320『【浮島】ゲットだよ!』
翌日、アンナリーナたちは早速【浮島】を手に入れるため、テラシォン公爵領北端へ向かっていた。
老公爵からは『好きな浮島を好きなだけ持っていっても良い』と許可されているため、アンナリーナは上機嫌で空の旅を楽しんでいた。
「主人、その【浮島】とやら、どうやって持って帰るつもりなのだ?」
実はセト、その浮島を引っ張って帰るのではないかと戦々恐々としていた。
「ん〜? ちょっと試してみたい事があるの。大丈夫だよ」
アンナリーナは至って呑気なものだ。
「おー! 見えてきた!見えてきた!!」
青い空に白い雲。
そしてその中にポツンと黒い点々……
「凄い、凄い!」
『前世で見た映画、アバ○ーみたいだよ!!素敵ー!!』
テンション上がりまくりである。
片やセトとしては、アバ○ーが何たるかよくわからないが、主人が喜んでいるので自身も気分が良い。
なので主人のために、ひとつひとつの浮島の周りを飛んで、選びやすいように協力する。
「あー、セトありがとう!
しかし大小様々なサイズの浮島があるね。
まずはなるべく大きなのがいいのだけど」
ここには最早 “ 島 ”とは言えないような大きさの浮島もある。
そのいくつかの周りを回って、そのひとつに地上に向かって流れ落ちる滝を見つけて、またアンナリーナは歓声を上げた。
「見て! 虹が出来てる」
その浮島はまるで箱庭のようだった。
詳しいメカニズムはわからないが水が湧き出て小川になり、それが浮島の縁から滝となって流れ落ちている。
全体に樹木が生い茂り、一部草原のようになっている場所もある。
1000m級の山々が連なり、崖や渓谷などもあって、中々起伏に富んだ地形をしている。
「動物は……いないみたいね。
鳥なんかも近づかないのかしら」
【探索】をかけてみたがヒットしない。
「決めた!!
まずはこの浮島をいただくわ!
【インベントリ】収納!」
普段はわざわざ口に出したりしないが、この【浮島】の質量は半端ではない。
アンナリーナはその膨大な魔力を練り上げ “ それ ”に触れた。
次の瞬間、信じられない事だが前世日本の四国ほどの面積を持つ……体積はそれ以上の浮島が一瞬で消え、アンナリーナの異空間収納【インベントリ】に収まった。収まってしまった。
「主人……?」
「おお! 成功したね!!
これで運搬に頭を悩ませないで済むよ。さて、あといくつ持って帰れるかな?」
いくら許可を得ているとはいえ、自重がなさすぎるのではないだろうか。
思わず冷汗が溢れ、セトは言葉もない。
「次はちょっと小さい目のがいいな」
アンナリーナはこのあと、目ぼしい浮島をすべてインベントリに収めると、上機嫌で公爵邸に戻っていった。
 




