかったか?


「はい、私をスクラップ置き場へと破棄したものと、同じタイプになります。」


「なるほど。そうか、なるほど……。」


これ以上触れるのはやめておこう。




「こちらが、私たちのお部屋となります。」


リネアは、一つの扉の前で立ち止まり、案内を始める。


「そうか……どうやって開けるんだ……?」


鍵穴も何もない扉の前で、俺は困惑する。


いや、扉には切れ目があるので、そこから開くことは分かるのだが、扉の前に立っても開かない。


「こちらへ。」


リネアは扉のすぐ右側にある四角いパネルを指し示す。


「……えっと……どうすれば?」


「端末をかざしてください。」


なるほど、そういうことか。


俺が腕に嵌めた端末をかざすと、プシューという音と共に扉が開く。


「お、おお……。」


驚いて間抜けな声が出る。


「さぁ、ミオさん、ベルさん、ユンさんもそれぞれ端末をかざしてから中へお入りください。」




「お、おお……。」


また間抜けな声が出てしまった。


中は……広かった……。


そして、俺でも見たことがないような機械もある。


「こちらが私たちのお部屋となります。どうぞ、ご自由にお(くつろ)ぎ下さい。」


「――あ、ああ。ありがとう。」


俺は呆気に取られていた。


それぞれ、一人一部屋ずつの部屋があり、さらにはみんなで集まれるような大部屋、キッチンと思われるような場所など、至れり尽くせりだ。


大部屋には巨大なモニターが設置してある。


いや、果たしてモニターといっていいのだろうか?

それは、壁に取り付けられており、透き通った水色の板だった。


俺がそのモニターに驚いていると、リネアが隣にやってくる。


「本日の天気をお願いします。」


リネアがモニターに話し掛ける。


すると、モニターはブォンと音を立てて画面を光らせる。


「本日の天気は晴れ。降水確率は0%となります。」


モニターは画面に晴れのマークを表示しながら、喋り始める。


「――す、すごいです!アイラさん!これなら、お洗濯もお天気の心配なくできます!」


ミオがはしゃいでいる。


住む場所が決まって、安心したこともあったのだろう。


いや、俺ももちろん驚いたが、ミオがこういう顔をするのは中々に珍しい。


「最近の新しい報道をお願いします。」


さらに続けて、リネアがモニターに話し掛ける。


「科学都市アトランティスの医療施設にて、ウィルスにより清掃用ロボットが暴走。人間の死傷者0。アンドロイドの行方不明者多数。身元は現在、全て不明となっております。」


リネアたちのことだ……。


それにしてもすごいな……。


これはきっと……テレビなんだと思う……。


「このように、様々な情報をこちらで視聴することが可能です。また、その端末でも情報の閲覧が可能となっております。」


リネアは、俺の腕に視線を向けながらいう。


「――これか?」


それに気付き、俺は端末をリネアに見せながら聞く。


「はい、その端末の側面のボタンを押してください。」


言われた通り、横に付いているボタンを押す。


すると、端末から空中にパネルが表示される。


ミオとベルとユンも同じように操作する。


「――すごいです!なんですかこれ!アイラさん!すごいです!」


ベルも驚いたようだ。


俺も分からん。


なんだこれ。

すごいなおい。


「音声のみで操作が可能となっておりますが、こちらのパネルでも操作可能となっております。情報の閲覧やクレジットの確認、鍵の開け閉め、端末同士での連絡のやり取り、様々なことが可能となっております。」


「――連絡……ですか?」


俺が口を開く前に、ミオが気になったことをリネアに聞いていた。


「はい。現在、アイラ様、ミオさん、ベルさん、ユンさんはご家族として登録されておりますので、連絡が可能となっております。」


「――す……すごいすごい!すっごーい!これならいつでもアイラさんとお喋りできるってことですよね!」


ユンが嬉しそうにする。


「はい。ではユンさん、こちらへ。」


リネアはユンを連れ、部屋へ案内する。


――ピピピ、ピピピ。


少し待っていると、端末から音が鳴る。


――しまった。

どうすればいいのか聞いてなかった……。


とりあえず、側面のボタンを押す。


「――あ、アイラさん!アイラさんだぁ!」


端末から表示された空中のパネルに、ユンの顔が表示され声が聞こえる。


「このように、遠くからでも連絡を取り合うことが可能となっております。」


ユンの隣に映るリネアが教えてくれる。


「おお……すごいな。」


「はい。では切らせていただきます。」


リネアがそういうと通信は切れ、すぐにユンを連れて戻ってくる。


「――アイラさん!これでいつでもお喋りできちゃいますね!」


ユンは嬉しそうだ。


いつの間にか元気になったようでよかった。


「そうだな。でも、用もないのにむやみに連絡しないようにな?」


「――むぅ……はーい……分かりましたぁ……。」


まだどこか嬉しそうなまま、ユンは頬を膨らませる。


「ちなみに、音声にて通話開始できますので、誰と通話するのかを端末に喋り掛けていただければ、通信が可能です。また、応答ができない場合は端末にそう(おっしゃ)っていただければ、キャンセルも可能となっております。」


「な、なるほど……とにかく便利なのはわかった……。」


「はい、それでは今日はここまでにして、各自お休みという形ではいかがでしょうか?」


リネアは話を区切り、そう提案してくる。


俺もそれがいいと思う。


リネアが言わなければ俺が言っていただろう。


「そうだな。それがいいと思う。ユンもまだ完全に回復したわけじゃないだろうし、そうしよう。」


「分かりました。」


ミオが初めに答える。


「はい、そうしましょう。」


「はーい!」


続けて、ベルとユンも賛成する。


「あ、あと、お食事と消毒についてお伝え忘れておりました。」


リネアが言う。


なるほど、それは大事だな。


――ん?食事と……消毒?


「じゃあ……教えてもらっていいか?」


リネアはすぐ隣の、キッチンと思われる部屋へ俺たちを引き連れて行く。


「まずはこちらとなります。こちらのボタンを押していただくと、十分な栄養を摂取することのできる食事を取ることができます。」


リネアは、壁についているボタンを指し示しながらそう案内する。


壁には、いくつものボタンと共に、何かが出てきそうな窓が付いている。


「……えっと……どうすればいいんだ……?」


分からないことだらけだ。


「では、試してみましょう。」


リネアは、ピッと壁のボタンを押す。


すると、ボタンの横に付いた窓から、手の平サイズのパックが出てくる。


「――こ……これは……。」


「どうぞ、蓋を開けてお召し上がりください。」


「……お、おう。いただきます……。」


うん。


――ゼリー飲料だ!しかもうまい!なにこれ、うまい!


「いかがでしょうか?そちらは、ハニートースト風味となります。他にも様々な味がございますので、試してみていただければと思います。また、端末からもご用意が可能ですので、端末の操作後、こちらの窓にかざしていただきますようお願いいたします。」


「な……なるほど……。」


「もしこちらの食べ物に飽きてしまわれた場合、他のものをお召し上がりになりたい時は、こちらのボタンを押していただければと思います。」


ゼリー飲料のボタンの横、窓とは反対側のボタンを示しながらリネアは言う。


リネアの体で隠れていて、見えなかった……。


「――お、おお。そっちにもボタンがあったのか……。」


「では、試しにお一つ。」


リネアはそう言って、ピッとボタンを押す。


……ゼリー飲料の時とは違って、少し時間が掛かる…………。


――チンッ。


食べ物が温まった時のような、聞きなれた音が聞こえた。


「――こ……これは……!」


「どうぞ、お召し上がりください。」


――(ドンブリ)だ。


ほかほかご飯の上に、サクサクのとんかつが乗せられ、甘辛いいい匂いがする……。


「――かつ丼じゃねぇか!!」


「はい。基本的にはゼリー飲料で十分な栄養摂取が可能ですが、飽きてしまわれた場合には、他にも(ドンブリ)料理がございますので、ご自由にお召し上がりいただければと思います。」


「――なんで(ドンブリ)!?」


「さぁ?」


まぁ、そういうものなんだろう……。

きっとここではこれが当たり前ということだ。


――いや、しかも美味いなおい!


甘辛くて、見た目通りサクサクなとんかつとフワフワの卵。

歯ごたえ、食感も良くて、タレの臭いがさらに食欲を増幅させる。


無限に食えそうだ。


「むぐむぐ……ゴクン。……食材とかはどうなってるんだ?これ……?」


「こちらは、都市の方から支給されております。補給用のロボットが、衛生面には最大限配慮の上、外から補給したものがこちらから提供されるようになっております。安心して好きなだけお召し上がり下さい。また、これ以外のものをお召し上がりになる際には、購入していただく必要がございますので、そのようにお願いいたします。」


「なるほど、わかった。」


とにかく便利だな。


リネアが話している間に食べ終えてしまう。


「では、お次はこちらへ。」


ミオ、ベル、ユンすまない。

三人はあとで好きなだけ好きなものを食べてくれ。


「こちらは消毒ルームとなっております。こちらに入っていただくと。」


リネアはそう言いながら、電話ボックスのような透明の部屋に入っていく。


――プシュ―……。


「――なんか出た……!」


ボックスの上部から霧状の何かがシャワーのように噴射している。


シャワーが止まり、リネアが出てくる。


「このように、消毒剤での身体の消毒が可能です。コンピューターウィルスなどでもない限りはすべて消毒できますので、ご自由にご利用下さい。また、衣服は脱いでいただいても着たままでも問題ありませんので、そちらもお任せします。」


「……なぁ、リネア……風呂はないのか?」


「そうでしたね。ミオ様たちもいらっしゃることですし、ご案内します。シャワーも浴槽もございますので、暖かいお湯に浸かりたいという場合は、そちらをご利用いただければと思います。ですが、基本的には消毒のみで問題ございませんので、私としてはそちらをお勧めいたします。」


リネアは、消毒ルームのすぐ隣奥にあった風呂場を案内し、自分の意見を付け加える。


「ありがとうリネア。」


「はい。とりあえずはこれで充分かと思われますが、他に何か聞きたいことなどはありますか?」


「いや、俺は大丈夫だ。ミオ、ベル、ユンはなにかあるか?」


「い、いえ、大丈夫です。」


「私も大丈夫です。」


「ダイジョブでーす!」


三人ともそう答えながらもうずうずとしている。


お腹が空いているのか、風呂に入りたいのか、あるいは見たこともないものばかりで落ち着かないのか……。


なんにせよ、今はみんな好きにしてもらった方がよさそうだ。


「それじゃあ、あとはみんなそれぞれ好きに休むってことで……。」


「あ、すみません。もう一つだけ。」


俺が言い掛けると、リネアが口を開く。

リネアは結構抜けているアンドロイドなのかもしれない。


「――お、おう。なんだ?」


「すみません。えっと、もし他に分からないことがあれば、もちろん私に聞いていただいて構わないのですが、端末でも簡単なことであれば分かると思いますので、そちらを活用していただければと、そう思いまして。」


なんだか控えめな態度で微笑ましくなってしまう。


「そうか、分かった。ありがとう。それじゃあ、みんな。今度こそゆっくり休もうか。」


「はい、そうですね。」


「分かりました。」


「はーい!」


「かしこまりました。」


返事をし、各々自分の部屋へ向かって行く。


やっぱり、まずは自分の部屋が一番気になるよな。


「さて、じゃあ俺も――。」




俺は、自分の部屋に入り、ベッドに腰掛ける。


――ん?ベッド……?なのか……?ベッドにしてはやたらと機能的な形をしているようにも見える。


まぁ、腰掛けた感じとしては柔らかいし、サイズとしても余裕をもって眠れるほどには大きいので、ベッドではあるのだろう。


「ベッドはいかがですか?アイラ様?」


「んー……いい感じだな。それにしても今日は疲れたな……。」


「そうですか。是非ゆっくりお休みいただければと思います。」


「おう、ありがとう…………。――いや……なんでいるのさ!?」


普通に応答してしまったが、リネアが俺に喋り掛けてきていた。


みんな自分の部屋に向かったと思っていたが、どうやらリネアはずっと付いてきていたようだった。


「私は、アイラ様専用のアンドロイドですので、常にご一緒いたします。身の回りのお世話から、お休みの際の読書や子守唄、性欲処理までお任せください。」


「――いや、いいって!大丈夫だから!」


「そうですか。」


リネアは少し残念そうだ……。


「――――でも……出ては行かないのな!?」


「はい、ご一緒します。」


まぁ、いいや……今日は疲れた……。


風呂ぐらい入りたかったけど、このまま寝てしまおう。

もう身体も精神も限界だ……。


住む所は確保できたわけだし、ゆっくりで平気だろう。


こう色々とあると、あっち側でも仕事が手に付くか心配になる……。


今日あったこと、これからのこと、色々なことを考えていたはずだったが、いつの間にか意識がぼんやりと霞んでいき、睡眠の甘い誘惑に逆らえずに落ちていく。

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