6-1
その日の夜。恵実はベッドの中で眠れずにいた。昴がいなくなってから、こんな夜は何度もあった。絶望、という言葉が適切なのか分からないほどに、深い谷に堕ちて出られなくなってしまって。一度目を閉じて眠ろうとしても、朝目を覚ました時の虚しさを思うと、到底寝付けなかった。
彩夏と加奈に、自分と昴の全てを話してしまった。
それが正解だったかどうか分からない。二人がお店にやってきて、
——わたし、思い出したんです。『ブラック時計』、本当は昴さんのものなんですよね? 昴さん、いつもその時計をつけていた気がするんです。
という彩夏の言葉を聞いた途端、これまで抱えていたものがサイダーの泡のように溢れ出して止まらなかった。
彩夏や加奈にとっては、聞きたくない話だったかもしれない。とくに加奈はまだ中学生。彼女の歳で昴の話を聞くのは重たすぎただろう。
「だけど……」
すがるしか、なかった。
お腹の中で、新しい命がむくむくと大きくなるのを感じるにつれ、昴なしで自分が生きる意味を否応なしに考えなければならなくなって。
真実を知る以外に、この先前へ進んで行く方法が思いつかなかった。




