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どいつもこいつも駄目揃い

 盲点だった。

 自力で稼ぐのでも、他人にたかるのでもない第三の選択肢――『借りる』。


 これ以上なく単純明快な解決策が、常に俺たちの前には開かれていたのだ。まさしく天啓を得た思いである。


「こうしちゃいられん。さっそく金貸しをハシゴしてく――」

「待たんかぁ――っ!」


 月天丸が持ち前の素早さで俺の進路に立ち塞がってくる。


「なぜ止めるんだ月天丸! これなら誰にも迷惑をかけず豪遊することが……」

「大迷惑に決まっているだろうが! 借りた金は返すのが道理というものだぞ!? 何を無限に金の湧く泉を見つけたような顔をしているのだ!」


 いいや、と俺は首を振る。


「姉上が真面目に働いて後々金を返すとは思えない。何か返さなくていいカラクリがあるんだろう?」

「こういうときは察しがいいわね」


 俺が持ち前の天才性を発揮すると、二朱は称賛するかのように微笑んだ。


「あたしが金を借りたのは闇でやってる高利貸しどもよ。後で踏み倒したってどうってことないわ。むしろ踏み倒した方が潰れて世のためになるくらいね」

「なるほど。さすが姉上」


 癪ではあるが感心するばかりだった。世のため人のためになって自身も豪遊できる。一石二鳥の妙手ではないか。


「そいつぁいいこと聞いたぜ。それならオレももう飯を我慢する必要はねぇってことだな」


 銭を拾い集めてきた一虎も話に混じってきた。働かずに富を得る方法を知り、気色面々といった具合である。

 俺も自信満々に月天丸の両肩を叩く。


「そういうわけだ月天丸。何も問題はないだろう? 悪党を懲らしめて自分も利益を得るっていうのは、普段お前がやってる義賊活動と同じだ。何も違いはない」

「一緒にされるとめちゃくちゃ腹が立つからやめろ」


 本質的には何も変わりないというのに、月天丸は歯噛みして抗議の意を表明した。やはり自分の領分を侵されるといい気はしないのだろう。

 が、意外にもここで二朱が月天丸に援護を入れてきた。


「ま、あんたらが真似しようとしても無理でしょうね。やめとくのが吉よ。闇の金貸し探しもそこまで楽じゃないし、何より見つけたところであんたらじゃそこまで大金借りられないから。こういうときあたしみたいな美人は得するのよね」


 そう言って二朱は得意げに手をひらつかせる。

 確かに、その手の悪質な金貸しは強制返済の心得を持っている。すなわち、男は肉体労働、女は廓落ちという末路である。二朱のような美貌があれば、向こうも有望な商材として確保のための融資は惜しまないだろう。


 となれば――……


「なあ月天丸」

「なんだ」

「俺が本気で女装すればわりと美人になれると思うんだが、どうだ?」

「知るか」


 一蹴。

 少なくとも一虎よりは断然にマシと思うのだが、月天丸から客観的な評価は得られなかった。


「だけどまあ……女顔って意味じゃ龍兄の方が俺より少し上かもな。っていうか、今どうしてるんだ龍兄は。生活能力なさそうだし、野垂れ死にしてるんじゃないか」

「ああ、あいつなら心配いらないわよ。今は捕まって獄中にいるそうだから」

「そうか。それなら安心だな」


 二朱からの情報で俺はほっと胸をなでおろす。

 あんな駄目人間でも一応は実の兄である。その辺で無様に死なれては寝ざめが悪い。


「待て、おい待て」


 と、月天丸がぐいぐいと俺の袖を引っ張ってきた。


「どうした?」

「今、わりと聞き捨てならん感じの話だったと思うのだが」

「龍兄の方が女顔って話か? いやもちろん、総合的に見て俺の方が男前ってことは疑いの余地がないと思うんだが、いかんせん俺の方は顔立ちの端正さよりも、奥底から滲み出る力強さが上回るからな……」

「たわけが。貴様らの容姿の話などどうでもいい。次兄が獄中とかいう話だ」


 なんだそんなことか、と思う。


「龍兄は俺たちの中でも一番社会適性がないからな。放逐されたら死ぬか獄中かの二択が目に見えてた。無事に捕まって衣食住が保証されたなら喜ばしいことじゃないか。素性を明かせば釈放されるのに捕まったままってことは、本人もそれで満足してるんだろう」

「満足させるな。まず第一に反省させろ。だいたい何をやらかしたのだあの男は」

「聞きたい? あいつはね、夜の花街でご禁制に触れるようないかがわしい薬を……」

「もういい分かった。それ以上聞かせるな」


 二朱が詳細を捕捉しようとすると、月天丸は間髪入れずに首を振った。

 どうせロクでもない罪状に決まっている。八割方想像はつくし、わざわざ聞くまでもないだろう。


 しばらく頭を抱えてしゃがみこんでいた月天丸は、やがて意を決したように立ち上がった。


「やはり……アレだな。貴様らにまともな自主性を期待する方が間違いだったな」

「月天丸?」

「いいか!」


 呼びかけた俺に対し、月天丸はびしりと指を差し向けてきた。


「仕事はこっちで用意してやる。貴様ら四人とも存分に働かせて額に汗する大事さをとくと分からせてやるから、明日また私の住処に来い。絶対だぞ。いいな?」


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