29『情報収集と【位置特定】』
「ぎゃああぁぁっ! 変態!」
手を振りほどくと後退ったアンナリーナは、背負い袋を持ち上げると一目散に駆け出した。
恐るべし、その逃げ足。
【飛行】は使用していないが、常時発現スキルの【身体力向上】で、並みの男なら追いつけないほどのスピードで走っている。
「うん、あれなら魔獣が現れても逃げ切れるんじゃないの?
さあさあ、隊長。呆けてないでさっさと立って下さいよ。
それと、あんな小さい子にプロポーズなんかしたら、そりゃあ逃げられるっすよ?」
実はこのグレイストという男。
無類の、かわいいものと甘いもの好き……という人物。
その大好きなものが両方合わさったリーナという女の子を放っておけるはずがない。
思わず求婚してしまったが、本人は至って本気だ。
「絶対怖がられるっすよ?
もう、1人で近づいたらダメっす。
次は俺が一緒の時じゃないと話しかけたらダメっすよ」
グレイストはガックリしていたが、アンナリーナの方は恐怖のあまり門から街道に飛び出していた。
「危ない、危ないよ!
やっぱり人間は危ないよ!
もう、この村には近づかない方がいいかな」
ずいぶんな誤解である。
危ない人間はグレイストだけなのだが、アンナリーナの中でエイケナール自体が悪の巣窟認定されてしまった。
そのまま走り続けて、森の中に飛び込み、多少拓けた場所を見つけてツリーハウスを出す。
「ナビ……どうしようか?
もう、あの村に寄らずに街道沿いを飛んで行った方がいいかなぁ?」
「そうですね。
情報を仕入れたいところですが、主人様がお嫌ならそうなさった方が良いかもしれませんね」
「ああ、もう。面倒臭い」
ツリーハウスの中に入ったアンナリーナは投げやりな仕草で背負い袋を放り出した。
ローブの内ポケットからセトを取り出して、それからローブもソファの背もたれに投げる。
冒険用のしっかりとしたブーツも脱いで室内履きに履き替え、ソファに腰を下ろした。
そしてステータスからマップを呼び出してこのあたりの地図を出す。
「大雑把に街道沿いに村や町が記されてるだけか……自分で行ってみてUPしていくんだね」
そうして、指で道を辿ってみていて、ふと気がついた。
「この道、どこ行くんだろ」
パッと表示が変わり、道の突き当たりに【デラガルサ鉱山】と出た。
「おお、便利!
……なるほど、この鉱山があるから、この村までは乗り合い馬車が来てるんだ。
この先は鉱山の方に行っちゃうから、モロッタイヤ村に来ないのね」
たった、徒歩で3日の距離だが乗り合い馬車が来ないばかりに寂れた村。
だが、辺境の一番端っこの村は牧歌的で過ごしやすい場所だった。
「うん、あの村は変わらない方がいいね。今は多少不便かもしれないけど、また行商人さんが来るようになったら元どおりになるもんね」
呟きながら【デラガルサ鉱山】のあたりを見ていると、そこに小さく(ダンジョン化)と書かれている事に気づいた。
それが赤く点滅している。
「主人様、これはつい最近ダンジョン化したようですね」
「それって、拙くない?」
「それは主人様の考え方次第ですね。
もし、お金儲けをお望みならこんな機会はそうそうあるものではございませんし、関わりたくないのならトンズラあるのみ、です」
「私としては後案かな。
でもやっぱり情報が欲しいから……1度戻るよ。
あいつのいない時を見計らってね」
「そうですね。わかりました」
「ねえ、ナビ。
ちょっと思いついたんだけど、特定の個人とか物とか、その位置を確認出来るスキルってないかな?」
「【位置特定】でしょうか。
そのままですね」
アンナリーナはナビと共に笑った。
これからの事に、暗雲垂れ込める事態を笑い飛ばして、そして動き出す。
「ギフト【位置特定】
そして、ステータスオープン」
アンナリーナ 14才
職業 薬師、錬金術師、賢者の弟子
体力値 102400
魔力値 34843571040055/34843571040256
(ステータス鑑定に1使用、位置特定に200使用)
ギフト(スキル) ギフト(贈り物)
[一日に一度、望むスキルとそれによって起きる事象を供与する]
調薬
鑑定
魔力倍増・継続 (12日間継続)
錬金術(調合、乾燥、粉砕、分離、抽出、時間促進)
探索(探求、探究)
水魔法(ウォーター、水球、ウォーターカッター)
生活魔法(ライト、洗浄、修理、ファイア、料理、血抜き、発酵)
隠形(透明化、気配掩蔽、気配察知、危機察知、索敵)
飛行(空中浮遊、空中停止)
加温(沸騰)
治癒(体力回復、魔力回復、解毒、麻痺解除、状態異常回復、石化解除)
風魔法(ウインド、エアカッター、エアスラッシュ、ウインドアロー、トルネード、サファケイト)
冷凍(凍結乾燥粉砕)
時間魔法(時間短縮、時間停止、成長促進、熟成)
体力値倍増・継続(12日間継続)
撹拌
圧縮
結界
異空間収納(インベントリ、時間経過無し、収納無限、インデックス)
凝血
遠見
夜目
解析
魔法陣
マップ
裁縫
編み物
刺繍
ボビンレース
検索
隠蔽(偽造)
従魔術
体力値供与
細工
再構築
無詠唱
悪意察知
魔力値供与
空間魔法(転移)
異世界買物
位置特定
「取得は出来たけど、どうなのかね。
これ……
対象を思い浮かべるだけでマッピングされるのかしら……それとも触れるとかして紐付き?にする?」
アンナリーナは、ものすごく嫌だが、あの変態男グレイストの顔を思い浮かべた。
「うえぇ……
【位置特定】確認グレイスト。
あ……」
どうやら前者のようだ。
わざわざ触れに行かなくて良かったがアンナリーナは複雑だ。
げんなりしている。
「あのおっさん、今はまだ門にいるみたい」
先にセトへの供与を済ませる事にする。
その後は……気晴らしの買い物だ。
「【体力値供与】【魔力値供与】
そして【鑑定】」
セト(アイデクセ、雄)
体力値 1800
魔力値 190




