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帝都あやかし屋敷の契約花嫁  作者: 江本マシメサ
第五章 契約花嫁は、幸せをつかみ取る!

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契約花嫁は、年始の準備を行う

 帰宅と同時に、鎌鼬達は作ってくれた注連しめ縄を玄関に飾る。


「これは、年神様を迎えるに相応しい、清められた場所だという印なんだ。大掃除が終わった家は、注連縄を飾るんだよ」


 また、今年の災いを外に追い出し、新しい年に災いが家に侵入しないようにするものでもある。

 年末年始は飾りや行動のひとつひとつに意味があるようだ。

 どれも大事で、手を抜いてはいけない。


 玄関を潜ると、あやかし達が迎えてくれた。

 心がホッと癒やされる。


 持ち帰った大、小の餅は、鏡餅と呼ばれる物を作るらしい。

 なんでも、鏡餅も年始には欠かせないものなのだとか。


「鏡餅は、家にお迎えした年神様の依り代になるものなんだ。だから、とっても大事な物なんだよ」


 鏡餅の丸い形は、人の魂を模したものらしい。それが、神事に使う鏡に似ていたことから、鏡餅と呼ばれるようになった。諸説はあるようだが、山上家ではそのように伝わっているという。


 神様の依り代なので、もちろん、三方さんぽうと呼ばれるひのきの白木で作った台座に乗せるのだ。


 三方の上に、厚紙の端を赤く塗った四手しでと呼ばれる紙を重ねる。

 これは、四方に繁栄するように、という願いが込められているのだ。

 その上に、裏白うらじろと呼ばれる、名前の通り裏が白くなっている葉と、ゆずり葉を置くのだ。

 裏白は生命力の象徴。ゆずり葉は、世代がゆずられ、永久に子孫が生まれますようにという願いが込められている。

 それらの葉の上に、餅を重ねていくのだ。このふたつを重ねることも、福が重なるという意味がある。

 餅の頂点には、紅白の御幣ごへいだいだいを置く。

 橙は、代々家が栄えますように、という願いが込められているのだ。


「と、こんな感じで完成」


 まりあは思わず拍手をしてしまった。


「大変でしょう?」

「ええ。年始の準備は、ひとつの大がかりなまじないなのですね」

「そうそう。山上家は、一族の存続を神頼みで乗り切ろう、みたいに考えているところがあって、毎年本気を出して準備しているんだよね。そのとどめが御節供おせちくなんだけれど」

「おせちく、ですか?」

「そう。年始に食べる、特別な料理なんだ」


 年神様をもてなす、縁起物の料理らしい。慶事が重なるように重箱に詰め、数日かけて食べるという。


「たぶん、明日辺りから、ウメコが作り始めると思うよ」

「そうなのですね」


 明日から正月明けまで、仕事には行かないという。

 毎年、この時期になると化け物は不思議と出なくなるらしい。


「帝都に神様がたくさん招かれるからね。悪事はしないようにしているんだと思うよ」

「そうなのですね。ちなみに、装二郎様は年末年始をどう過ごされるのですか?」

「今日の午後辺りから山上家の本家に行って、日付が変わるまで餅つき、かな」

「まあ、そうでしたの!?」

「毎年、腕が上がらなくなるまで、餅を搗くんだよねえ」


 餅つきをするのは、山上家の若者の仕事らしい。その中でも、予備である装二郎は積極的にしなければならないようだ。


「明日、明後日辺りは掃除のお手伝いかな。泊まり込みでするんだ」


 行きたくないし、したくもない。装二郎は珍しくぼやく。


「年始は、まりあも本家に行かなければならないんだけれど……。まりあにおじさん達のお酌をさせたくないな」

「わたくしは、別に構わないのですが」

「いや、構うよ。酔っ払ったおじさん達、ふざけてお尻触ってくるし」


 魔の手は女性陣だけでなく、装二郎にも向けられる無差別的なものなのだとか。

 装二郎は頭を抱え込み、最悪だと叫ぶ。


「別に、行かなくてもいいのでは?」

「え!?」

「装二郎様は、このお屋敷の年末年始の準備をしましたし、本家は本家の方々ですると思います。ご挨拶も、バタバタと忙しい年始にする必要はないでしょう」

「それは、そうだけれども……」

「装二郎様の家はここです。準備が終わったのならば、ゆっくり過ごしてもいいと思います」

「そ、そっか。言われてみれば、そうかも」


 装二郎はスッと立ち上がり、まりあに宣言する。


「今から、本家の行事には参加しません、年末年始は、屋敷で過ごしますって手紙を書くよ。それで明日は、一緒に御節供を作ろう。それを、まりあの実家に持っていって、お義父さんとお義母さんとのんびり過ごすのは、どうかな?」

「とってもすてきだと思います!」

「決まりだね!」


 思いがけず、楽しそうな年の始まりを過ごせそうだ。

 まりあも、両親に手紙を書く。

 年が明けたら、装二郎と一緒に挨拶に行く、と。 

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