思いがけない招待状!?
少し汗ばむ午後――まりあはウメコと一緒にたらいに張った水に足先を浸けて涼んでいた。まったりしていたところ、空から一枚の葉っぱがはらはら落ちてきた。
まりあは警戒し即座に懐刀を抜いたが、ウメコから待ったがかかる。
『まりあ様、これは〝あやかし祭〟の招待状ですよお』
「あやかし祭?」
『はい! 数百年に一度開催される、まやかしのお祭りなんです~』
あやかし祭――それは気まぐれなあやかし達が人間達のお祭りを真似て開催されるものらしい。あやかし達が世話になったという人間も稀に招待されるという。
「日付は今晩、ですわね」
『わあ、そうなんですねえ』
そんな会話をしていると、奥の部屋で眠っていた装二郎がやってくる。
「まりあ~、なんか眠っていたら変な葉っぱが飛んできたんだけれど」
「装二郎様のところにも、あやかし祭の招待状が届いたのですね」
「え~~、何それ~~」
ウメコが説明すると、装二郎は眉間に皺を寄せる。
「なんか怪しくない?」
『怪しくないですよお! わたくしめも五千年ほど前に参加しまして、とっても楽しかったのを覚えています』
「へー、そうなんだ」
ウメコの五千年前は嘘だろう、とまりあは思ったものの、会話が前に進まないので黙っておいた。
「まりあ、どうする?」
「え?」
「行きたいんだったら、付き合うよ」
「よろしいのですか?」
「もちろん!」
まりあはあやかしの祭りどころか、普通の祭りでさえいったことがない。
もしも許されるのであれば、どんなものか見てみたいという好奇心があった。
「行きたいです」
「だったら行こう! じゃあ、夜までに寝貯めしないとねえ」
装二郎は再度眠るようだ。まりあも少しだけ昼寝をしよう。
そう思って横になる。ウメコが団扇で扇いでくれたので、心地よく眠ることができた。
夜――まりあと装二郎は浴衣に着替え、帯にうちわを差しあやかし祭に挑む。
行き方は葉っぱの裏にあり、夜道を歩いていたらいつのまにか導かれるという。
手には提灯を持ち、暗い道を歩いて行く。
すると、どこからともなく祭囃子の音が聞こえてきた。
「装二郎様、あちらに何かあります!」
「わあ、すごい」
瞬きをする間に、吊された提灯と屋台の並びが出てきた。
そこには浴衣を着たあやかし達が練り歩き、キャッキャと楽しそうな声も聞こえる。
「まりあ、行こう」
「はい!」
そこはあやかし達ばかりのお祭りで、わたあめや練り飴、金魚すくいに射的など、さまざまな屋台が並んでいる。
どれもあやかしが作ったまやかしなので、どれも目で見て楽しむばかりだが、祭りの雰囲気は十分なくらい堪能できた。
練り飴で狐を作ってもらい、ウメコに似たお面を付け、投げ輪でドロップス入りの缶の景品を手に入れる。
丑三つ時になると祭りは消え、何もなくなった。
「あーあ、終わっちゃった!」
「あっという間でしたわね」
ぐーっと背伸びをし、踵を返す。
「お祭りのあとって、なんでこんなに寂しいんだろう」
「楽しく賑やかな場にいたので、余計に思ってしまうのでしょうね」
手にしていた練り飴の狐やお面もなくなっていた。
「まりあ、今度は本物のお祭りに行こうよ」
「よろしいのですか?」
夜は任務がある。けれどもたまにはいいのではないか、と装二郎は言う。
「賑やかな夜には、あやかしはでないしね! お祭りの日くらい、楽しまなきゃ」
「ええ!」
まりあに楽しみができた晩の話だった。
本日、コミカライズ版『帝都あやかし屋敷の契約花嫁』第二巻が発売しました!
はま先生にまりあをかっこよく、装二郎を可憐に(?)描いていただいております。
ぜひぜひお手に取っていただけたら幸いです。




