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263『戻ってきた日常』

「今回は不可抗力だったとはいえ、肝を冷やした。

 こういう時の対策も、これからはちゃんとしておいた方がいい」


 ひとしきりの抱擁から解放され、アンナリーナを中心として今、食卓についている。

 置き去りになっていたスレイプニルはテントと共に回収してきた。

 彼らは改めて従魔契約をしてツリーハウスの住人となる。

 宿の厩舎にいるジャバハも同じように【家族】にするつもりだ。


「魔法は使えなくても魔導具は使えたの。

 結界石を始め、魔導コンロや魔導ランタン……これからはもしもの時のために鑑定の出来る魔導具や魔石を使った拡張テントも用意したいわね」


「では早速用意しましょう」


 今回、どれほど後悔したかわからないネロが、打てば響くような返事をよこした。

 ……ネロ。

 アンナリーナが飛ばされた現場にいて、深い深い悔恨の淵に嵌り込んでいた男。

 激情と冷静さを計りにかけて、あの時アンナリーナを追って飛び込まなかった事を褒めてやりたい。

 彼がギリギリ思いとどまった事で、テオドールたちは彼女に何があったか知ることができたし、精霊王から詳しい場所を聞くまでに捜索の準備を整える事が出来た。

 なにしろ同じトラップとはいえ同じ場所に転移させられるかどうかわからないのだ。

 もし、あの時そういう事になっていたら捜索の労力は倍になっていただろう。


「しかし転移トラップに、魔素のない地域と、なんでもありだな」


 テオドールが呆れている。


「ステータスが見れないのが地味に痛かったね。

 まあ、望んで行きたい場所ではないね」


「それよりもこれからだが」



 アンナリーナは今ダンジョンの序層……第2階層をご機嫌で【飛行】している。

 第1階層はお約束の準備スペース。

 ここではこのダンジョンに挑戦するパーティたちが最後の打ち合わせを行っている。

 その横をアンナリーナはひとりで【飛行】を使って通り過ぎていく。

 一応、このダンジョンの地図をマップに取り込み、ヘッドアップディスプレイに投影して先を急いでいた。


 昨夜の話し合いの結果、テオドールたちは正規の手続きをして迷宮都市に入る方が良いだろうという事になった。

 そしてその準備期間の1日。

 その間にダンジョンに潜る事を決心した。


「滞在する家族も増える事だし、お金はいくらあってもいいものね」


 ダンジョンの素材をギルドで売る。

 冒険者として真っ当な活動である。

 そのためアンナリーナは、それなりの価格のつく魔獣の出没する、上層後半からできれば中層まで行きたいと思っている。




「なぁ、今通り過ぎていったのって女の子だったよなあ?」


 彼らはこの迷宮都市を本拠地とする冒険者パーティ【金色の戦盾】の面々。

 今いるのはこのダンジョンの上層中盤第58階層である。


「ソロか? あんなちっさい子が?」


「1人じゃありませんよ。

 彼女の傍には精霊の気配がありました」


 パーティの女性魔術師が言う。


「それに見かけで判断しないで下さい」


 この世界、エルフやドワーフは年齢不詳なものも多い。

 アンナリーナもそう思われたのだろう。


「見慣れない子だったけど、新人さんかな」


【金色の戦盾】最年少の彼は興味津々である。


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