猫が好きなのに前世では猫に嫌われたので、『猫に好かれるスキル』を女神様に頼んだら猫耳の女の子が寄ってくる
前世では何故か『猫』に嫌われていた。
わたしはこんなに好きなのに、猫の方はわたしが撫でようとすると、「フーッ」と威嚇してくるのだ。
動物に嫌われる体質なのかな……と諦めていたけれど、そんなわたしの最後は――『車に轢かれそうだった猫を助ける』だった。
そうして死んだはずのわたしは今、異世界にいる。
いわゆる異世界転生というやつで、適性があれば誰でも送ることができるらしい。
そう言っていたのは、女神を名乗る女の子であったが、耳や尻尾がどう見ても猫だったのは偶然だろうか。
そして、異世界に転生できる権利を得たわたしはチートでもなんでもなく、ただ『猫に好かれるスキル』を望んだ。
今は、異世界の冒険者ギルドと呼ばれるところにいる。
『転生体』の年齢も選べるらしく、わたしは十五歳の女の子として第二の生を得た。
今は少し、後悔している。
「……はあ」
他人の子供になるというのは、なんというか抵抗感があった。だから独り身になったわけだけど、異世界に独り……それも、町を出れば魔物が闊歩しているような世界だ。
転生しても、特別に高い能力があるわけではない。魔力と呼ばれる力はあるが、この世界では突出して高いわけでもない……。
可愛い猫の姿を見ることなどほとんどなく、わたしのスキルはいわゆる『死にスキル』になっているような気がした。けれど、
「こんなところにいたのねっ!」
バンッと机を叩きながら、不機嫌そうな表情を見せたのは――少し前に知り合った女の子。
長い黒髪に、猫のような耳。髪色と同じく黒い尻尾が生えている……『猫人族』と呼ばれる亜人の女の子であった。
「あ、ルリちゃん」
「ちゃん付けで呼ぶなって言っているでしょう! 全く、凡人の癖にまた一人でパーティ募集をしているの?」
「うっ、そ、そうだけど……」
そう、パーティメンバーを募集することはできる。私のレベルだとパーティに入れることはほとんどないから、優しい人に助けてもらうほかなかった。
けれど、この世界のこともよく知らないわたしに、懇切丁寧に冒険者としての道を教えてくれる人はおらず、かといって稼がなければ生きていられない……そんな状態であった。
「あんたみたいなゴブリンやコボルトにも負けそうになる弱っちい子とパーティ組んでくれる人がいると思ってるの?」
「うぐっ」
ルリちゃんの言葉はとても突き刺さる。彼女はこうして何かとわたしに突っ掛かってきて、わたしのダメなところを指摘するのだ。
「剣もダメ。弓もダメ。魔法もろくに使えない……そんなあんたが冒険者として生きていけると思うの?」
「そ、そんなに言わないでよぉ」
思わず泣きそうになる。すると、ルリちゃんは少しだけ動揺した表情を見せて、
「ま、まあ……そんなダメなあんたのために、わたしがパーティ組んであげる」
「えっ、また?」
また、というのは……ルリちゃんは何故かわたしが冒険者を始めてから、ダメ出しをする割には一緒にパーティを組んでくれるからだ。
彼女は若いながらもすでにAランクに到達している冒険者……実力だけで言えば、この辺りでは上位に位置している。
「何よ。不満なの!?」
威嚇するような表情を見せるルリちゃんに、わたしは首を横にふる。
「う、ううん。不満じゃないけど……ルリちゃん強いのになんか悪いなって」
「悪いと思うならあんたが強くなりなさい。それに、私が好意で言ってるんだから不満に感じるんじゃないの!」
「わ、分かったよ。ありがとう」
素直にお礼を言う。異世界にやってきて、厳しいけれど優しくしてくれる……友達と呼べる相手なのかもしれない。
「その代わり……」
思わせ振りにちらりとわたしの方に視線を向ける。
何かを求めるように、ルリちゃんの尻尾が動いていた。
「あ、仕事終わったらまた『撫でて』いいの?」
「人前で撫でるとか言わない!」
「ご、ごめんなさい」
「ホント、デリカシーないんだから……でも、約束だからね」
何故か彼女は、わたしを助けてくれる代わりに『撫でる』ことを要求してくる。
それは頭だけではなく……とにかく、そういう要求をしてくるのだ。
猫の耳と尻尾が生えている彼女がそういう要求をしてくるのは、『猫に好かれるスキル』のことも頭を過るが、さすがに関係ないだろう。
わたしは今日も、ルリちゃんとパーティを組んで、仕事が終わったあとは彼女を愛でる生活を送っている。
ツンツンした女の子はお仕事のあとに『にゃんにゃん』するわけです、はい。
後々には猫耳女の子のハーレムにしたり、おっきな猫が懐いたりと幅を広げたいですね。
そして何故かネコにもry
あとで愛でてるシーンも書くかもしれません。