表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/9

気持ち

「ダメだって何でさ!? タイミングはバッチリなはずだよ!」


 魔法の行方を再度確認してリッシュはオラグに顔をむける。


 遠く離れた隕石に向かい二十本の魔法の後を、オラグの魔法が後を追う形になってはいるが、隕石にぶつかるタイミングで交わる事はオラグでもわかっている。


 しかし、オラグはそれでも破壊にはならないし、軌道を変えることすら魔力が足りないと、魔力を使いながら思ってしまったのだ。


 それが【精神の極み】で覚醒したオラグの見解だった。


「純粋に魔力が足りないんだ。このままでは破壊にはならないっ」


 タイミングばかり気にしていたリッシュは魔力の量と感じようと、今度は威力に集中した。


「うそっ⋯⋯」


「くっ」


「どうするのさ? Sランクでもなければあそこまでは届かないよ。ギリギリまで引き付けて魔法を放ったら、衝撃で地上に甚大なダメージが残る」


「わかってるよ!!」


 目線は巨大隕石に向けたまま、オラグは感情に任せて叫ぶ。叫んだ所で何かが変わるわけでもないとは理解していても、叫ぶ事しか出来なかった。


「っ!⋯⋯ごめん」


「いいさ、君は頑張ったんだ。僕のためにもやろうとしてくれたんだ。無理を承知でね。ありがとう」


 叫んだ事で冷静さを取り戻したオラグはやはり目線は変えずに、リッシュに謝った。それを優しい声音でオラグへ感謝の気持ちを伝える。


(無理を承知で。⋯⋯っ!)


「リッシュ、まだやれることはあったよ!」


「どんなことだい?」


 オラグは言葉を発する事はせず、一瞬だけリッシュを見てニコッと笑った。


「っ! ダメだよっ! それだけはダメだっ! みんなが許したって僕は絶対に許さないっ!」


 オラグの笑顔で、やろうとしていることを悟ったリッシュは叫ぶ。


 絶対に許さないと。


「⋯⋯ごめん。でも、ここでやらなきゃ変わらないから」


「だからって、だからって⋯⋯」


「この魔力がいつまでも続くわけじゃないんだ。俺も、そして皆も」


「なら、僕はここにいる! それは譲らない! もう決めたんだ!」


「⋯⋯」


「僕のわがままを聞いてくれるのが君の役目だろ?」


「うん。そうだね」


「千年の丘のドングリで祝杯をあげるんだらね」


「うん。そうしよう」


 オラグは自身の中に眠る力を目一杯、無理やりにこじ開ける。


(これで本当に終わりにする)


「はぁっー!」


 オラグを中心に魔力の渦が大きく広がっていき、その渦から猛スピードの魔法が隕石に向かって飛んでいった。


 バルコニーから魔法を放ち続けている者達にもそれは確認出来た。その中でも真っ先にリーアンが叫んだ。


「オラグっ!」


「あのバカっ! 無理やり魔力を解放してやがるぞ。暴走をワザと引き起こしやがった」


「⋯⋯私、行かなかきゃ」


 渦は次第に雷と炎を交互に発生させ、いつ爆発してもおかしくはない状況になる。その現象を目の辺りにしたバッシュはリーアンに叫ぶ。


「もう遅い! 今はあのバカを信じて魔法を打ち続けろ!」


「でも⋯⋯」


 その瞬間、オラグを中心の魔力の渦が限界を迎え爆発を起こし、魔法の線は五倍ほどに膨張し隕石に向かって飛んでいった。


「オラグー!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ