表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヲ化ケ屋敷お化け隊  作者: RATO
3/8

2話-スタートライン-

凍てつく寒さが皮膚へと突き刺さり血液までもが凍ってしまいそうな夜明け頃。

ウチは何故か道無き道を走っていた。

この寒さの中。唯一暖かさを感じてるとしたら…

誰かに掴まれ引っ張られている右手だけ。

白い息は絶え間なく放出され

まるで命を吐き出しているかの様。

後ろ姿の君達は寒さを感じないの?ウチを何処に連れていくの?…

こんな所にいたら叱られちゃうよ?…

きっと戻った方がいい。ウチらは何処にも行けない。

君達も…


『行けるよ』


…………っ!


『太陽が笑う暖かい場所。刃子(はこ)ちゃんならたどり着ける…きっと』


ウチを一人にしないで…


『だから。行ってッ!』


ひきこちゃんッ!!…




カーテンから顔を覗かせる眩い日光は起床アラームより先にウチを夢から引き戻した。目を覚ますとそこは…

自分の部屋だった。

「早く起きないと遅刻するわよ~?」

一階のリビングからマァマの声がウチの聴覚へと細やかな刺激をもたらす。

「遅刻は不味い!…とても美味しくない!」

あの夢は何だったのか…

「マァマ!お腹すいた!」

「はいはい!」

あの子達は…誰だったんだろう。

今となっては顔も思い出せない…

「着替えは出しとくから。歯磨いてらっしゃい」

「ありがっと。マァマ」

でも何故だろう…涙が止まらないんだ。

「忘れ物は無いわね?」

「無いであります」

あれ。なんでウチ泣いてたんだっけ。

「じゃ、気をつけてね。いってらっしゃい!」

「いって来るのだぁぁあい!」

変な夢でも見たかな?…





霊撃(れいげき)部隊(ぶたい)ゴースト・スピリッツ】本部にて。

既にメンバー全員が社長室へと集まっていた。


「研修…?」


「えぇ。貴女は新人だから規約上受けないといけないの」


そこで刃子(はこ)に言い渡された使命。

それは新人メンバーが組織にとって

本当に必要であるかどうかをテスト。及び実力を試す規約上必要とされる『研修』だった。


「今回は他の霊撃(れいげき)部隊(ぶたい)との合同研修ね」


リーダーが口にした『他の霊撃(れいげき)部隊(ぶたい)との合同研修』と言う言葉。

刃子(はこ)は初めて自分達ゴースト・スピリッツと同じ事をやっている同業者の存在を知らされた。


「懐かしいなぁ。私は暴走族上がりだったから特に厳しい目で見られたっけなぁ…」


「私だって!箱入りお嬢様には無理だって思われてましたわよ!」


もちろんこの研修。実力だけでなく人間性も疑われかねない。

自分の行動は全て自己責任の上で行われる。

研修段階から一人の組織メンバーとして見定められるのだ。


「もちろん。今回の研修も私が刃子(はこ)に同行します。」


「いつも悪いわね殺夜(さつよ)。やっぱり貴女が安定だわ」


付き添いに名乗りを上げたのは霧咲(きりさき)殺夜(さつよ)

(かなで)の研修の時も神子十(みこと)の研修の時も殺夜(さつよ)が付き添いでオペレーターを努めていた。

それからメンバー達の希望により。こう言う時こそ殺夜だと支持されているのだ。


「では集合時間も近い事ですし。そろそろ出発しますね」


「うむ。頑張ってこい!刃子(はこ)くん!

殺夜(さつよ)くんも頼んだぞ」


社長の一喝になぜか安心感を抱いた刃子は


「社長…ウチにお任せ。」


真剣な表情を表し真っ直ぐと前を見た。


そして。社長含め他のメンバー達は本部の敷地の出口まで二人に付き添い。

バスに同乗し走り去って行く刃子(はこ)殺夜(さつよ)を見送ったのだった。


「二人も行った事だし。私達は待機ね」


(かなで)~。アイス買って来てくださいまし~…」


「んだよ~。自分で行けばいいだろ~…」


(きなで)。私の分もいいかしら…」


「リーダーまで~…」



この世界は既にコンクリートジャングルに侵され。

バスの窓から見える景色は代わり映えしない。

同じ様な建て物がずらりと並び我が物顔で見下してくる。

非常に滑稽な世界だ。


バスに揺られること1時。長旅の最終地点はここ。

霊撃(れいげき)部隊(ぶたい)総本部(そうほんぶ)・セカイ】

天まで届きそうな程の巨大な建造物に刃子(はこ)の自宅にも劣らない壮大な敷地が広がる。

まさに。セカイの名に相応しい場所だ。


「おぉ~……」


「感想は?」


「で、でけぇ~…のほ~……」


今日1日。ここで刃子(はこ)は上層部に一人前になれる素質かどうかを


審判される。


二人は早速窓口の受付を済ませる為。セカイのロビーへと足を運んだ。

そこでは。刃子(はこ)同様。各地から集められた新人達が複数居座り

お互いがお互いを睨み付け、どんな奴なのかを見定めようとしていた。


(い、居ずらい…はい…)


ピリピリした空気の中。緊張は再び甦る…


刃子(はこ)。ここに名前と年齢。所属チーム。それから血統を書いてください」


「へ…へい」


殺夜(さつよ)に指示されるがままに受付を済ます刃子(はこ)は手を震わせていた。


「そんなに緊張しないで大丈夫。今日1日は私が面倒みますから」


「よ。よろしゅ~…」


そんな最中。男は見ていた…

暗闇に自身を潜ませ。じっと… 見ていた。

まるで獲物を草むらから狙う獣の様に。

ただひたすら。眼光を光らせていた…


焼茨(やいば)様。本当に彼で務まるんでしょうか」

全てが見下ろす事の出来るとあるビルの最上階

「奴は狡猾(こうかつ)な男だ、忠誠心もある。なにが心配なんだ?」

ここを統括する社長らしき人物と。

「いえ…」

秘書らしき人物。

二人はなにかを企んでいるかの様な会話を交わしていた

「ま。目立ちたがりやな部分は確かに心配だが。大丈夫だろ」


うごめく闇は成長をやめず。その時が来るのを黙って待つのみ。

暗闇から牙をちらつかせる悪魔は… 

葬火(そうか)刃子(はこ)。キャハハハ…」

笑いをやめない。



冷房が体を冷すロビーにて。二人は設置されていたソファーへと腰掛け始まりの時を待っていた。


すると。ピンポーンッの音と共に心地よい女性の放送が各新人達の耳に入り込んだ。


{今日はお集まりいたたぎ。誠にありがとうございます。

各所からの研修生が集まりましたので。つきましては別室にて説明を受けて頂く形となります。では皆様。移動をお願いします}


始まりの時である。


それぞれが立ち上がり黙ったまま歩き出す。

移動を強いられた場所は殺風景な部屋なのだが

小部屋と言うには広く。大部屋と言うには小さい

机や椅子は綺麗に片付けられ隅っこに追いやられている。

元は会議室の様な扱いだったのだろうか。

あるのは文字を書き込めるパネルだけ。

しかも。冷房もなく真夏な事もあって。すごく蒸し暑い。


そこで待っていたのはスーツ姿の男性が一人と女性一人


「揃ったな諸君。ワタシは川桐(かわきり)一真(かずま)だ。よろしくな!ちなみに【血統】は無い。あるとしたら人間の血統かな」


「私は黒波(くろなみ)由紀恵(ゆきえ)。同じく【血統】は無い。ただの人間だ。よろしく」


男の方は陽気な感じがするが。女の方は明らかに冗談が通じなそうな雰囲気だ。


「では。本題に入る前に諸君らの自己紹介を聞こうかな」


男はそう言うと横並びになる研修生達を端から順番に前へと立たせた。


最初に指示を受けたのは長髪で気の弱そうな男の子

「【霊撃(れいげき)部隊(ぶたい)グール・ホープ】所属。

山城(やましろ)己刃(きば)17歳…です

【血統】は…吸血鬼です…」


付き添いの女の子はスッキリとした顔立ちだが目が少し不気味に清んでいる。


「同じく付き添いのグール・ホープ所属。

(あかつき)永久(とわ)17歳です。

【血統】は同様、吸血鬼です」


まばらな拍手の後は正直やりずらいモノがある。


次に指示を受けたのは。身長の低い女の子。見るからに生意気そうで気が強そうだ。


「【霊撃(れいげき)部隊(ぶたい)セイバー・ライトスター】所属。

落田(おちだ)果実(かじつ)14歳だ!

【血統】サー・アイザック・ニュートン!

年下だからって!ナメるなよッ!貴様ら!」


付き添いも性格がきつそうな顔立ちをしている。


「このバカと同じく。セイバー・ライトスター所属。

火炎(かえん)空子(うろこ)20歳だ。

【血統】はドラゴン。以上」


続いて前に立つは清楚な女の子。

いかにも男子受けしそうな容姿だ。


「【霊撃(れいげき)部隊(ぶたい)リーサル・イーター】所属。

乙女(おとめ)撫子(なでしこ)16歳です。

【血統】は女神です。よろしくお願いします」


付き添いも同様、大人しく清楚な女の子


「同じく付き添いのリーサル・イーター所属。

大鎌(おおがま)死乃美(しのび)16歳です。

【血統】は死神でございます。よろしくお願いします」


続いては背の高いクールビューティーな女性。大人の色気を纏うその姿は憧れさえ抱かせる。


「【霊撃(れいげき)部隊(ぶたい)ファントム・シール】所属。

輝実(かがみ)小羽(こはね)19歳です。

【血統】はティターニアです。」


付き添いはこれまたクールビューティーと並び背の高いクールなメンズ。


「同じく付き添いのファントム・シール所属。

業魔(ごうま)偽天(ぎてん)19歳です。

【血統】はベリアルです。」


そして。ついに来た緊張の自己紹介。

刃子の膝は震えだし。おぼつかない様子で

前へとたった。


「えーっと…その。【お化け隊】所属…」


分かっていた。頭が真っ白になる事くらい。

分かっていた。恥をかく事くらい。


「【霊撃(れいげき)部隊(ぶたい)ゴースト・スピリッツ】です。そーよね刃子(はこ)


間髪入れず殺夜(さつよ)が訂正。


「へ。へい…

霊撃(れいげき)部隊(ぶたい)ゴウスト・スピリッツー】所属。

葬火(そうか)刃子(はこ)…17歳であります

【血統】は八尺様…なのである。はい…」


「ゴホンッ…訂正させていただきます。

霊撃(れいげき)部隊(ぶたい)ゴースト・スピリッツ】所属。葬火(そうか)刃子(はこ)

で、私が付き添いの霧咲(きりさき)殺夜(さつよ)20歳です。

【血統】は切り裂きジャック。よろしくお願いいたします」


すると、殺夜(さつよ)刃子(はこ)に近より耳元でささやく。


(まさか貴女…受付用紙に【お化け隊】って書いてないですよね…)


すると刃子(はこ)はぎこちない動きで殺夜(さつよ)に顔を向けた。


(まさか…書いたのね…っ)


すぐさま察した殺夜(さつよ)は全速力で部屋の出口を飛び出し受付場へダッシュ。


2分後。


再び戻ってきた。


「さ…殺夜(さつよ)…汗…凄いナリよ…」


「ぜぇ…ぜぇ…誰のせいでしょーね!…」


スーツを纏う男は苦笑いで両手を合わせ。注目するよう合図。


「ま、まぁ…自己紹介も終わった事だし、本題に入ろうか…」


パネルに書き出された内容。

それが今回。午前の部で行われる試験だ。


「第一次試験っ!それは!…」


誰もが内容に気づいていた。

それしかないと思っていたからだ。




「我々試験官を。驚かせて見せろ」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ