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その男、能力覇者につきっ!  作者: てんやもの
第一部 レーティア王立第一学園編
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第9話「シャルティア・デートリッヒ」



「新入生の皆さん、入学おめでとうございます。私はこのクラスを担当する『ライラック・マルディーニ』と言います。一年間よろしくお願いします」



 入学式が終わってすぐに教室へと移動するとホームルームが始まり、三十代前後の眼鏡男性教師の自己紹介を皮切りに生徒一人一人が自己紹介を行っていった。


 すると、その中に……、


「は、はじめまして。レーティア領エステファン村から来ましたエミリオ・エステファンと言います。よ、よろしくお願いしますっ!」


 緊張気味に挨拶をするエミリオ・エステファンがいた。どうやら同じクラスのようだ。


 その後、自己紹介が進む中、僕が知っている『ある男』がいた。


「どうも…………レーティア領レーティア王都出身のマルタ・ニコラスです。よろしくお願いします」


 マルタ・ニコラス…………一年前、僕が殴られ屋をやってたときの『得意先』の下級貴族。


 ルイがマルタに気付くとマルタもまたルイに気付いたらしく顔をニヤつかせていた。


 まるで……『面白いおもちゃ』を見つけたかのように。


 ちなみに、この学校の制服は右手の甲の部分の袖はカットされている。理由は、身分を示す『紋章』を他者から確認しやすいようにする為だ。建前上は校内では身分に関係なく友好を結ぶように、となっているが、実際は歴然とした『カースト』が存在する。そのわかりやすい一例がこの制服のデザインである。


 そう……世界は相も変わらず『身分制度』は絶対ということである。


 それから続々と座席順に自己紹介が進んでいく。


 一通り、自己紹介が進む中、気づいたのは奴隷民の数が極端に少ない事だった。


 一応、この学校の入学に関しては特に身分により入学許可が下りない、ということはないのだがエミリオの話だと奴隷民はほとんど入学しないという。理由としては、『躾奴隷』の場合、貴族の従者として暮らしているので余程のことが無い限り奴隷に学校に通わせることはないらしい。また、『自由奴隷』に関してはそもそも入学する為のお金と生活費が捻出できない為、学校へ通うという選択肢はほとんどない。


 僕に関して言えば、コウイチから学校へ通う為のお金を貰っていたのでこうして学校に通う事ができている。


 理由は…………学校へ通うことは今後のことに関してどうしても必要でだったからだ。


 そんな自己紹介が進む中、


「はじめまして……シャルティア・デートリッヒといいます。以後、お見知りおきを…………」


 自己紹介をした銀色の髪と瞳を宿した誰もが認めるであろう美少女が挨拶をすると一際、教室がざわついた。


「彼女が……デートリッヒ家……イグナス・デートリッヒ生徒会副会長の妹か。なんとも美しい…………」

「この方が『零氷天女フリージア・エンジェル』…………素敵」

「このクラスになれてよかった! 神様、ありがとうございますっ!!」


 どうやら彼女は有名人らしい。


 そんな、教室内が騒ぐ中、僕の目の前にいるその美少女が周囲の声に特に反応することなくスッと席に座ると、いよいよ最後である僕の自己紹介となった。


「はじめまして、ルイ・セルティエといいます! 自由奴隷ですが皆さん仲良くしてください。よろしくお願いします」


 僕が自己紹介をすると、今度はさっきの美少女とは異なったざわつきが始まった。


「じ、自由奴隷……だと! なんで自由奴隷がこんなとこにいるんだよっ!!」

「ウソでしょ?! どうしてこの学園に通うことができるのよっ!」

「それだけじゃねー……あれ、見ろよ……」


 教室は、さっきの美少女の挨拶よりも一層ざわつきが増していた。


 それもそのはず……ただでさえ、奴隷民が学校に通うことは珍しいのに僕の場合は……、


「「「「「黒髪に黒瞳…………まるで……『黒の勇者』」」」」」


『黒の勇者』の風貌のおかげで周囲から一層、悪目立ちをしていた。


「ちっ! なんで学校はこんな奴を入学させるんだよっ!!」

「本当だよっ! こんな奴、ただの不吉なだけじゃねーかっ!!」

「せっかく、シャルティア様と同じクラスになれたのに…………最悪っ!!」


 周囲の声は中々の辛辣な内容だった…………まあ、慣れてるけど。


「?!」


 気が付くと僕の前の席に座る、かの美少女……シャルティア・デートリッヒが少し驚いた表情でジーッと僕を見つめていた。


 若干、頬を紅色に染めながら……。


 皆が、そのシャルティアの様子を見てさらにザワザワとしていたが当の本人は気にすることなく、ずっとこちらを見続けている。これにはさすがに居心地が悪かったので……、


「あ、あの……すみません…………僕に……何か?」

「!?…………あ、い、いえっ! な、何でもありませんっ! 失礼しましたっ!!」


 そう言うと、彼女は周囲から見られていることにやっと気づくとさらに顔を赤くして前を向いた。


(?……なんだ、この人……??)


 僕は彼女の態度に心当たりは何もなかった…………となると、僕の風貌に反応した可能性が大いにある……となると、


(『黒の勇者』がらみの関係者……か?)


 確か、副会長のイグナス・デートリッヒの妹って言ってたな。


 そして、その兄である副会長のイグナス・デートリッヒも僕を見ていた。


 それに、エミリオの話だとデートリッヒ家は上級貴族で王族ともつながりのある格式高い貴族だとも言っていた…………そう考えるとやっぱり『黒の勇者がらみ』という事かもしれない…………気をつけよう。


 ルイは気を引き締め直した。



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