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281『やっぱり入寮?』

 入学式はつつがなく終わり、新入生たちは各自の教室へと向かった。

 だがアンナリーナとネロはその範疇にない。

 職員に伴われて、2人はそのまま教授たちの居住区もかねている教授棟に向かっていた。



「実は今更なのだが、リーナ殿とネロ殿、誠に申し訳ないが当学院に在学中は入寮してもらいたいのだ」


 この学院の事務方のトップ、事務総長からの提案は本当に今更である。


「ええと、それなりの待遇をいただければ可能ですが、難しいのではないでしょうか?」


 向こうの学院でも最上級の個室を与えられたアンナリーナである。

 今回は従者を兼ねるネロもいて、女子寮に入寮するわけにはいかない。


「そちらの方は御心配なく。

 教授棟の方に高位者専用の、従者の控え室を備えたお部屋がありますので、リーナ殿とネロ殿にはそちらでお願いしたいと思います」


「私は自室に調薬室も必要ですし、厨房も然り。

 侍女の控え室も要ります。

 やはり、今の通り家から通った方が……」


「暫く、暫く。どうか暫く。

 そちらのご要望はなるべく叶えるように致しますので、なにとぞ」


 一体何があったのだろう。

 つい先日の入学前、最後の打ち合わせではこのような事、おくびにも出さなかったと言うのに。

 この後アンナリーナは押し切られるようにして、教授居住区に引っ越す事が決まったのだ。



「忙しないですわね。

 一体、どう思ってらっしゃるのかしら」


 女性の支度は衣にしても、身の回りの品に関しても手がかかるのが一般的だ。

 それもそれなりの地位の女性の支度が1日や2日で調うものではない。


「アラーニェ、ごめんなさいね」


 幸い男手はあるため家具などは人海戦術でなんとでもなるだろう。

 すでに頭の中で家具の選択を始めているアラーニェは眉間に皺を寄せている。


「お部屋はもう見学なさいましたか?

 転移陣はいかがでしょうか?」


 間取りだけを確かめて、転移陣は置いてきた。

 すぐに2人は学院の居住区に飛んで間取りを確かめて家具を配置していく。


「あちらの学院の女子寮よりも部屋数が多くて使い勝手が良さそうですわね」


 アラーニェの機嫌も治ってやれやれだ。

 この部屋は教授棟の女教授居住区にあり、すべての生活をここで行う教授たちのために、学生寮とは比べものにならないほど充実している。

 実際に、ここで一生を終えるものもいる、屋敷のミニチュア版なのだ。


 アンナリーナへの授業は基本、教授棟で行われる。

 例外的に生徒に混じって授業を受ける事もあるだろうが “ 重要人物 ”となってしまった彼女を一般の生徒と交じらせるわけにはいかない。

 そんな学院側の思惑を知ってか知らずにか、アンナリーナは今回もアラーニェと部屋を調える事を楽しんでいる。


「やはりリーナ様のお部屋ですもの。

 繊細な女性用の家具がよろしいですわ」


【異世界買物】の商品紹介を見ながら、アンティークの家具を選ぶ2人は、その値段には頓着しない。


「ペルシャ絨毯もいいけど、淡い色の段通も良いわね。

 ああっ、この花柄素敵!」


 少し燻んだクリーム色の地に淡い桃色や紫、翡翠色や緑色の花々が咲き乱れている。

 この段通を一目で気に入ったアンナリーナは迷わず購入した。


「飾り棚などは以前のお部屋で使っていたものをまた、お使いになりますか?」


 アンナリーナの居室は完璧に仕上げなくてはならない。

 アラーニェは使命感に燃えていた。


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