276『ヴェルーリヤ』
アンナリーナと新しい従魔の契約は滞りなく終わり、命名の儀も終わった。
今日から瑠璃竜の名は【ヴェルーリヤ】と言う。
そしてアンナリーナは彼女を連れて地上に降り、アラーニェを呼んだ。
「ヴェルーリヤ。
今日からあなたは、このアラーニェに付いて、私の従魔としてやってもらうことを学んでもらいます。
今までのように勝手気ままな生活を送れなくなりますが、良いですね?」
契約魔法で縛られているヴェルーリヤは、アンナリーナを無視して出奔することも出来ない。
今まで、そんな事は起きもしなかったが “ 命令無視 ”にはペナルティもあるのだ。
「はい、マスター。
貴方の力が流れ込んできて、繋がりを感じます。
これから、幾久しくよろしくお願いします」
アンナリーナの膨大な魔力に触れ、生物の本能の恐れにヴェルーリヤの動きが硬くなる。
萎縮する、体長30mの古代竜……シュールである。
「ではヴェルーリヤには、最初は【人化】のスキルを付与しましょう。
まずはあなたの、現在のステータスを見せてもらうわね。
【鑑定】」
ヴェルーリヤ(古代竜、雌)
体力値 8672
魔力値 6529
スキル
火魔法(火球、ファイアアロー)
氷魔法(氷球、アイスアロー、アイススピア、フリーズストーム)
水魔法(水球、ウォーターアロー、フラッド)
雷魔法(雷球、ライトニングアロー、サンダーボルト)
風魔法(ウインド、エアカッター、エアスラッシュ、ウインドアロー)
「なるほど……
長く生きているからステータスはそれなりだけど、ほとんど戦う事がなかったからスキルが発展してないのね。
わかったわ。
ヴェルーリヤ、私はあなたの主人として、あなたに力を授けます」
アンナリーナは、首を下げるヴェルーリヤの鼻先に触れて呟いた。
「【体力値供与】【魔力値供与】【スキル供与】人化、そして【鑑定】」
ヴェルーリヤ(古代竜、雌)
体力値 12569
魔力値 9836
スキル
火魔法(火球、ファイアアロー)
氷魔法(氷球、アイスアロー、アイススピア、フリーズストーム)
水魔法(水球、ウォーターアロー、フラッド)
雷魔法(雷球、ライトニングアロー、サンダーボルト)
風魔法(ウインド、エアカッター、エアスラッシュ、ウインドアロー)
人化
アンナリーナは満足そうに頷いている。
その傍らのアラーニェは、その視界にしっかりとドラゴンを捉えていた。
そしてヴェルーリヤ本人は、自身の中にある良質な魔力に戸惑いすら隠せないでいた。
「さあヴェルーリヤ、人化して見せて」
ふわりと魔力を含んだ風が渦巻き、巨大なドラゴンを包み込んだ。
「おお! いつになく派手だね」
旋風が収束していくのと同時に、段々と小さくなっていったヴェルーリヤは、もうすでにドラゴンの姿をとっていない。
瑠璃色の旋風がすべて収まった時、その場には嫋やかな女性が立っていた。
彼女はその特徴的な色を纏っていて、真っ白な肌は文字通り透き通るように白く、髪と瞳は宝玉のような瑠璃色で、見惚れてしまうような美女だ。
アラーニェよりはいくらか年嵩で落ち着いた雰囲気がある。
「ようこそ、私たちの元へ。
今日から家族になるのよ」
 




