表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帝都あやかし屋敷の契約花嫁  作者: 江本マシメサ
番外編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/43

夫婦のひととき

 今日も今日とて、まりあは装二郎をたたき起こし、散歩に連れ出す。

 こうでもしないと、彼は一日中日光を浴びずに、家の中で過ごしてしまうのだ。

 のろのろとしか動かないため、まりあは装二郎の手を握り、ずんずん進んでいく。


「装二郎様、家の空気よりも、お庭の空気のほうがおいしいでしょう?」

「いや~、正直、まりあがいたら、どこの空気もおいしいな~~って思っているよ」

「そんなわけありません!」

「いや、あるんだな~、これが~」


 脱力するような返答に、まりあはがっくりと項垂れてしまう。


「それはそうと装二郎様、もっとキビキビ歩いてくださいませ! そんなに遅かったら、日が暮れてしまいますわ」

「だったら、まりあが両手を引いて歩いてよ」


 そう言って差しだした装二郎の手の甲が、赤く腫れていることにまりあは気づいた。


「装二郎様、手の甲が腫れているようですが、どうかなさったのですか?」

「ああ、これ? 寝ているときに、何かに強くぶつけてしまったみたい」

「まあ!」


 なんて不注意な、と思ったが、寝ているときなので仕方がないのだろう。


「というか、枕元にぶつけて危ない物を置いているのですか?」

「香炉かな? 仕事道具だよ」


 普段、香炉は肌身離さず持ち歩いている物なので、仕方がないのだろう。


「ただ、布で包んでおくとか、袋に入れるとか、対策はあるでしょうに」

「面倒なんだよねえ」


 腫れた手をぷらぷら振りながら、装二郎は答える。


「大丈夫、大丈夫! そこまで痛くないから」

「それでも、冷やしたほうがよろしいかと」

「だったら、まりあがフーフーしてくれる?」


 その発言に、まりあは心底呆れてしまった。


「フーフーで治ると、本気で思っているのですか?」

「うん。骨折もまりあのフーフーで治ると思う」

「治りません!!」


 まりあは握っていたほうの手を離し、ずんずん進んでいく。


「ちょっ、まりあ、冗談だって」

「装二郎様の発言は、すべて本気に聞こえるんです!」

「ごめんごめん」


 装二郎は生まれたばかりの小ガモのように、まりあのあとを付いていく。

 追いついたかと思えば、まりあは突然しゃがみ込んだ。


「どうしたの? きつくなった? おんぶしようか?」

「違います。ノアザミを発見したんです」


 それはトゲトゲとした葉がある、紫色の花を咲かせる植物であった。

 まりあはノアザミをむんずと掴んで、そのまま根っこごと引き抜いた。


「わあ、豪快なお花摘みだねえ」

「お花摘みではございません。ノアザミの根っこには薬効がありまして、煎じると腫れに効くお薬になるんです」

「へえ、そうなんだ! よくそんなこと知っていたね」

「下町に暮らしていた時代に、勉強しましたの」


 当時、まりあは家計を助けるべく、食べられる野草を探していたのだ。

 そのさいに、ノアザミを知ったのである。


「ノアザミの若葉は天ぷら、和え物に、茎はきんぴらや味噌漬けにと、おいしくいただいておりましたの」

「えーっと、それは嘘ではなく?」

「ウメコではないのだから、嘘は言いません」

「そうだよね」


 装二郎はまりあがかつて、その辺の野草を食べていたことに関して、心から驚いているようだった。


「まりあともっと早く出会っていたら、そんな苦労なんてさせなかったのに!」

「別に、わたくしはそう思いません」

「僕に一刻でも早く、会いたくなかったの?」

「いいえ、そういう意味ではありませんわ」


 まりあは装二郎の腫れていないほうの手を握り、にっこり微笑みかける。


「過去の苦労が今、装二郎様をお助けできるかもしれないので、何事も無駄ではなかった、とわたくしは考えております」

「まりあ……ありがとう!」


 装二郎は感極まった様子でまりあを抱きしめようとしたが、待ったをかける。


「治療が先ですわ!!」

「そ、そんな!」


 そんなわけで、装二郎は屋敷に連行され、まりあから手厚い看護を受けたのだった。

 

挿絵(By みてみん)

本日、4月30日にコミカライズ版の『帝都あやかし屋敷の契約花嫁』の第1巻が発売となりました。

漫画ははま先生にご担当いただいております。

まりあの活躍が美麗に描かれております。どうぞよろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ