実行
「王様っ!」
お城に戻った王様と十一人の冒険者がいる部屋の扉を勢いよく開け、オラグが王様へと話しかける。今まで一度だって王様と話した事すら無かったが、軽い興奮状態のオラグは後先考えず話しかけていた。
「オラグっ!?」
バッシュはそんなオラグの登場に驚き、予想もしていなかった事が起きて思わず声を出す。
そりゃそうだ。普段、町にも行かずに森にばかり行っている息子が突然お城に来て王様に話しかけているのだから。
父の声に気付いたオラグは父に向かい、
「父さん。俺、巨大隕石を破壊するよ!」
と宣言した。
「バカな事を言うなっ! 俺達が束になったってびくともしなかったんだぞ!」
「そうよ。なんでここにいるのよ! 家で待っててって手紙読んでないの?」
リーアンも加わり両親はオラグに駆け寄り、怒りと心配をあらわにして問い詰める。それでもオラグは堂々とした態度で両親に問いかける。
「世界の半分が消滅なんて嘘でしょ? 本当は世界の全てじゃないの?」
「⋯⋯っ!?」
核心を疲れたのか、部屋にいる全ての人が驚愕する。
「やっぱり⋯⋯。他の人は気付いてはいなかったみたいだけど、あの魔法量で破壊できない程の隕石なら壊滅でしょ? そんな大きさの隕石の被害が半分で済むなんておかしいと思ったよ」
「バっ、バカ。お前⋯⋯」
「よい、バッシュよ」
オラグの言葉は父親に向けられた言葉ではあったが、王様が聞いていると焦った父は止めようとした。
しかし、すでに王様の耳に入ってしまった事で、父の発言が止められる形となってしまった。
「バッシュ、リーアンの子よ。まずなぜここにいるのかを説明してみよ」
「はい。僕はあの隕石を破壊する手伝いをさせてください」
そう言いながら、深々と頭を下げた。
「お前は何をバカな事を言ってるんだ」
「そうよ。なんでそうなるの?」
両親は戸惑いながら質問をするが、王様はオラグを見据えている。
「どこまで出来るかはわかりません。それでも僕は絶対に役に立ちます!」
オラグは頭を上げ、王様を見ながら力強くそう付け加える。
「⋯⋯私の耳にすら入ってこない人物が加わった所で巨大隕石が破壊できると?」
「はい!」
「うむ。それを私に証明出来るのか? それすらも出来ないならばただの傲慢だ」
王様は厳しい目線をオラグにむけ問いかける。
「僕には何が証明になるかはわかりません。ただ、僕がこの状況でここにいることが証明にはなりませんか?」
「「⋯⋯っ!」」
その場にいた全ての人が驚愕する。お城の前では人々が逃げる場所を聞くためにごった返し、お城の中では何人もの兵士が巡回しており、ここには世界の英雄と呼ばれる十一人の冒険者、そして王様がいる。
その誰もが気づかれることなく、ここまでオラグはやってきた。
「⋯⋯やれるのか?」
「はい!」
冷静にオラグがここにいることを理解した王様は一言だけ問い、オラグがそれに答える。
「バッシュもリーアンも知っていたんだな。自分達の息子の力を⋯⋯それでも私に隠していた。それは今は不問にしよう」
王様が今度は両親に向けて喋る。
「お前達、もう一度やれるか?」
今度は全員に向けて王様は問う。
「「はいっ!」」
「ならばもう言葉は要らぬ! これで終わらせる! ついて参れ!!」
こうして最後の挑戦が始まる。