挑戦
バルコニーに出た一同は空を見上げる。
一般の肉眼では小さな点にしか見えないソレは、一流の冒険者だから確認出来る隕石だ。
「軌道すら変わってねぇな」
冒険者の一人がボソッと呟く。オラグもソレを凝視するが真っ直ぐこちらに向かってきているのが確認できていた。
オラグは肩の力を抜きゆっくりと目をつぶり、呼吸を整え瞑想に入りながら両手に力を流すように意識する。
(やるしかない。これまで貯めてきた力を一気に解放するんだ。それでもダメなら⋯⋯)
目を開ける、両手の拳を強く握り、両親に向かってボソッと呟く。
「今までの力を全解放する」
「⋯⋯わかった。後のことは何とかする」
「合わせられる?」
「うん。よろしく」
三人だけの聞こえるだけの声量で話し終えると、バッシュは全員に向けて大きな声を出して指示を出す。
「これでダメなら終わりだ! いいか、俺達は全力で再度、巨大隕石にぶつける! 出し惜しみは無しだ! それにオラグが合わせる、カウントは五秒前から準備はいいか?」
「「はいっ!」」
(皆に指示を出せるなんて、父さんって実は凄い人だったんだ)
こんな緊迫した状態でもオラグは、冷静に周りを見ていられた。それは【精神の極み】が発動していることで鮮明に状況分析が出来ていたからだ。
「カウント始める! 五⋯⋯!」
その瞬間、オラグは隕石に向かって空中へ一人飛び立つ。
一流の冒険者達はその光景に驚きを見せたが、直ぐに意識を魔力に戻す。
「何でもオラグは飛び立ったんだい? 皆の横にいた方が合わせやすいんじゃないのかい?」
ポケットの中からヒョコっと顔を出したリッシュはオラグに問いかける。
「確かに合わせやすいと思う。でも、横にいたら魔力が強すぎて巻き込んでしまうよ。だから、距離を取らなきゃダメなんだ」
「三!」
すでに遠くの方でバッシュの声が聞こえる。これ以上離れれば声が聞こえなくなるギリギリの所でオラグは位置取りをし準備に入る。
「二!」
オラグは巨大隕石だけを見つめる。どこを狙えばいいのかを見極める。
「一!」
最後の呼吸だと大きく息を吸い込む。
「いけーーー!!」
その瞬間、オラグの後方からさっきよりも強力な二十本の魔法が迫ってくる。それを感じなから両手に魔力を込める。
「この速度なら、少し送らせてから放たないとタイミングが合わないな。リッシュ、合図を頼むよ」
「任せて!」
オラグの魔法を受けているリッシュには魔法感知が、第六感として飛び抜けている。自分で判断するより絶対に正しいと思っての以来だった。
オラグの横を猛スピードで通りすぎる魔力を感じながらリッシュの合図を待つ。
「今だっ!」
「だぁーーーー!!!」
ジャストなタイミングだ。これなら巨大隕石に同時にぶつかる。
「よしっ!」
リッシュは小さくガッツポーズをする。これ以上ないタイミングだと。
しかし、オラグは全く別の言葉を発する。
「ダメだっ! 失敗する!」
「えっ!?」






