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旅立つ日まで 4月5日

 翌朝、日の出早々に起き出してきたアンナリーナは今、例の紙を前にして硬い表情を崩さなかった。

 両手を組んで握りしめ、机の上に置く。

 そしていつものように唱えた。


「ギフト【魔力倍増・継続】」


 ゴクリと息を飲んでいつものように言う。


「ステータスオープン」


 自分以外不可視のパネルが現れ、アンナリーナはその文字を追う。



 アンナリーナ 14才

 職業 薬師

 

 体力値 25

 魔力値 12/16(ステータス鑑定に1使用、魔力倍増・継続に3使用、5日間魔力倍増を継続する)


 ギフト(スキル) ギフト(贈り物)

  [一日に一度、望むスキルとそれによって起きる事象を供与する

 調薬

 鑑定

 魔力倍増・継続 (5日間継続)



 アンナリーナは言葉も出ない。

 もしかしたら、と思って試してみた【魔力倍増・継続】それが予想通りの仕事をしてくれた。

 これで5日ごとに【魔力倍増・継続】を唱え、それ以外は違うスキルを取得することが出来る。


 すこぶる機嫌の良いアンナリーナ。

 今日は、今まで試してみたかった調薬のスキルを使ってポーション作りに挑戦してみようと思う。



 薬師が作る代表的なものとして【回復薬】があるが、この世界には2種類の回復系の薬がある。

 それは、普通【回復薬】と呼ばれるものと【ポーション】と呼ばれるものだ。

 回復薬の方は町の薬師などある程度知識のあるものなら作れるが、ポーションは違う。

 基本的な材料は変わらないのだが、ポーションには融和剤と言うものが必要で、それを作成するには魔力を必要とする。

 だがアンナリーナは今まで魔力を動かす事が出来なかったので、手順は知っているが製造した事がなかったのだ。


「まず、上水を用意する……」


 これはこのツリーハウスの上水道……ポンプで汲み上げた水を沸騰させ、冷ましたものだ。


「1ℓの上水に白草石(ある鳥系魔獣の魔核)のすり潰した粉1gを混ぜながら魔力を注ぐ……魔力量10……っと」


 しばらく掻き回して溶けたことを確認する。


「そして【鑑定】」


 浮き上がったパネルには


【融和剤】と出た。


「ふぅ……初めての魔力を使った調合……これで私も錬金術師の仲間入りかな?」


 薬を作る職業は3つある。

 1つは薬師。2つ目は魔力を使い薬を作る錬金術師、3つ目はこの2つの上位職、賢者。

 亡くなった老薬師は実は賢者であって、アンナリーナは正確には賢者の弟子という身分になる。


「さて、集中して仕上げてしまわなきゃ」


 大量に乾燥させてある通称薬草……正式名オメガ草。

 それを葉だけちぎり、なるべく太い葉脈も取り去る。

 それを指で揉んである程度細かくし、乳鉢で細かく擦っていく。

 これもただ力任せに擦ればいいのではない。

 熱を持たせないように丁寧にゆっくりと擦っていく。


「つくづく自分が短気じゃなくてよかったと思うね」


 擦り上がった粉末を、ポーション5本分25g、天秤ばかりで計り、鍋に1ℓの上水と共に入れゆっくりと熱していく。

 沸騰させないようにかき混ぜながら数分、鍋の縁に細かい気泡が付き出すと様子を見て火を止める。

 これに融和剤を50㎖、ピペットできっちりと計って加え、薄い緑が濃く変わるとあとはしばらく粗熱を取る。

 そのあと目の細かい布で濾して出来上がり。

 この時、決して搾ってはいけない。

 この時に出来る、濾したあとの粉はもう少し水分を飛ばしてさらに細かく擦り、熊の脂と混ぜて傷薬にする。


「さぁて、そろそろいいかな?」


 5本用意した瓶に漏斗を使って均等に注いでいく。


「【鑑定】」



 体力(HP)ポーションC

 回復量500HP+5%


「わぁ!付加価値もついた!」


 はしゃぎたいのを我慢して、用意していたラベルに手書きで【体力ポーションC】と書き入れ、貼っていく。


「はい!出来上がり!」


 ついでに、今のポーションの残りカス……と言っては何だが、いい具合に水分が抜けたので、乳鉢で丁寧にクリーム状になるまで擦る。

 途中でヤロウという抗菌・殺菌作用のあるハーブを入れて全体を計り、その重量の3倍の熊の脂を入れ、また練る。

 十分に混ざったら綺麗に洗った二枚貝の殻にスプーン2杯分入れ、蓋をして細く切った紙を巻いて貼り付け……出来上がり。

 今日はもう魔力が残っていないので鑑定は明日だ。


「あぁ〜疲れた」


 アンナリーナは伸びをして身体をほぐした。



 ギフト授与当日4/1 魔力値 1

 同日夜 (推定)魔力値 2

 翌日 4/2(推定)魔力値 4

  4/3 鑑定取得

  4/4 魔力値 8

  4/5 ① 魔力値16


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