壊滅した町へ
―――外から朝日が差し込む……。
身体が重い……。
腕を上げるのもやっとだ……。
俺は自分の寝床で、タオルを巻かれ、布団を掛けられて眠っていた。
そんな状態の俺に倒れ掛かって眠っているミオとベルの様子をみるに、二人でここまで運んできてくれたようだ。
心配で俺の様子を見ている内に、そのまま二人とも眠ってしまったのだろう。
これは、仮になにかされていても文句はいえないな……。
「ありがとう……。」
俺は、呟いた。
そう、俺は昨日、のぼせてそのままぶっ倒れてしまったのだ。
なんとも情けない……。
「さて……。」
そんな俺の身を案じてくれた二人に布団を掛け、俺は自分の支度を済ませ、朝食の準備を始める。
四角く焼いてあるパンをいくつかに切り分け、卵を崩しながら柔らかく焼き上げる。
薄くスライスし、軽く焦げ目を付けたピーグルの肉とチーズ、葉物の野菜を挟み、パンを焼く。
そう、サンドウィッチだ。
ホットサンドなんて呼ぶやつもいるかもしれない。
少し多めに作り、二人がいつ起きてきても食べられるように置いておく。
ついでに、洗濯もすませる。
――これは……。
二人の可愛らしい下着が、男心をくすぐる。
大小ともに白色だ。
ちょっと、鼻を近づけてみる――。
「うん、いい匂いだ。」
――いや、違うぞ。
これは洗い立てだからいい匂いなだけだ。
――俺は一体……誰に言い訳をしたのだろう……。
このまま被ってみてもいいが……万が一にも見つかるようなことがあれば、せっかく洗った綺麗な白い下着が赤くなってしまうため、それは我慢した。
――我慢した!
それにしても……ミオのは大きいな……これであの柔らかいものを覆い隠しているとは……。
見惚れてしまう……。
これも一応……匂いは嗅いでおこう。
「うん、いい匂いだ。」
いや、もちろん洗い立てのいい匂いだ。
それにしても……おかしい……。
ベルの方は、パンツしか見当たらない……。
おかしい……おかしい…………。
「――ま、いっか。」
深く考えないことにした。
洗濯も終え、風呂も掃除しておいた。
そうこうしている内に、日も空のてっぺんより少し低い位置へと移動していた。
ほぼ半日が過ぎたようだ。
起きるのも早かったはずなんだがな……。
まぁ、その分倒れ……いや、眠るのも早かったってことだ。
いつの間にやらミオもベルも起きていて、俺の作ったサンドウィッチを美味しそうに平らげていた。
作った甲斐があったというもんだ。
二人とも出掛ける支度も済んでいたようだったため、一緒にギルドへ向かう。
今日は明確な用事がある。
ギルドに到着し、受付のお姉さんの所へ行く。
サキュバスのユンの話に出てきた、一夜にて壊滅させられた町の話を聞くためだ。
「――お姉さーん、サキュバスの子のいっていた町の情報って……なにか分かりましたか?」
「――あ、アイラさん!こんにちは!いいところに!お待ちしてました!ちょうど情報が入ってきたところですよ!」
受付のお姉さんは待っていたという様子を隠すこともなく、満面の笑顔で俺を歓迎してくれる。
そのおかげで、うしろに立っていたミオとベルからはわずかに重たい威圧感を感じさせられた……。
「……えーと……詳しく聴いても……?」
高くなりかけたテンションを抑え、気持ちを落ち着かせて聞く。
「――はい。その町なんですが……この町からは二日程度の距離にあり、荒野と山に囲まれた町とのことでした。また、町を襲ったのは大きな一つ目で一本足の化物だそうです。……私の方で分かったのは、これくらいになります。」
なるほど、表面的な情報ばかりだが……すでに壊滅した町だ。
無理もないだろう。
少し情報が心許ないが、その町への大体の距離と場所、敵は人間や災害ではなく、魔物やモンスターの類と分かっただけでも有用といえる。
「ありがとうございます。最低限の情報は得られましたので、このまま向かおうと思います。」
「はい、どういたしまして。これから向かうのですか?どうか、お怪我などないようにお気を付けて行ってきてくださいね?」
本気で心配してくれているようだ。
惚れてしまうではないか。
用は済んだため、ギルドをあとにする。
ミオとベルには、このまますぐに受付のお姉さんに聞いた町へ向かっていいかを確認すると、肯定の返事を得られた。
あとは……。
「――さて、足が必要だな……。」
お姉さんは二日の距離といっていたが……徒歩で向かった場合にギリギリ二日で着く距離といったところだ。
なにか素早い乗り物でもあれば、もう少し余裕をもって体力も温存しながら向かうことができる。
当然、謎の化物に襲われた町の近くだ。
そもそも近くの町も部外者を受け入れられるほどに機能していない場合もある。
その場合は、野営となるだろう。
徒歩で向かうのは避けたいところだ……。
「…………よし、ケンタウロスに頼ろう!」
ケンタウロスとは、半人半獣……上半身は人間の姿で、下半身は馬の魔物だ。
魔物といっても、サキュバスと同様に人間に好意的なものが存在する。
また、サキュバスのように商売を行っているものもいる。
その内容というのが……。
その足を活かした運送である。
荷物を運んだり、人間を運んだり、それによって収入を得て生活しているケンタウロスだ。
今回は、そのケンタウロスに例の町まで運んでもらうよう頼みに行く――。
場所は、サキュバスの店のように奥まった場所にあるということもなく、町の出入り口付近に存在する。
運送をしているのだ。
その方が出入りにも都合がいいのだろう。
外観の造りは木製で、小屋のようにも見えるが、内装に関してはそこで仕事をするケンタウロスたちがゆっくりくつろげる仕様になっている。
運送の仕事に全力を尽くせるよう、普段は安らげる環境に身を置いているのだろう。
またこの町には、ミノタウロスたちの経営する店もある。
なにを提供しているかというと……。
そう、牛乳だ。
こっちの世界の牛乳は、チーズ、バター、さらには飲むためのもの、俺たちが料理に使っているものも含めて、全て乳牛系のミノタウロスの娘たちの乳である。
これもまた、こっちの世界の生殖本能の旺盛さがなせるわざなのだろう。
子を持つミノタウロスの乳からは、牛乳が搾れる。
乳房の数は二つだが、その乳房はとても大きく、その大きさに比例するように大量の牛乳が絞り出せる。
その特性からか、こっちの世界のミノタウロスたちはオスの数の方が少なく、そもそもがメスのミノタウロスの方が産まれる可能性が高いらしい。
五人産まれれば四人は女の子といった割合で産まれる。
また、性格もおっとりとしていて、受け身のメスの方が多いらしい。
メスが子供を産み、そのメスがまた子供を産むため生産量には困らない。
そんなわけで、いろいろな種族や魔物がいることにより、様々な商売が成立している。
それに、食用の肉に関しては、ピーグルさえいれば困ることはないしな。
木造の小屋……いや、店の中へ入り、受付のケンタウロスの所へ向かう。
「――すみません。ここから二日程度の距離で、三人ほどお願いしたいのですが……運んでもらえますか?」
「――はい!もちろんです!三人ですね?かしこまりました!……ですが……。」
受付のケンタウロスは快く答える。
だが、元気よく返事をしたと思った直後、顔を顰めて言葉を濁す。
「……現在、力があり、スピードの速いオスのケンタウロスたちは全て出払ってしまっており……全てメスのケンタウロスになってしまうのですが……構わないでしょうか?――あ!もちろん、その分お値段は抑えさせていただきますので……!」
俺としては、運んでもらえさえすれば構わない。
それに、少しでも早く今回の件のために出発したいとも思っている。
無理にオスのケンタウロスを待つ必要もないだろう。
さらに、価格まで抑えてくれるというのだ。
むしろ幸運というべきかもしれない。
「……構いません。それでお願いします。」
「――はい!かしこまりました!ありがとうございまーす!」
受付のケンタウロスは嬉しそうな表情をし、元気に返事をしてくれる。
一度、家に戻って支度をしたかったため、すぐに出られるよう三人分のケンタウロスの準備をお願いし、帰宅することにした。
そうそうに家に戻り、野営の可能性も考えつつ、着替えや装備、非常食の準備もすませる。
今回はなにがあるか分からない。
念には念を入れ、多めの食料や装備を、転送できるよう倉庫に備えておく。
一通りの支度が完了する。
ミオとベルも準備できたようだ。
外はまだ明るいが、時間は経ってしまっている。
すぐにでも向かうとしよう――。
「――あ、アイラさーん!こんにちは!えっと……お仕事ですか?」
家を出て少し歩くと、サキュバスのユンが声を掛けてきた。
「……あ、ああ……。」
答えてしまっていいか、伝えるべきか迷う。
ユンにとっては、つらい記憶のある町だ。
……だが――。
「ああ、ユンが話してくれた壊滅した町に行ってくる。俺が必ずなんとかしてくるから、安心して待っててくれ。」
ユンには、正直に伝えることにした。
俺がこの件を解決して、ユンにはつらいことはさっさと過去のものにし、これからは笑って生きていって欲しいからだ。
「……そう……ですか……。気を付けて……必ず帰ってきてくださいね……!」
俺の言葉を聞いたユンの表情は、暗くなった。
複雑な心境だったようで、暗い顔をしていたが……俺のことを精一杯励まし、応援してくれた。
これは、必ず解決するしかない――。
壊滅した町のもとあった姿や、亡くなった人たちが戻ってくるわけではないが、ユンがこれからたくさん笑って生きて行けるようにするためにも――。
より強く、決意を固める――。
ケンタウロスの運送屋に着く。
さっそく、壊滅した町まで運んでもらうようにお願いする。
準備をしておいてくれた三人分のケンタウロスたちは……。
――大きい……いろいろと、大きい……。
いや、大きいといっても、身長……縦の高さは、一般的な成人女性よりも少し高い程度……男性程度はあるかもしれない。
まぁ、大きいといえるだろう。
あと身体は……馬なので当然、全体的に大きい。
そして、身体はもちろんなのだが……なんといっても――。
――おっぱいが……!大きい――!!
ミオも大きい方だとは思っていたのだが……ミオよりも一回りか二回りは大きいだろう。
なるほど確かに。
これはオスのケンタウロスよりもスピードが落ちるだろう。
仕方あるまい……。
「ではさっそく、失礼して……。」
そんなおっぱいに見惚れてしまったが、今は少しでも早く、壊滅した町へ向かいたい。
さっそく、跨らせてもらう――。
「――あ!おにーさんが私に乗ってくれるの?よろしくね!」
ケンタウロスは、気さくにそんなことをいってくる。
……それにしても……。
「……どこに……掴まればいいんだ?」
「どこでもいいよ?振り落とされないようにしっかり掴まっててくれればね。でもそうだね……お腹に腕を回して、しっかり掴まってくれるのが安全かな?お勧めするよ。」
そういってくれたため、いわれた通りにお腹に腕を回した。
「――あん……。」
ケンタウロスの女の子は変な声を出す。
「――え?あ、ごめん……。」
戸惑ってしまう。
「――ふふ、冗談だよー!ごめんね?しっかり掴まっててね?」
「――わ、分かった……。」
少し照れくさくなるが、振り落とされてしまっては困る。
いわれたように、しっかりと掴まる。
ミオとベルもそれぞれケンタウロスに乗らせてもらったようで、準備ができていた。
「――準備はできた?」
俺が跨っていたケンタウロスの娘が確認してくる。
「――あ、ああ……よろしく頼む!」
「――オーケー!じゃ、さっそく――――!!」
そんな言葉と同時に、ミオとベルの乗ったケンタウロスの娘たちにも目配せし、颯爽と駆け出す――。
――――は、速い!これは速い!オスのケンタウロスは、これよりも速いのか――!
これだけ速いのなら、あっという間に着いてしまうかもしれない。
ケンタウロスの軽快な足音と向かい風が心地いい――。
――これは――!
「――風だ!俺は今!風になれる――!!」
「――ふふふ、おにーさんなにいってるの?おもしろいねー!」
おっと、あまりにも速く心地いいもので、声に出てしまっていたようだ……。
ケンタウロスの女の子に、笑われる。
「……あ、いや……。」
照れ臭くなり、言葉に詰まる。
それに、走る度に揺さぶられ上下したおっぱいに俺の腕が触れることも、その照れくささを押し上げてくる。
そんなことを考えていたせいか、ケンタウロスの腹に回した腕の力が抜けてしまう。
――その時。
「――あ、危ないよ!おにーさん!」
力が抜けたことに警告をしてくれたのか。
または障害物でもあったのか。
あるいは、そのどちらもか。
一際、大きく揺れる。
「――あ……おっと!」
一瞬腕が放れ、慌てて掴み直す。
――あ、危なかった……。
この速度で落とされていれば大怪我……いや、運が悪ければ死んでいたかもしれない……。
安心したのも束の間――。
「――――あ……あの……おにーさん……?」
ケンタウロスの娘が、口を開く。
今までと打って変わって……威勢がない。
……どうしたのだろう……?
「……えっと……おにーさん?聞いてる?……し、しっかり掴まってとはいったけど……そんなところをそうしっかり掴まれると……。」
……ん?なんのことだろう?
そして、気が付く――。
確かに……腕が高級な柔らかいクッションにでも包まれているように心地いい。
――ふっ……なるほど、これは……。
「――おっぱいだ!!」
「――そうだよ!いわないでよ!恥ずかしい――!!」
恥ずかしさからなのか、声を張って勢いよくいわれる。
「――ご、ごめん……でもこれ、どうしたら……?」
「……す、少しずつでいいから、お腹の方に腕を回してよぉ……。」
「――わ、分かった。やってみる……。」
いわれたように、少しずつ下方向に力を入れ、腕をずらしていく。
「――あんっ!」
ケンタウロスちゃんは嬌声を上げる。
「――ちょ、ちょっとぉ……おにーさん……ダメだよぉ……。」
なにがダメなのだろう?
心なしか、少し速度が落ちているような気もする……。
俺は、なんとか少しでも腕を動かすように力を入れる。
「――ん……んん……。」
ケンタウロスちゃんの我慢するような声が聞こえてくる。
「――お、おにーさん!一度腕を放して掴み直してよぉ……。」
「――わ、分かった!」
速さに慣れてきたのか、少し速度が落ちたせいか、今ならできるだろう。
タイミングを見計らって、腕を……放す!
「――あん!」
腕を放す際、おっぱいに腕が擦れる。
それと同時に、またもや障害物でもあったのか、ケンタウロスちゃんが大きく揺れる。
「――おお!っと!」
俺は慌てて、放してしまった手でケンタウロスちゃんを掴み直す。
一瞬、妙な空気になった。
「……お、おにぃさぁん……さ、さすがにそこはダメだよぉ……。」
少し涙声で、耳を赤くしながらケンタウロスちゃんが訴え掛けてくる。
どうやら俺の手は、ケンタウロスちゃんのおっぱいの先っぽを掴んでしまっていたらしい。
それでも走り続けるのはさすがといったところだろう。
「――あ、ああん――!んんっ……。はぁ……はぁ……。」
ケンタウロスちゃんは、息が上がっていた。
速度は落ちているが、これだけ早く走り続けながら会話までしているのだ。
おかしくない。
「――お、おにぃさぁん……は、放してよぉ……だ、ダメだってばぁ。ん、んん……。」
ケンタウロスちゃんの走る揺れで俺の手も上下し、擦れ、落とされまいと掴む手にもさらに力が入る。
「――お、おにぃさぁん……!聞いてる?だ……ダメだってばぁ……。」
ケンタウロスちゃんの声はどんどん甘いものへと変わっていく。
――すると、すぐ後方から凄まじい殺気を感じる。
振り返るよりも早く、水の球が勢いよく飛んでくる――。
「――あ、痛ったー!」
思わず声が出る。
「――――ああん!!」
俺が痛みで動いたのに合わせて、ケンタウロスちゃんも声を上げる。
指先に力が入ったせいかもしれない。
後方を追ってきている、球の飛んできた方にいるミオの表情は見えない。
――二射目がくる!
ケンタウロスちゃんに当たらないよう配慮しているのだろう。
速度も出ているため、二射目は外れた。
――と、思いきや、反対側の後方から風の球が飛んでくる。
「――おうちっ!」
またもや俺の背中に軽く痛みが走る。
「――あっ、いあぁん――!」
ケンタウロスちゃんは嬌声を上げる。
「――ご、ごめん!」
声を上げたケンタウロスちゃんに謝る。
「…………も、もう……だ、ダメだって……い、いってるのにぃ……。」
ケンタウロスちゃんの速度はさらに落ちる……。
風の球が飛んできた方を見ると、ベルが頬を膨らませながらそっぽを向いている。
「……な、なんなんだ一体……。」
呟く。
――パシャァァァン!
「――あ、痛ったー!」
今度は水の球が後頭部にぶつかる。
「――――あううううんっっっ――――――!!」
ケンタウロスちゃんは限界を迎えた。
徐々に速度を落とし、遂には止まってしまう――――。
「――はぁ……はぁ……はぁ……。」
俺の乗っていたケンタウロスちゃんは息を切らせていた。
うしろを走ってきたケンタウロスの娘たちも追い付き、止まる。
「「――アイラさん!!」」
停止してすぐに、ミオとベルの怒った声が飛んでくる。
このあと、めちゃくちゃ怒られた――――。
そろそろ、日も沈む頃だ。
俺の乗っていたケンタウロスちゃんの様子を見るに、もう走れないと判断し、そのまま近くで野営をすることになった。
少し離れたところには見覚えのない湖があり、周りには木々が立ち並んでいる。
もといた町からは大分離れたようで、周囲の光景が見慣れたものとはまるで違った。
湖の近くまで行き、火でも起こせばある程度安全に食事も取れるだろう。
湖からは、魚が捕れる。
もともと準備していた食料も合わせ、頑張ってくれたケンタウロスちゃんたちにも食事を振る舞うことにした。
肉は食べないらしい。
主に魚とその辺で採れた食べられる野草、野菜。
転送用の倉庫に力の出そうな適当な野菜も投げ入れておいたのを思い出す。
これも一緒に振る舞おう。
少し臭いがきついが、薬にも使われている野菜や、オレンジ色でケンタウロスが好むとされている野菜……。
そう、ニンジンだ。
少し細くてひょろっとしているような気もするが、食べられないことはないだろう。
他にも、ニラやネギのようなものもあったため、一緒に振るまう。
なににせよ、栄養はあるだろう。
俺とベルの風の魔法で食べ易い大きさに切り刻む。
ケンタウロスちゃんたちは生で食べるのも十分好きらしいが……俺たち三人は、焼いたり、倉庫から取り出した道具で鍋料理にしたりした。
道具さえあれば、火は簡単な魔法で十分だ。
俺たち三人とケンタウロスちゃんたち、各々食べたいものを鍋にぶち込み、美味しく食べた。
個人的には、湖で捕れた魚が一番美味かった。
やはり、新鮮な食材というのは美味しい。
まさか、外でこんなに美味いものが食べられるとは……。
俺たちはきっと、今後も食べるということに関しては、困ることはまずないだろう。
みんなでわいわいと楽しく食事を終え、満腹感の余韻に浸りながらのんびりと過ごした。
食べたあとは当然、水浴びくらいはしたいものだ。
幸いにもここは、湖の近くだ。
今日は気温も低くない。
最近は、暖かい日が続いている。
湖の水で、水浴びぐらいしても問題はないだろう。
やろうと思えば魔法で湯も作れるが、温存できるものはする。
そんなことをみんなに提案すると、喜んで同意してくれた。
俺は先に顔だけは洗わせてもらうことができ、ほぼ強制的に見張りに回ることになった。
……ん?あれ?
ま、まぁ一日くらい身体を洗わなくてもいいし、顔はさっぱりしてるしな。
それに、確かにみんなすっぽんぽんなら見張りぐらい必要だろう。
だとしても俺が水浴びをしちゃいけない理由にはなるのだろうか……。
ま、まぁ、いいや。
少し離れたところで見張りをする。
とはいっても、見張りというほどそんなに危険な場所でもなさそうだし、それなりに気を抜いてゆっくりさせてもらう。
――すると、湖の方からぼんやりと声が聞こえてくる……。
「――ミオさん、おっきいね!着てる服のせいでそんなに大きいと思わなかったよ!スタイルもいいし!いいなぁ……。」
ケンタウロスちゃんたちの声だ。
「――そうそう!重くもなかったし、柔らかいし、暖かいし……私でも興奮しちゃうくらいよ!」
ミオを乗せていたケンタウロスちゃんも同意する。
「――ちょ、ちょっと、やめてください……。は、恥ずかしいです……そ、それよりもケンタウロスさんたちの方がすごいじゃないですか。私なんかよりも、ずっと大きくてすごいです!」
「そうかなぁ……?私たちは正直、あんまり大きいと邪魔だから、もう少しくらい小さくてもいいんだけどね……でも、褒められるのは悪い気はしないかな?」
ちょっと照れくさそうにしながらも、自慢げな顔をする。
「――みなさんズルいです!!大きいのが嫌なんて……わ、私なんてこんなんですよ……?もう少し大きければ、アイラさんにももっと好きになってもらえるのに……。」
ベルもすかさず口を挟む。
「――そ、そんなことないって!おにーさんはきっと、大きくなくてもベルちゃんのこと好きだよ?」
その通りだ。
大きくても小さくても、俺はベルのことが好きだぞ?
気にすることはない。
まぁ確かに、大きいベルというのもちょっと見てみたい気はするが……。
それはそれだ。
「……そ、そう……でしょうか……?」
ベルは励ましてくれたケンタウロスちゃんに、自信なさげに切り返す。
「――そうだよ!」
ケンタウロスちゃんが元気に肯定する。
それとほぼ同時だった。
「――キャッ!」
ベルの短い悲鳴が聞こえる。
――敵か!?
慌てて顔を出し……そうになったが、数秒遅れたおかげで助かった。
「――ちょ!や、やめてください!そ、そんなところ……やん……。」
「ほれほれー。ここがいいのかい?可愛いなー。こんなに可愛いのに柔らかいなんて、きっとおにーさんも堪らないね!」
ベルの胸を楽しそうに揉みしだいているようだ。
「……ん……もう、ダメですってばぁ……あっ……いや……。」
ベルから喘ぐような悲鳴が聞こえる。
「――ちょっと、それくらいにしなさい。」
他のケンタウロスちゃんが制止しようと声を掛ける。
「――そうです!ベルさんだけなんて……えい!」
ミオはそんなことをいいながら、ケンタウロスちゃんの大きなおっぱいに手を埋める。
「――わ、わぁ……す、すごいです……。こんなに大きいのにこんなに柔らかいんですね……。柔らかいのに……しっかりとした触り心地が……。」
「――あ、ちょ、ちょっと、なにしてんの?だ、ダメだって!」
ケンタウロスちゃんが軽く抵抗する。
「――あ、ミオさんばっかりずるいです!わたしも!えーい!」
ベルは触られる側から抜け出し、揉む側に回る。
「――ちょ、ちょっとぉ……ダメっていってるでしょ!」
「……じゃあ、私はミオちゃんのおっぱいにするー!」
他のケンタウロスちゃんたちも参戦することになる。
「――え?あ、や、やめっ……!あっ……あんっ……。」
「――ベルちゃんやめてよー!……く、くすぐったいよぉ……。」
「――ダメですぅ!私も大きいおっぱいいっぱい触って大きくなるんです!」
ベルは意味の分からないことをいい始めている。
「――ちょ、ちょっとぉ……だ、ダメだってぇ……。」
「――ひゃ!ちょっと、やめて……。」
「――ああん!ダメですってばぁ!」
「……はぁ……はぁ……もう……ダメ……。」
湖の方からはそんな声が聞こえていた。
まったくうらやま……けしからん!
俺も混ざりた……いや、しっかり気を引き締めて見張りに専念せねば!
そんな葛藤をしている内に、いつの間にやら女子たちの楽しそうな声は聞こえなくなっており、うとうととしてしまっていた。
もう水浴びは終わったんだろうか?
あれから、結構経った気もする……。
ぼうっとしていると、木の向こうに影が見える。
……敵か?
警戒心を強める。
「……お、おにぃさぁん?……はぁ……はぁ……ちょっと……いい……?」
聞こえてきたのは、俺を乗せてきてくれたケンタウロスちゃんの声だった。
息が荒い。
湖ではしゃぎ過ぎたんだろうか?
あるいは、軽く運動でもしてきたのかもしれない。
「……どうかしたのか?」
「……えっと……その……ほら……ね?なんていうか……。」
ケンタウロスちゃんは近付きつつ答える。
うっすらと見えていた影は、昼間行動をともにしたケンタウロスちゃんだとしっかり確認できる。
ただ、歯切れが悪い……。
みんなと一緒にいた時のような活発さがなく、しおらしい……。
「……なんだ?どうしたんだ……?」
「……んー……分かんないんだけど、ご飯食べたあと辺りからなんか身体が熱くなってきてて……。」
結構いろいろなものを食べた気もするし、なにか体温を上げるような食べ物でも入っていたのだろうか?
あるいは、湖ではしゃぎすぎて風邪でも引いたのかもしれない。
「……大丈夫か?」
「ん、んんー……分かんない。でも、昼間ここにくる途中も、ほら……ね……?いろいろあったでしょ?だから、その……ずっと、変だったの……。」
確かに、いろいろあった。
途中死ぬかもしれないとも思ったしな。
……とか考えつつも、実は俺も、そこまで鈍くはない。
今目の前にいるケンタウロスちゃんは、明らかに発情したような顔をしていて、昼間のこととは、ケンタウロスちゃんの身体を図らずとも弄り回してしまったことだろう。
「……そうか。きっと、疲れてるんじゃないか?他のみんなももう寝てるんだろ?明日に備えて……すぐに寝た方がいいと思うぞ?」
ケンタウロスちゃんのおっぱいは魅力的だし、その大きさに比例して俺を引き寄せる凄まじい引力も感じる。
だがさすがに、一時的に行動をともにすることになっただけのケンタウロスちゃんと、将来を誓い合ったり、子供を成したりはしないつもりである。
昼間のことを考えると、なかなかに最低な男であることも自覚してはいるが、なんでもかんでも欲望に流されるのもよくないと思うわけだ。
「……あ、うう……ねー?おにーさーん……?」
寂しそうな、泣きそうな声を出す。
「……ほら、早く寝ないと明日も大変だぞ?」
もうすでに寝ているようだが、近くにはミオとベルもいる。
そうしょっちゅう欲望に負けるわけにもいかない。
この辺は安全みたいだし、俺もこのまま早く眠りに着こうと思っていたわけだしな。
「……お、おにーさーん……せ、せめてこっち向いてよぉ?一緒に寝るくらいは……いいでしょ?」
まぁ、それくらいならいいか……。
――振り向く。
それが迂闊なことだった気付くのに、一秒も必要なかった……。
ケンタウロスちゃんは、完全に上半身を露出してしまっていた――。
―――お、おっぱいだ!!大きい!!ミオとは比べものにならないくらい大きい!!!
だが決して極端に大き過ぎず、形も綺麗で、走るのにもこれくらいの大きさならどうにかなるのだろう。
馬である下半身も合わせると、身体自体もかなり大きいわけだしな。
「……うふふ……おにーさーん?おっぱいだよぉ……?」
ニヤニヤとしながら、自信ありげな顔で俺を誘惑してくる。
どうやら俺は、まんまとケンタウロスちゃんの思惑に嵌ってしまったようだ。
――おっぱいから……目が……離せないっ!!
――す、凄まじい引力だっ!!
――くそっ!策士か!ケンタウロスちゃんめっ!!
ケンタウロスちゃんは、俺の隣まできて寝そべる。
寝そべってしまえば、上半身は人間なため、ケンタウロスの下半身にはほとんど違和感を感じない。
まさか、これもケンタウロスちゃんの計算だったのだろうか?
「――おにーさーん?ほらー?触ってもいいんだよぉ?大きいよぉ?」
くっ、この……ケンタウロスちゃんめ――!!
そんな積極的に誘惑してくるとか……ズルいだろ!!
だがしかし、別に俺はおっぱいがとてつもなく好きというわけでもない。
女の子のおっぱいは魅力的だが、別にそこだけが魅力なのではない。
綺麗な髪も、柔らかなおっぱいも、張りのある尻も、全身のバランス、その部分部分の魅力がそれぞれ好きなだけだ。
断じておっぱいだけが好きというわけではない!!
「……よいしょっと。」
顔に、ケンタウロスちゃんのおっぱいが押し付けられる。
いや、おっぱいに顔が押し付けられているのだろうか?
「――ちょ!やめ!」
拒絶する。
「――――ああんっ!」
なんて甘い声を出すのだろう。
俺が拒絶するために伸ばした手が、どうやら胸に触れたらしく、扇情的な声を出す。
その声を聞くなり、一瞬手が止まってしまった。
ケンタウロスちゃんは、それを見逃さなかった。
「――えへ、ほらぁ、もっと触ってもいいんだよぉ?」
ケンタウロスちゃんはニヤリと俺のことを嘲るような表情をし、俺の手を掴んで自分の胸へと押し付けてくる。
「――――あ、ああんっ!んんっ……!」
そんな声を聞いたせいか、はたまた聞く前からか……俺の手はすでに、自分からケンタウロスちゃんの乳房を弄り回していた。
「……あっ、ああん!も、もっとぉ!もっと触ってぇ!んんっ!き、気持ちいいよぉ――!!」
昼間は中途半端で欲求が溜まっていたのかもしれない。
それが爆発したかのように声を出す。
「……はぁ……はぁ……いいよぉ……おにーさんのこと、好きになっちゃうよぉ……!!」
そんなことをいわれれば、俺も嬉しくなってしまう。
気付けば、取り憑かれたように夢中になってケンタウロスちゃんの柔らかい部分を弄り続けていた。
そんなことに浸っていると、すぐ近くの木の間から、二つの人影が姿を現し近寄ってくる。
俺はそんなことにも気付かず、夢中でケンタウロスちゃんの胸を揉みしだいていた。
「――ちょ……ちょっとぉ……あんたばっかりずるいじゃない……私たちにも……声掛けてよね……。」
そんな声が聞こえた。
「――あ、あん!ん……ご、ごめん……だ、だってぇ……んっ……が、我慢できなかったからぁ……。」
ケンタウロスちゃんはそんな言い訳をしていた。
「……おにーさん……?あたしたちも、混ぜてもらって……いいよね?」
「――そうよ!一人だけズルいもん!」
近寄ってきたもう二頭のケンタウロスも、そんなことをいいながら着ていたものを脱ぎ、俺を囲むように座り込む。
いや、寝そべる。
「……おにーさん……こっちもぉ……。」
俺の片腕が、別のケンタウロスちゃんへと導かれる。
「……ん……ああっ!……いいっ!んんっ!気持ちいいよぉ!」
「……あ、あたしもぉ……二人だけズルいよぉ……。」
「……あ、だめぇ……おにーさんは私のなのぉ!」
「――ああんっ!いいよぉ!んっ……もっと、もっとぉ!」
「……今度はこっちもぉ!」
いつしか六つのおっぱいに囲まれ、取り合われていた。
「……はぁ……はぁ……んんっ……いいっ!いいよぉ……!」
「――わ、わたしも……久しぶりに、気持ちよくなっちゃったぁ……。」
「……おにーさんは私のっていってるのにぃ……んっ……んぁ――――。」
どろどろに溶け合うようだった。
疲れていたこともあり……あるいは俺は窒息でもしたのか、いつの間にやら気を失うように……みんなで眠りに落ちていた――――。




