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2 『森の恵み?』

 魔狼は森狼の上位種で、大きさは地球のサイほどもある。

 その毛皮は高価で取り引きされ、一番上等な冬毛ほどではないが、生え変わりの終わった今の毛皮もそこそこな値段で買い取ってもらえる。

 後は爪や牙。

 何しろ本体が大きいのだ。

 細工物用の上質な素材としての需要があった。


 アンナリーナにかかっては、如何な魔狼でも相手にもならない。

 オークの向かった同じ方向に追い込みながら【血抜き】を使って倒していく。


「もう、このくらいでいいかな?」


 思ったよりも大きな群れだった。

 そしてその群れを率いていたのは変異種の、象ほどもある青みがかった銀色の魔狼だった。

 この個体も【血抜き】で屠り、傷一つ付けていない。


「ふひひ……これは高く売れそうだよ」


 そして群れのリーダーを失った魔狼たちは、アンナリーナの誘導の通り進んでくれた。

 この後のことは、アンナリーナは関知していない。

 踵を返し、森の奥に向かって飛び去った彼女は、ずいぶん経ってから森の上空にまで上がって村の方向を見てみた。

 そこには炎を伴う煙がもくもくと立ち昇っていただけ。

 この後、アンナリーナはもう二度とあの村に関わる事はなかった。



 出発から3日間、途切れる事ない森の中をアンナリーナはそれでも着々と進んでいた。

 防御と鑑定と隠形、そして探索をかけて飛行していく。

 そうしながらも採取と美味しい獲物の狩りは忘れない。

 一に安全、二に採集と、あくまでもブレないのはアンナリーナらしいと言えるだろう。

 別に急ぐ旅ではない。

 普通の人間は、かなりの高レベルの冒険者でもない限り魔獣の森には立ち入らない。

 そんなところを1人でふらふらと飛行し、結界付きのツリーハウスとはいえ野営する。

 どこまでも非常識なアンナリーナだったのだが。

 そう言えば今朝、こんな事があった。

 アンナリーナが出発しようとツリーハウスの扉を開けたところ、目には見えない結界に凭れかかるように、ざっと20頭ほどの森猪が山積みになっていた。


「何、これ?」


 そろりそろりと近づいて行って、鑑定をかけてみるとすべてが【森猪(死)】と表示される。

 どうやらアンナリーナが眠っている間に森猪たちが結界に突進したようだ。

 その衝撃で命を落としたようだが、もしこんな狩りが通用するならチョロすぎる。

 アンナリーナはホクホク顔だ。

 何しろこの森猪は非常に美味で、老薬師も大好物だった。


「こんな狩り?の仕方もあるんだね!」


 ツリーハウスと森猪をインベントリに収納して、今日の旅が始まった。




「ギフト【魔法陣】」


「ステータスオープン」



 アンナリーナ 14才

 職業 薬師、錬金術師、賢者の弟子

 

 体力値 3200(⑦)

 魔力値 33554331/33554432

(ステータス鑑定に1使用、魔法陣に100使用)


 ギフト(スキル) ギフト(贈り物)

  [一日に一度、望むスキルとそれによって起きる事象を供与する]

 調薬

 鑑定

 魔力倍増・継続 (12日間継続)

 錬金術(調合、乾燥、粉砕、分離、抽出、時間促進)

 探索(探求、探究)

 水魔法(ウォーター、水球、ウォーターカッター)

 生活魔法(ライト、洗浄(クリーン)修理(リペア)、ファイア、料理、血抜き、発酵)

 隠形(透明化、気配掩蔽、気配察知、危機察知、索敵)

 飛行(空中浮遊、空中停止)

 加温(沸騰)

 治癒(体力回復、魔力回復、解毒、麻痺解除、状態異常回復、石化解除)

 風魔法(ウインド、エアカッター、エアスラッシュ、ウインドアロー、トルネード、サファケイト)

 冷凍(凍結乾燥粉砕(フリーズドライ))

 時間魔法(時間短縮、時間停止、成長促進、熟成)

 体力値倍増・継続(12日間継続)

 撹拌

 圧縮

 結界

 異空間収納(インベントリ、時間経過無し、収納無限、インデックス)

 凝血

 遠見

 夜目

 解析(スキャン)

 魔法陣



 魔獣の森はずっと平坦ではない。

 大して標高が高いわけではないが山が連なり、そこを源流として川も流れていた。


「迷った?」


 アンナリーナは今、地図を片手に樹上で浮遊していた。

 四方八方、どこを見回しても森、森、山、森……


「これはちょっと……

 明日の朝、新しいギフトを取るまで、迂闊に動き回らない方がいいみたい」


 今日は早々にツリーハウスを出す場所を探して、腰を落ちつける事にする。

 そう決心したアンナリーナは、高度を落として森の中に戻っていく。

 まずは山間部に向かって、探索、鑑定をかけながらゆっくりと飛んでいった。

 ここはアンナリーナがいた森の外れより標高が高いからか、それとも魔気が濃いのか植生が違う。

 地球で言う【針葉樹】に似た木々が生い茂り、心なしか少々気温が低く感じる。


「お!? やっぱりあった!」


 アンナリーナが探していたのは、庵のあたりでは秋にしか取れない、その香りと旨味は他のものの追随を許さない、キノコの中のキノコ【香旨茸】だ。

 このキノコは地中にあり、見つけるのは難しいのだがアンナリーナにはスキルがある。

 ただ視界の中の現れる緑の点を探すだけなのだから簡単だ。


 このあと森の中では、喜びの奇声をあげるアンナリーナの姿を遠巻きに見る獣たちの姿があった。


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