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手紙

 先週にゴブリン退治を終えて、オラグの日常が戻ってきた。


 いつもの岩の上で目をつぶって座禅を組み、肩の上にリッシュが座る。

 そよ風が気持ちよく、リッシュはウトウトし始めていたが動物の第六感だろうか、急に身構え西の空に目を向ける。


「⋯⋯っ。オラグっ! 見てっ! あれはなんだい!?」


 リッシュの小さな掌でペシペシとほっぺたを何度も叩かれ、座禅を組んでいたオラグが目を開ける。


「もぉ、いつも言ってるだろ。座禅をしてるときは終わるまで待ってくれって」


「そんなことよりあれだよ、あれ!」


 リッシュが肩で何度もジャンプをしながらお城の方の空を指差して騒いでいる。


「まったく騒がしいな。ん⋯⋯んっ!?」


 リッシュの指差す方へ顔を向けるとその異常な光景にオラグは目を丸くした。


 何年も前に一度だけ母から見せて貰った事がある最上級魔法だ。それがお城から空に向かって20本も放たれていた。


「あれは最上級魔法だっ。それも20本も同時に。⋯⋯何が起きているんだ?」


「一度家に帰った方がいいんじゃないかな? 両親に聞けば何か分かるかもしれないし」


「そうだね、行くよ。しっかり捕まってて!」


 この状況を少しでも早く知りたくて、珍しく全力で家まで走る。


「はぁはぁ⋯⋯最上級魔法は威力が強すぎるから、母さんはSランククエスト以外は使っちゃダメだって言ってたのに」


「もしかしてとんでもない事が起こってるんじゃないだろうね?」


「⋯⋯わからない。でもきっと不味い事は起こってると思った方がいいよ」


 ****


「ただいまっ!」


 勢いよく扉を開けたけど、家には誰にもいなかった。変わりに部屋の真ん中にあるいつもご飯を食べるテーブルには、手紙が置いてあった。


「手紙が置いてあるね。読んでよ!」


「うん。えっと、母さん達は王様の召集に行ってきます。夕食までには帰ってくるので待っててね。だって」


「召集だって!? 今までそんなこと無かったじゃないか」


 リッシュは知らないが、オラグが生まれてから一度だけ召集があった。


 ――黒竜が城下町を襲ったときだ。


 まだ幼かったオラグは安全のためにと、家に残された。

 鳴り響く魔法や、黒竜の叫び。そして地鳴りに恐怖で布団にくるまって終わるのを待つしかなかった。


「オラグっ!」


「⋯⋯はっ!」


 オラグは気がつけば、大量の汗をかきながら、立ちすくんでいた。


「大丈夫かい?」


「う、うん。⋯⋯お城へ行ってくるよ」


「なら僕も行くよ。キミが心配だからね。無茶はしないって約束だよ」


「わかった。行こう」


 こうしてオラグとリッシュは町へと向かって走り出した。

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