いざ、雪山へ
―――外から明るい光が差し込んでくる。
「――おはようございます。」
ミルの声で目が覚める。
ミルがこの町にきてから、数日が経った……。
最近の朝食は、ミルが作ってくれている。
いや、正確には、俺の朝食に関してはだけはミルが作ってくれているのだ。
どうやら、俺は本格的にミオとベルに嫌われてしまったらしい。
ミオとベルは、自分たちの朝食のみを作り、食べ終わると二人揃って出掛けてしまう。
そうなると、必然的に家にいるのは俺とミルだけになり、俺が起きる前にはミルが豪勢な食事を用意してくれるのだ。
ミオの料理は、もちろん美味い。
家庭的で温かく、毎日でも食べたくなるような味付けだ。
それに対して、ミルの料理は王族らしさとでもいうのだろうか。
朝から食べるには中々に重たいものが多い。
ピーグルの肉を甘辛く味付けし、丸焼きにしたものなどが出てくるのだ。
まぁ、それでもこれはこれで美味いので、朝だろうと問題なく食えてしまうわけではあるのだが……。
「今日もミルの料理は美味いな。」
「うふふ、ありがとうございます。」
「ミルがきてから、朝食が豪勢になったよ。」
「ありがとうございます。いっそ、私と二人だけで暮らしますか?」
「いやいや、ミオとベルはどうするんだよ。」
「さぁ?どうするんでしょうね?」
ミルは、俺のことを慕ってくれている。
それは分かる。
だが、時々なんとなく怖い気がする。
もちろん、悪意があるわけでないのは分かるのだが……。
そんなこんなで、俺はミルの用意してくれた豪勢な食事を食べ終わる。
さて、今日の予定はどうするかな……。
正直、ここ最近の稼ぎで生活には困らない。
だが、ここ数日は少しのんびりし過ぎてもいた。
ギルドにでも顔を出して、何かしら手頃な依頼でも探してみてもいいかもしれない。
そう思い立ち、出掛ける支度を始める。
「――ミル、今日はギルドに行ってくる。」
支度をしながら、ミルにそう伝える。
「そう……ですか……。」
ミルは少し寂しそうな声で返事をする。
そう言えば、ミルが家にきてから、依頼目的でギルドに行くことはなかったかもしれない。
「家のことはミルに任せる。だから、留守を頼めるかな?」
俺は、ミルも家の住人として頼りにしていることを分かってもらうよう、言い回しを気を付ける。
「――あ、はい!お任せください!」
ミルは、寂しそうだった表情を明るくして返事をする。
「――――アーイーラーさーん!」
ミルとそんな話をしていると、家の外から俺の名前を呼ぶ声が聞こえてくる。
「……ん?誰だ?」
ミオやベルならわざわざ名前を呼んだりせずに家に入ってくるだろう。
「――あれー?いないのかな?アーイーラーさーん!!」
すぐに出なかったため、もう一度呼ぶ声が聞こえる。
「――私が出ますね。」
ミルは声に反応し、家の出入り口に向かいながら支度中の俺にいう。
「――ああ、頼む。」
ミルは小走りで声の方へと向かう。
「――はーい!」
外の声へ返事をしながら、ミルは扉を開ける。
「――――だ、誰ですか!?」
突然の来訪者の第一声は、そんな言葉だった。
訪ねてきた者が訪ねた家の住人に対していう言葉としては大分おかしな言葉ではあるが、その訪問してきた少女は相当に驚いたのであろう。
心からそんな言葉が出てしまったといった様子だった。
「……あ、あの……えっとぉ……。」
ミルも見覚えのない……ベルよりも少し背の高いそんな少女への言葉に対する返答に困っている。
そんなミルの様子に、訪問者は慌てたように自分の訪ねた家が目的の家かどうか確認するような素振りを見せる。
「――あ、アイラさーん!」
そして、その少女はもう一度目的の人物の名前を呼ぶ。
支度を終えた俺は、その訪問者の下へと向かう。
「――あ、アイラさん!」
俺のことを目に留め、嬉しそうに名前を呼んでくる。
サキュバスのユンだ。
確かに、ここしばらく会っていなかった気がする。
少なくとも、ユンがミルの存在を知らない程度には会っていなかったわけだ。
「むー……もうっ!アイラさんってば!!」
なぜだかとても怒っている。
怒りながら、目にはたくさん涙を溜める。
溜めきれなくなった涙は、ポロポロと零れ落ちている。
「えっと……ユン、久しぶり。……どうしたんだ?そんなに泣いて……。」
「どうしたじゃないです!!ずっと心配してたんですよぉ!!」
「心配……?何で…………?あ……。」
聞きながら思い出す。
ユンとは、湖の件で出掛ける前に話したきり会っていなかった。
戻ってきたら会いに行くという約束をしていたにも関わらず……。
「……もしかして……忘れてたんですか?アイラさん……!!」
ユンは頬を膨らませご立腹なご様子だ。
「……えっと……ごめん……。」
ここ最近いろいろあったので……などと言い訳をしようかとも考えたが、素直に謝ることにした。
少なくとも、ユンが俺のことを心配してくれていたことに嘘はないし、俺のことを待ってくれていたのだろう。
それに対して嘘で答えるというのは、あまりにも不誠実というものだ。
「――もう!……もう!!」
相当心配してくれていたのか、とても怒っているのか、言葉らしい言葉はなかった。
「……本当にごめん。……なんでもするから、許してくれ……!!」
心からの言葉だった。
こんなに心配させた上に、怒らせてしまったのだ。
どんなわがままでも聞くべきだろう。
と、数秒の間本気で思った。
ユンは、ニヤリと邪悪な笑みを浮かべる。
その顔を見て、俺は数秒前の自分を後悔する。
「――なんでも……ですか?なんでも、ですね?なんでもって言いましたよね?えへへへへー」
可愛らしく、でも邪悪な笑みでそう問い返してくる。
「……はい……言いました……。」
俺は、諦め半分で返事をする。
「――うっふっふー。ところでアイラさん?今からどこかに出掛けるんですか?」
「――え?ああ……ギルドに依頼を受けに……。」
ケロッとした様子で急に話題を変えてきたので、つい正直に答えてしまう。
そして気付く。
しまった。
と……。
「そうですか、そうですか。じゃあ……私も連れてってください!」
満面の笑顔でおねだりをされてしまう。
まぁ、そういう話だよな……。
「……わかった。いいよ。一緒に行くだけならな。」
一応、簡単に条件を付けて承諾する。
「あ、ところで……。」
ユンはさらに気付いたように質問を重ねてくる。
「その人は、誰なんですか……?」
俺のうしろに控えていたミルの方へ視線を向けて、ユンはそう質問してくる。
「――あ、そうか……えっと、彼女は……。」
ミルは、言い掛けた俺の前へ出る。
「――私はミルと申します。訳あって、アイラ様とご一緒に住まわせていただくことになりました。アイラ様のことは、全て私にお任せいただければと思います。」
ミルはそう自己紹介をしながら、ニコリとユンへ微笑む。
微笑んだミルとユンの視線はバチバチと交差している。
「――そ、そうですか。私はユンです。アイラさん!ギルドへ行くんですよね?私も付いていきますね!」
ユンはムッとした様子で返答する。
自己紹介は……簡単に済まされた。
俺はユンにギルドへ行くよう促されつつ、さも当然のようにユンを連れていくこととなった。
ユンは俺の腕をぐいぐいと引っ張る。
俺は、豊満なおっぱいの重力に抗いきれない。
「――あ……えっと……ミル!じゃあ、すまないけど家は頼んだ!」
腕を引かれながらも、ミルへ声を掛けていく。
「――はい、わかりました。任せてください。」
そう答えて、ミルはニコリと微笑んでくれる。
ユンに腕を引かれ、ギルドに到着する。
俺の腕は、ユンにガッチリとホールドされている。
ちょっとやそっとじゃ放れることはないだろう。
こんなにしっかりホールドされているにも関わらず、痛いどころか柔らかい感触で幸せな気持ちになるのは不思議だ。
やむを得ず、俺はそのまま掲示板を確認する。
「――あ、アイラさん!!お久しぶりです!!」
掲示板を見ていると、嬉しそうな声で呼ぶ声が聞こえる。
受付のお姉さんだ。
「なんだか、すごくお久しぶりです!」
そんなに嬉しそうにするほど久しぶりでもないとは思うが……。
まぁ、会いたがってくれていたということだろう。
俺は、受付のお姉さんの下へ向かう。
「お久しぶりです。」
「――はい!お久しぶりです!お元気でしたか?……えっと……それは……?」
俺の腕にガッチリとしがみ付くユンを見れば、聞かないわけにもいかないだろう。
「……ええ、まぁ、それなりに……。えっと……これは……ちょっと、色々あって……。」
苦笑いしつつ、乾いた笑いで返し、はぐらかす。
「そ、そうですか……。」
受付のお姉さんも苦笑いだ。
「――ま、まぁこういう日もあります。」
俺は、すごく適当な言葉で誤魔化す。
「……えっと……最近はいかがですか?オークの一件以来お見掛けしませんでしたが……。」
受付のお姉さんも乾いた笑いで答え、話題を切り替える。
「あ、ええ、まぁ……特に何もなくって感じですかね……。」
「そうですか。よかった。もしかして怪我でもされたのかと……。」
受付のお姉さんは言葉を濁す。
心配してくれていたのだろう。
「いえ、特に怪我もなく、ゆっくりしてましたよ。」
「そうだったんですね……よかった……。」
受付のお姉さんは安心したような顔で……満足しているようにも見えた。
「えっと……。」
何か用があったのではないかを聞こうと、俺は声を出す。
「――あ、あ、えっと……そうでした!何かご依頼をお探しですか?」
お姉さんは頭を切り替えたのか、こちらから聞く前に質問してくる。
「ええ、まぁ。」
「何か目ぼしいものは見つかりましたか?」
「いえ、それがまだ……。」
俺は正直に答える。
「それはよかったです!もしよければなんですが……。」
「……なんでしょう?」
少し嫌な予感もしたが、言葉を濁した受付のお姉さんの言葉に耳を傾ける。
「実は……ここ最近、雪山の方で雪男が暴れているというお話がありまして……山の麓に住む人々が被害を受けているようなんです……。」
受付のお姉さんは、俺の様子を探り探り少しずつ話をしていく。
「雪山の……雪男……ですか……?」
「はい。それでそのぉ……も、もしよろしければ、その調査に行っていただけないかと……。」
「……調査、ですか……?」
「はい……その雪男というのもどこまで本当か分からず、被害というのもただの魔物の可能性もあるのですが、もしよければ……その、報酬はギルドから出しますので、お願いできないかと……。」
なぜこんなにも遠慮がちに言うのだろうか……?
少し不思議にも思ったが、報酬も出してくれると言うし、特に断る理由もなかった。
「――別にいいですよ?調査でいいんですか?」
俺は気軽に答える。
「――本当ですか!?お願いします!!えっと……調査で。もしその雪男に遭遇するようなことがあれば、倒しちゃってもらって構いません!もちろんその分報酬も出ます!あと、少し遠いのと、とても寒いと思いますので、その辺も対策して行って下さいね!自然災害の可能性などもありますので、その辺も気を付けて下さい!それでは、よろしくお願いしますね!!」
いくつか厄介なことを言われた気もするが、早口に捲し立てるように言われてしまったため、いまいち理解が追い付かなかった。
まぁ、遠慮がちに言っていたのはおそらくそれが原因なのだろう。
さて、そうとなれば少し遠いとも聞こえた気がするし、すぐに出発しよう。
善は急げとも言う。
そうなると問題は……これだ。
「……えっと……ユン?いつまでそうしてるんだ……?」
「ずっと……ずっとしてます……。」
「……いや、ずっとは無理だろ。」
「ずっとです……。私も連れて行ってください。」
確かに、ずっとならばそれはそれで嬉しい。
ユンは美少女だし、なんとも扇情的な身体をしている……。
実際、触り心地も最高だ。
男としてこんなに嬉しいことはない。
依頼さえなければ、ずっと一緒にいてもいいくらいではあるのだが……。
「……きっと危ないこともある。俺は、ユンには怪我をして欲しくない。だから、一緒に行くのは……その、ごめん……。」
実際にそう思っている。
嘘はない。
「――いやです。一緒に行きます。だって、また忘れちゃうもん。」
「――わ、忘れないって!今度は……忘れない。」
「……嘘です。また忘れちゃいます。それにさっき何でもするって言ったもん……」
……確かに言った。
だが、これに関してだけは、なんでもってわけにはいかない。
……まいったな……。
「――そうだ。今度は絶対に連れて行く。次に出掛ける時には絶対に連れて行くから……今回だけは、待っててくれないか?」
そう、今回だけは特別に嫌な予感がする。
だから、連れて行くわけにはいかない。
それに、次に受ける依頼は簡単なものにするか、あるいは遊びに行く目的でもいい。
そういったものに連れて行けばいいのだ。
「……むぅ……。ぜ、絶対ですか……?」
「絶対だ。」
「――本当の本当にですか?」
「――本当の本当にだ。」
「……本当に絶対ですか?嘘じゃない?」
「……本当の本当に絶対だ。嘘じゃない。」
「……むぅぅぅ…………。もう、分かりました……。今回だけは行きません。でも、次は絶対ですからね……?」
「……分かった。約束する。」
「――約束ですからね?……じゃあ……目を閉じてください。」
「……え?なんで?目……?」
「――いいから。閉じてください。」
俺は素直に従うことにする。
こちらの頼みも聞いてもらったのだ。
ユンの頼みも聞いてもいいだろう。
「ん……。」
キスだ。
口付けをされた。
しかも、軽いものではない……。
……長い……長い……とにかく、長い。
「――――んん……ん…………。」
心なしか、身体に力が漲ってくる……。
幸せな……不思議な感覚だった……。
「――ぷはっ!や、約束なんですからね……。」
ユンはトロンとした目で、脱力したような様子でそう言い捨てて去って行ってしまう。
それに反し、俺の身体はいつも以上に元気になったように感じた。
まるで、ユンが力を分けてくれたようだ。
ユンは人間というわけではないし、そうしたことも可能なのかもしれない。
俺はすぐに家に帰り、依頼のために出発の準備を始める。
といっても、ここ数日ゆっくり過ごせていたため装備も十分すぎる以上に備えがあるし、特に用意するものもなかった。
念のため、すぐに食べられるような食材も転送用の倉庫に入れておく。
ミオとベルもいつの間にか家に帰ってきており、依頼の件を話した。
慌ただしくはあったが、まだ一日の半分も経過していない。
このまま準備を整えて出掛けても、おそらく翌日中には目的を達成できるだろう。
出掛ける前に、簡単に食事を取ることにする。
四人でパンやら野菜のスープやらを食べ、元気いっぱいの状態で準備を完了する。
「――それじゃあミル、すまないけど、また留守の間はよろしく頼む。」
「はい、お任せください。」
「じゃあ、ミオ、ベル、出発しよう。」
「はい。わかりました。」
「頑張りましょう!」
ミオとベル、そしてミルの返事をそれぞれ聞いて出発する。
目的の雪山は、この間行ったインプの山や湖とは方向が違う。
主に草原地帯を超えていく。
今回は寒い場所に行くため、モナやケンタウロスたちには頼まず、自分たちの足で向かう。
一日中歩けば、日が暮れるギリギリには比較的雪山に近い村に到着する。
そこで一泊し、翌日には雪山へ向かい、目的を達成する予定だ。
道中は魔物にもほとんど遭遇することなく、さらにはそんなに強い魔物もおらず、思っていたよりも余裕をもって村へ向かうことができた。
俺も、ミオやベルも強くなったこともあるのかもしれない。
経験を積んだことによって立ち回りがうまくなったのだろう。
村へ到着し、宿を提供してくれる場所を見つける。
村には霧がかかっていた。
この霧のおかげで、魔物にも襲われ難いのだろう。
「――二部屋で一泊、お願いできますか?」
宿屋の店主と話す。
「二部屋ですか……。すみませんが、うちは一部屋しか提供できないんですよ……。」
「そうですか……。近くに他に宿屋は?」
「この村は、うちぐらいしか宿を提供できるところはありませんよ?」
「……じゃあ、その一部屋をお願いします。」
止むを得ない。
ミオとベルに泊まってもらって、俺はどこか適当なところで眠ればいい。
どうせ一日だけだ。
最近は、ミルのおかげで甘えた生活をしていたし、たまにはこういうのもいいだろう。
そんなことを考えながら、借りた部屋へ向かう。
「――それじゃあ、ミオ、ベル、俺はどこか適当なところを探すから、二人でここを使ってくれ。」
「――え?あ、あの……。」
ベルが狼狽える。
「……アイラさん?三人で一緒に使えばいいのでは?」
さも当然であるかのように、ミオが問い掛ける。
「――え?でも……嫌じゃないのか……?」
ミオとベルの二人は、首を傾げて不思議そうにしている。
「……えっと……なんでですか……?」
「なんでって……最近、二人とも俺に冷たかったじゃないか。」
「はい。アイラさんすぐ浮気しますし、ミルさんとイチャイチャしていましたから……。」
「じゃあ……なんで……?」
「でも、だからってアイラさんを一人にしたりはしませんよ?」
なるほど。
なにもおかしなことは言っていない……。
「それにこの部屋、広くてベッドも三つありますし、三人でも平気だと思いますよ?」
なるほど、確かにその通りだ。
俺は考える……。
「……そうか。じゃあ……俺も失礼するよ。」
「「はい。」」
ミオもベルも笑顔で返事をくれた。
外はすでに暗くなっており、食事はパンや果物で簡単に済ませた。
それぞれ寝る支度を整え、明かりを消す。
ベッドは思っていた以上にふかふかで気持ちよく眠れそうだ。
これなら歩き通しだった今日の疲れも翌日には綺麗さっぱり消し飛んでいることだろう。
「それじゃあ、おやすみ。」
「はい、おやすみなさい。アイラさん、ベルさん。」
「はい。おやすみなさい。明日もよろしくお願いしますね。」
眠ろうと目を閉じてみるが、すぐには寝付けなかった。
「――ミオ、ベル……まだ、起きてるか……?」
すでに眠ってしまっているかもしれないが、声を掛けてみる。
「――起きてますよ?何かありましたか?」
「――なんですか?アイラさん?」
なにと聞かれると、特に何も考えていなかったので困ってしまうが……二人と話したいという気持ちがあり、考えるよりも先に声が出てしまっていた。
「……えっと……二人は……俺と一緒にいて……嫌になったりはしないのか……?」
口に出してみてから、言うべきではないことを言ってしまったのではないかとも思った。
だが、これでも言い回しは気を付けた方だし、実際、最も聞きたいことであったのも事実だ。
「……急に……どうしたんですか……?」
ベルは突然の俺の質問に不思議そうな様子で返答する。
「……アイラさんは、私たちと一緒にいるのが嫌なんですか……?」
ミオは少し意地悪に俺の質問に質問で返してくる。
「……いや……少し、気になって……。俺は、二人と一緒にいるのは心強いし、頼りにもしてる。二人のことは、これ以上ないほどに大切にも想ってる……。だから、少し気になったんだ……。二人の気持ちはどうなんだろうって……。」
俺は二人の質問にまとめて答える形で返答する。
かなり恥ずかしいことを言った気もするが、本心なので気にしないことにする。
「私も同じですよ。アイラさんのことは頼りにしていますし、とても大切で大好きです。」
俺の言葉に対して、最初に答えたのはミオだった。
「――わ、私もアイラさんのことを大切で、大好きです!」
ミオもベルも少しだけ恥ずかしそうに、だけど嘘偽りのない意志の宿った声でそう答えてくれた。
「……そうか……。実は、最近は二人に嫌われてるんじゃないかと思ってたんだ……。」
これ以上言葉を重ねるのは、少々野暮だったかもしれない。
だが、ずっと気になっていたこともあり、つい口に出てしまっていた。
「ふふ……アイラさんってば……。浮気ばかりしているからそう思うんですよ?」
ミオは少し意地の悪い声でそう答えた。
「――そうです!浮気はよくありません!」
ベルもミオの言葉に続く。
「……えっと……すまん……。」
俺は、素直に謝らざるを得なかった。
「わかればいいんです!これからは浮気はいけませんよ?」
「ああ……すまん……。でも、それなのに二人は、俺と一緒にいてくれたんだな……。」
「はい。私はアイラさんのこと、大好きなんですよ?」
「――そ、そうです!私もアイラさんのことが大好きです。だ、だから……だ、ダメですよ……?」
「ああ……俺も、二人のことが大好きだし、大切だ。だから、二人のことは俺が絶対に守る。守り通すよ。」
「……はい。期待してますね?」
ミオは、俺の気持ちを察してか、素直な返答をくれる。
「……わ、私は……えっと……でも、私のことも頼ってください!アイラさんが大変な時は、私のことも頼って欲しいです!」
そしてベルは、俺の役に立とうと強い意志を持って返答をくれた。
「そうか……わかった。ありがとう。」
細かいことは色々とあるかもしれないが、これ以上ない程に俺はミオとベルを信じているし、ミオとベルも俺と同じ気持ちなのだろう。
これなら、今回の依頼に関しても、何事もなく終えられるだろう。
そしてこれからも、ミオとベルが一緒なら、どんな苦難でも乗り越えて行けると、そう確信を持てた。
そんなことを考えながら、三人共がいつの間にか心地の良い眠りに就いていた。




