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327『テラシォン公爵領の森』

 公爵家の面々から名残惜しまれて邸を後にしたアンナリーナは、今はゆったりと飛行していた。


「主人、ここまで離れたんだ。

 そろそろ転移してもいいんじゃないか?」


「うん、ちょっと森に入って、薬草の採取がしたいんだよね」


「なんだ、そうだったのか。

 まあ、急ぐ旅ではないからな……

 ついでにダンジョンにでも潜るか?」


「それもいいけど……同時に2つなんて、熊さんたちに無茶だって怒られないかな?」


「以前は俺らふたりで潜ってただろう?問題ないと思うが?」


 もう2年になる。

 最初は2人からだった。

 セトがアイデクセだった、初めて会ったあの頃。

 アンナリーナも今は17才になった。


「目をつけている森があるんだろう?

 誘導してくれ」


「うふふ、もうすぐそこだよ。

 今夜はそこで野営になるかな?」


「戻ってやればいいのに」


 セトは、テオドールやアラーニェがやきもきしているのを知っている。

 そしてアンナリーナもそれを知っていて無理を通している。


「夕餉だけでもあっちにいかないか?

 アラーニェに顔を見せてやれよ」


 今回の遠出は完全にイレギュラーだ。

 浮島と、テラシォン公爵の情報を掴んで、文字通りすっ飛んで来た。


『【劣化版アムリタ】で済むなんて安いものよ』


 アンナリーナはそう言って笑った。

 そして、あの場にあった浮島のほぼすべてをインベントリに収め、そして公爵家御用達の薬師の遺産……蔵書やレシピなどを持って帰ってきたのだ。


「今回は非常に実りある遠出だったわ。公爵家の領内にある、主な薬草類の繁殖場所も教えてもらったし、採取の許可ももらったのよ。

 いいこと尽くめだったわ」


「主人……俺はいいが他の連中はかなり肝を冷やしていると思うぞ」


「そうだね。

 でも、埋め合わせはできると思うよ」


 今回手に入れた浮島はその軌跡。

 セトは目を合わせずに頷いた。




 テラシォン公爵領にはいくつか大森林がある。

 今、アンナリーナたちはそのうちのひとつの森の上空で滞空していた。


「ここでは、さほど珍しくはないけど、私たちには未知の薬草がたくさん分布してるみたい」


 アンナリーナはテラシォン領のギルド発行の採取物分布地図を見ながら浮いていた。


「この森から続く山にも高地にしか見られない植物があるんだって。

 ここに図鑑があるから、ちょっと身を入れて採取してみましょ?」


 アンナリーナは、この大陸のレシピでポーションを作りたくてウズウズしている。


「……じゃあ、行くとするか」


 これは一晩では済まないかもしれない。それなりの量を求めるのなら、他に人手を連れてきてやっつけた方がいいかもしれない。


「うん、こんな風な採取は久しぶり。

 魔獣の森ではよく採取したけどね」


 セトは、アイデクセだった時の視界を思い出すと口角を上げた。

 瀕死のアイデクセから、今は竜種の最高ランク、ブラックドラゴンになった。

 これからも、小さな主人の傍らで、主人を守っていこうと胸に刻んだ。


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