旅立つ日まで 4月6日
アンナリーナは、今朝は老薬師の遺した書物の数々を紐解いていた。
それは先ほど行ったギフト取得とステータスの鑑定が起因している。
「ギフト【探索】」
「そして、ステータスオープン」
今朝も見慣れたパネルが文字を写し出してくれる。
アンナリーナ 14才
職業 薬師、錬金術師、賢者の弟子
体力値 25
魔力値 28/32(ステータス鑑定に1使用、魔力倍増・継続に3使用、5日間魔力倍増を継続する)
ギフト(スキル) ギフト(贈り物)
[一日に一度、望むスキルとそれによって起きる事象を供与する]
調薬
鑑定
魔力倍増・継続 (5日間継続)
錬金術(調合、乾燥、粉砕、分離、抽出、時間促進)
探索
「わぁ!錬金術が生えてる!!
なにこれすごい!いっぱいスキルが派生してるぅ!!」
そして魔力値が32になり、ついに普通の、少し魔力が低い目の村人と同じくらいになった。
アンナリーナは感動しながらも、次にする事を考えていた。
彼女はこれまで、老薬師の結界が消えるギリギリの3日前までここにいて、薬師の知識で作成出来る回復薬やその他の薬を作り、それをアイテムバッグに貯蔵して細々とそれを売りながら移動しようとしていた。
だが、取得した錬金術のスキルで作ったポーションなどの高額な薬を売れば、ひと所に定住できるのではないかと考えたのだ。
「そうなると、村から王都に向かう大街道を移動するのはまずいかもね。
それよりも、何よりも、私に魔力がほとんどない事を知っていた薬師様は錬金薬の作り方を教えて下さらなかった……それにオメガ草はかなりの量ストックしてるけど白草石があまりないわね。
しょうがないわ。薬師様もまさか私が魔法を使うとは思ってもなかったでしょうし」
そうしてアンナリーナは、老薬師が書き遺していた調合のレシピや図鑑を見て、これから森に足を踏み出そうとしていた。
アンナリーナが森に採取に出るのはさほど珍しい話ではない。
だがそれは老薬師が存命だった頃のこと。
いくら結界がまだ生きているとはいえ、たった一人……不安でないはずはなかったのだが。
「おぉーっ!魔力ポーションの材料のイータ草がこんなに群生してる!!
どうせ戻って来ないんだから根こそぎ採るぞー」
魔獣の森のこの辺りは老薬師の結界で護られていて、それはこのへんには立ち入る者がいない、というわけで。
新たなスキル【探索】は、今までアンナリーナが知らなかったもの、把握していなかったものも、緑色で提示してくれる。
「まるでゲーム?のようだね。
素材はどれだけあっても困らないからどんどん行っちゃうよ〜」
軽口の割には慎重な手つきで採取していく。ハサミとナイフと移植コテを使い分けての手際はさすが長年の経験と言ったところか。
お目当ての白草石も10数個採れ、まずはやれやれといったところだがこの後、安定的に手に入れるのは難しそうだ。
「とりあえず、これでしばらくは行けるとして、行く行くはギルドに依頼したりする方が良いかもね」
少しずつだがこれからのことを考えるのは楽しい。
希少なギフトと魔力を得て、今初めてアンナリーナは “ 生きる ”という喜びを噛み締めていた。
「鑑定」
昨日鑑定出来なかった傷薬を鑑定して無事作成出来ていることを確認したのち、アンナリーナはイータ草の下ごしらえに移った。
今日のイータ草は花がついていて、この花びらはある希少な薬の材料の1つになる。
一枚一枚を丁寧に取りシャーレに入れていく、これは乾燥させずにアイテムバッグで保存するのだ。
「今日はラッキーだったね。
明日は試したいことがあるから、一日中調合にしようかな」
4/1 魔力値 1
同日夜 (推定)魔力値 2
4/2 (推定)魔力値 4
4/3 鑑定取得
4/4 魔力値 8
4/5 ① 魔力値16 魔力倍増・継続
4/6 ② 魔力値32 探索取得