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プロローグ 4月1日

 

 ガツンと殴られたような衝撃とまばゆい光。

 そしてそれに続く映像と音、雑多な情報の奔流が彼女を襲った。

 少女の小さな身体が一瞬、硬直する。

 と、それは始まった時と同じように瞬時に終わりをつげ、少女の意識は覚醒した。






 アンナリーナの住む村は辺境だが教会や冒険者ギルドの支所もある、それなりの規模の村だった。

 それはこの村が魔獣の森に隣接しているに他ならない。

 そしてこの村で彼女は、有り体に言えば酷い扱いを受けていた。


 この世界には魔獣がいて、魔法がある。

 人は生まれた時から魔力を持っていて、それが高ければ高いほど尊重される。

 正式に魔力を測るのは14才の準成人の儀の時だがそれまでに子供たちは魔法を使い始める為、漠然とその子の能力を見て取れる。

 そして、このころから子供たちの間で序列が出来てしまうのだが、アンナリーナはその最底辺にいた。



 彼女は魔法が発動しない。


 最下位階で、魔力値1を消費する生活魔法【ウォーター】すら発動しないアンナリーナは自然と家の中でも疎まれ、出来損ない扱いされた。

 小さな頃は普通に暮らしていたが、6〜7才になると子供たちは魔法を使い始める。

 そんな中、いつまでたっても発露しない〈役立たず〉の彼女は家族にも、村人からも暴行を受けることになる。

 そんな彼女が殺されたり売られたりしないわけは、森に隠遁する遠縁の薬師が、自分と村人との仲立ちに選んだことに他ならない。

 アンナリーナは薬師の弟子という立ち位置にいたので、今まで害されることはなかった。

 だが、それも終わる。



 5日前、薬師の老婆が死んだ。

 老婆は一年前から自らの死を予見し、アンナリーナに薬師としての知識を教え込み、同時に森の恵みである果実でジャムなど保存食を作らせた。

 これは魔法を扱うことの出来ない弟子への最後の教えであり憐情だった。




 この大陸では14才の準成人(成人は15才)を迎えたのちの4の月に教会にて【ギフト】と呼ばれるスキルを授与されるイベントがある。

 その日、アンナリーナも同じ年に生まれた3人の少年少女たちと教会を訪れていた。

 一応姉のお古ではあるが晴れ着を着ていたのは思いがけないギフトが生えるかもしれないとの打算からだ。

 そしてギフトの授与が始まる。

 一人目の少年アントン。彼はこの村のガキ大将で、体格も良く乱暴者。見た目の通りに【戦士】のギフトが生えた。

 ステータス値も体力が多く、すでに剣術を習っている彼は大成するだろう。

 次は村でも裕福な家庭の娘ナタリア。

 アッシュピンクの髪に紫の瞳。誰からも愛される彼女は実は裏では弱い者虐めが大好きで、アンナリーナなどはその対象の筆頭。大人に嘘をつき、アンナリーナに罪をなすりつけたのも一度や二度ではない。

 その彼女には【魔術】が生えた。

 体力、魔力ともに高い彼女には魔術士の素質がある。

 もう一人の少年マリウスには【識字・計算】が生えた。これは商いをする者には必須で、彼は商人の元に奉公に出されるだろう。

 この三人はそれぞれ、一般的に人気があり、価値のあるギフトを手に入れたと言える。その場合、親から多額のお布施が納められることが多い。それゆえ神官は上機嫌であった。


 そして最後にアンナリーナの順番となった。

 ギフトを授与される祭壇の前の椅子に座り、形だけ祈りを捧げる……

 教えられた通りの作法で手を組んだ。

 その瞬間、頭痛と眩い光に続き情報の奔流に翻弄され、それは始まりと同じように突然終わった。


「魔力値1? なんだ、このギフトは?!」


「神官様、一体……」


「ギフトが【ギフト(贈り物)】とは、何なんだ!」


 神官と両親のやり取りの中でアンナリーナは呆然としていた。


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