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シラーの 「見霊者」読み解きとダイジェスト版  別名邦題「 招霊妖術師」原題 der Geisterseher オカルトゴシック小説の傑作です。

作者: 舜風人


1序説   時代背景


18世紀中庸~後半にかけて

ヨーロッパを合理主義の洗礼が襲おうとしていた。

確かにそれまでの時代はあまりにも

迷信的過ぎた、非合理すぎた。


それへの反動が起こっても仕方ないだろう。

それが

啓蒙主義と百科全書

フランスはまさに合理主義の時代へと急先鋒の舵を大きく振り切ろうとしていた

「理性の光」を金科玉条としてすべてを合理主義で割り切ろうとしたのだ。


迷妄の神を追放し

因習や旧弊を弾圧し

王政打倒

科学の勝利

魔術から科学へ

「理性の光を」


この運動はある意味、振り子が左に振り切ってしまったといえるだろう。


そして


その究極の結末が「フランス革命」なのである。


フランス革命とはある意味起こるべくして起こった歴史の必然でもあったが

またそこに果たした「啓蒙主義と百科全書」の功績も多大なものがあったといえるだろう。

だがフランス革命の悲惨な結果は皆さんがご存じの通りである。

ロベスピエールの恐怖政治

ギロチンの血なまぐさい「粛清」の横行、


左に振り切った振り子は

かくして悲惨な粛清と恐怖政治に堕したのだ。


そしてフランス革命の「自由:平等、博愛」のもろくも崩壊する過程は

やがて

再び時代の大きな振り子を右へÞ振り切らせることになるのだ。

それがナポレオンという「皇帝」誕生というアナクロニズムの歴史の逆転現象で終末を迎えるのである。


さてこういう一連の振り子の極から極へと触れる様に流れにおいて

庶民は果たして科学万歳合理初義万歳、


魔術はさらば

魔術はでたらめ


だっただろうか?

そんな単純な話ではないのである。


宗教は阿片だと断じて共産主義こそが人類のすくいだと、万歳が、、さてその後どうなった?

ソ連における大粛清で1000万人が殺され、、、

中国文化大革命で700万人が虐殺され。

ポルポトの支配で400万人が虐殺、、

何れも何の罪もないような無辜の民である、

これが共産主義が振り撒いた害毒だったのだ。


実は科学的、、合理的が幅を利かせれば利かせるほど

庶民の「魔術」へのあこがれ?は増幅しっぱなしだったのだ。


まあ人間なんてものはそういうものなんです。

余りにも否定されるとその反動で?

どっかで「魔術」へのあこがれ?があるものなんです。


そういうフランス革命前夜の頃、葬然たるヨーロッパの世情において

奇しくも一連の「怪しい遍歴者」たちがヨーロッパを渡り歩いて

怪し気な医術。錬金術。カバラ。予言などで王侯貴族から庶民までをたぶらかし

宮廷にも自由に出入りしていかがわしい薬や療術で金を巻き上げていたのである。

彼らこそが合理主義に納得しない庶民の心の深層に付け込み

正に時代をうまく利用した稀代のペテン師たちだったのだ。

時代が彼らを生み出した、、といっても過言ではなかろう。



ではどういう人物がいたのであろうか


カリオストロ伯爵       実はイタリアの庶民階級の出自

サンジェルマン伯爵      正体不明のオカルト伯爵

カザノヴァ・ド・サンガール  口八丁手八丁のカバリスト兼女性狩猟者


などが特に著名であるが

これら以外にも、今はもう埋もれてしまった

同工異曲のこうしたペテン師が当時はウヨウヨとヨーロッパを遍歴していたのである。


庶民はもういちころだったし

貴族だって内心は魔術大好きだからぞっこんだったし

彼らの思うつぼだった時代だったのだ。


そして当時の知識人の代表であるあの「ゲーテ」ですら

一時的に「カリオストロ』にぞっこんだったのである。

さすがにその迷妄からやがて覚めるのだが、、


その記念碑としてのちにゲーテは「大コフタ」というペテン師を主人公にした喜劇を書いている。


さて本日の主題

シラーの「見霊者」という長編小説であるが。


シラーといえば劇作家。詩人として有名でたくさんあるが

歓喜の歌とかワレンシュタインとかありますよね。


シラーは小説も書いていて、、、

というか唯一の長編小説がこの「見霊者」Geisterseher)なのである。

1787~1789執筆

 「招霊妖術師」  という邦訳題名もある。

この邦題 いささかやりすぎ感、有りすぎですよね?

「見霊者」、、で充分でしょう。



シラーがカリオストロに触発されて書いた小説である。

確かに当時の人々にとっての「カリオストロ体験」は衝撃的だった。

いずこからともなくふらりと現れて

奇跡の医術で難病人を次々治してゆく

しかも貧民からは一切金をとらない、

どころか、、施しまでしてくれる


これでは、庶民ならずとも熱狂するのは当然だろう。

そうしたカリオストロに魅了された人の中にシラーもゲーテもいたのだ。

そしてゲーテは「大コフタ」を書き

シラーは「見霊者」をかいた、、ということだったのだ。


実在のカリオストロについては詳しくお知りになりたい方は

「山師カリオストロの大冒険」種村季弘、著  でもお読みくださいませ。




当時の知識人のシラーさえも取りつかれていたのである。

まして庶民おや、、、。


内容はカリオストロをほうふつとさせる人物が登場して


第一部はオカルト的な政治小説・秘密結社小説

第2部は謎解き・推理小説的な味わいの


なかなか興趣尽きない優れたオカルト小説なのである。


しかし、時代はやがて急変1789年にフランス革命が勃発

シラーはそれを見てこの小説の時代は去ったと悟り?

完結させることを辞めたと伝わっている。


つまり未完成で終わったのである。


こういう魔術的小説をあのシラーが書いたというのも

カリオストロという奇人にシラーがある種のあこがれを見たからでもあったのだろうが

しかしそれも1789年フランス革命で雲散霧消

カリオストロ伯爵

サンジェルマン伯爵

カザノヴァ・ド・サンガール

彼らも時代の波が変わればあっという間に消え去ってしまったのである。


さて

お待たせしました。




ここからはあのホフマンも愛読したというこの小説のダイジェスト版を

お届けしよう。


「当時、少しでもロマン的なものに憧れている人なら、必ずポケットにしのばせていた本だ」とE.T.A.ホフマンが激賞したという。


シラーの「見霊者」どうぞご堪能下さいませ。








2、見霊者   ダイジェスト版


これは der Geisterseher

という原題で直訳すると「霊を見る人」となります。英語ではゴースト・ウオッチャーとなります。邦訳はいくつかありますが幻想文学大系版は「招霊妖術師」というおどろおどろしいものになっています。この邦題 いささかやりすぎ感、有りすぎですよね?

「見霊者」、、で充分でしょう。原題の直訳は「霊を見る人」ゴーストウオッチャーという意味なんですから。

私は「見霊者」で充分、いいと思いますが。


1787~1789年までシラーが編集長だった文芸雑誌「タリーア』に連載されました。

先程も書いたように絶筆・未完成です。

その理由はおそらく1789年に起こった「フランス革命」を目の当たりにしたシラーが

今どき、こんなオカルト小説なんか書いてる場合じゃないと直感したからだと私はそう理解していますがね。




さて物語は、、、、、、、、、、、大変錯綜した物語展開ですので


私のダイオジェスと版も、ほんの「サワリ」だけだということを先にお断りしておきます。

第一部、第2部とあり

未完成に終わっています。


つまり、、シラーが御時世の流れの急迫を受けて?完結をあきらめて、投げ出しちゃった?ということです。






第一部


このものがたりは、、


18世紀自由都市ベネチアを舞台に始まる。

わたし(話者) こと O某伯爵は

旅の途中、訪ねた、、ベネチアに隠棲している

某公子のことを物語る


その公子は身分も隠して。気の知れた友人と召使のみに囲まれて暮らしていた。


ある日公子と私はベネチアの町を歩いていた。と突然見知らぬアルメニア人の男が近づいてきて

ささやいた。

「喜ばしいニュースです。彼は9時に死にました」

そういうと去っていった。


それから1週間後故郷のいとこが死んだという知らせが届いたのである。


しばらくして私たちはカフェでベネチア人と争いになった。

すると見知らぬ警官があらわれて私たちを地下裁判所に連行、

ベネチア人は目の前で首をはねられたのである。

私たちは謎のアルメニア人のおかげで無事釈放となった。


やがて私たちの交友は広がり

交友の仲間と霊を巡り議論が起こった。

シシリア人の男が霊を呼び出すという。

かくして「交霊会」が催されることに


するとやがて血まみれの霊があらわれて誰が俺を呼び出した?と詰問するのだった。


だが後日この交霊会はすべてトリックだったことが暴かれる、この裏で糸を引いていたのもあのアルメニア人だった。






第2部



一連のオカルト事件ののち

公子は宗教に疑問を感じるようになり、


やがて無神論的な秘密結社に入会する。

さらには「放蕩三昧」の生活にも耽溺するようになる。

そんな折、私(話者)のO侯爵は国に帰らざる得ないことになる。

だから以下のオハナシはベネチア在住のF男爵の手紙による。


公子は乱費の繰り返し。放蕩生活で破たん寸前だった。

ユダヤ人から借金までするようになる。

そんなある日礼拝堂で妙齢の夫人と出会う。

一目で恋のとりこになった公子は

そのマドンナを探し回る。

そのために、借金はかさみ

賭博にまで手を出すが大負け、、

実はマドンナはあの謎のアルメニア人と関わりがあるということをF男爵が突き止めるのだった。


、、、が


そこでF男爵の手紙が途絶える。


そして私(話者)のもとに公子の死亡が伝わってきたのである


わたし(話者)は急いでベネチアに向かうのだが


現地について、そこで知ったのは

公子はアルメニア人の感化によってとっくにカトリックに改宗させられてしまっていたという

事実だった。


、、、、、、、、、、ここでこの物語は中断されるのです、


シラーがこれ以上書き継がなかったからである。



、、と


まあ極く、ざっとしたあらすじですが

本当はもっと入り組んでいて

カリオストロを思わせるあの謎のアルメニア人のことも詳しく描かれています。



まあ

あの、シラーがこんなある意味、娯楽小説?を書いていたということも驚きですが、、

私が序説で述べた様な、そういう時代背景の影響だったのでしょうね?



まあそれにつけてもこのオカルト小説というか

ゴシック小説というか


興趣尽きないものとなっていることは確かでしょう。


機会があったら是非ご一読のほどを、、。




終わり








参考文献



招霊妖術師  世界幻想文学大系





山師カリオストロの大冒険   種村季弘

・この本、非常に衒学的で?トリビアな博識満載で予備知識が無ければ読むのが困難です。

 単なる歴史小説・伝記本ではないです。タネムラ・ワールド全開本ですから要注意です。




見霊者   国立国会図書館デジタル

http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1149081



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