表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帝都あやかし屋敷の契約花嫁  作者: 江本マシメサ
番外編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/43

おねだり

 太陽の光が柔らかく差し込む午後――まりあは縁側に腰かけ、手にした鞠を庭に向かって思いっきり投げた。

 それを、狐や狸のあやかし達が追いかけていく。

 まりあが全力で投げた鞠は、三十米突メートルは飛ぶ。

 広い庭で、大捜索となるのだ。

 あやかし達が楽しげに鞠を探しに行く間、まりあはウメコが持ってきた茶と茶菓子を味わう。


『まりあ様、こちらは〝ひとひら〟という、桜の花びらを模した和菓子でございます』

「あら、すてき」


 薄紅色に染めた練り切りを、桜の花びらに見立てているようだ。

 形は花びらだが、全体はふっくらしていて可愛らしい。

 口に含むと、優しい甘さが広がった。


「おいしい」


 ウメコがいると思って呟いた一言であったが、すでにどこかへ行ってしまったようだ。

 少しだけ、話し相手になってくれてもいいのに。

 だが、この屋敷には最低限の使用人しかいない。ウメコも多忙なのだろう。

 茶を飲んでひと息ついていたら、ちりん、ちりんと鈴の音が聞こえた。

 鞠の中に入っている、鈴の音だろう。

 もう、鞠を発見したあやかしがいるようだ。

 いつもより、早い。


 鞠を銜えて草陰から飛び出してきたのは、黒く小さな子狐。

 ぽんぽんと鞠のように跳ねながらまりあのところへやってきて、最終的に膝の上に跳び乗る。

 撫でてくれとばかりに、頭を垂れていた。

 手を伸ばしかけたが、触れる前にハッとなる。

 おそるおそると問いかけた。


「……装二郎様?」

『えー、なんでバレたの?』

「いえ、黒狐のあやかしは、いなかったので」

『そうだったねえ。僕、あんまり化けが得意じゃなくって』


 子狐への変化も、難しかったらしい。

 まりあの膝の上に座ったまま、苦労を語っている。


「あの、装二郎様、そのような姿で何をなさっているのですか?」

『まりあによしよししてもらおうと思って』

「そんなの、言ってくだされば、いつでもしますのに」

『そうだったんだ! いや、なんていうか、人の姿では恥ずかしいような気がして』


 普段は飄々としている装二郎だったが、変なところで恥ずかしがり屋だった。

 まりあは思わず、空を仰ぐ。

 夫が、可愛すぎるのではないか、と。


『あのー、それでまりあ、よしよししてくれる、かな?』

「もちろんです!!」


 まりあは力強く返事し、優しく装二郎の頭を撫でる。

 首回りは揉み込むように撫で、顎の下は指先でかしかしと掻くように撫でた。

 気持ちいいのか、装二郎は目を細めている。

 最終的に、まりあは装二郎の体を抱き上げて頬ずりした。


『ウッ、まりあ。さすがにそれは、恥ずかしすぎる』

「夫婦なのですから、恥ずかしがる必要はあるのですか?」

『じゃあ、こういうの、僕がまりあにしてもいいの?』


 装二郎がまりあを抱き寄せ、頬ずりする。想像しただけで、恥ずかしい。

 まりあは、装二郎の体をそっと膝に戻した。


「装二郎様、満足なさいましたか?」

『うん。最高としか言いようがない』

「それはようございました」


 穏やかな午後、夫婦はのんびりとした時間を過ごしたのだった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ