無言
集落を目指すもだんだん、足取りが重くなってきた。
疲れがでてきただけではない。
残していったもの、託された命、これからしなければいけないこと。
彼がいっていた言葉が頭をよぎる。
「……なあ、リト。こんな大戦いつか、いつか終わるよな?」
問われたリトは無言のまま、空を眺めた。
あの時、俺はなんか言ってやればよかったのだろうか?
『明けない夜はない』と。
集落の門を開けると。
「お帰りなさい、ジースさんは?」
リトとスミスは黙ってその場を後にした。
門番は黙って息を呑んで、何かをこらえるように、リト達に向かってぼそぼそと告げた。
「お疲れ、さまでした」
門を抜けた先の洞窟は、広々とした空間が広がっている。
そこには、3000人に近い人々が暮らしている。
リトはスミスと別れ、木を組んだ階段を上がった。
階段を上がると、大きな広場があり、こちらに気づき、一人の少女がこちらに走ってきた。
白い髪と青い瞳は、輝きに煌めいている。
リトに前にきた少女が叫んだ。
「おっそ〜い、私、結構心配したのよ」
「悪い姉さん、これでも急いだんだ」
素っ気なく言ったリトが地面に腰を落としたとき、広場の端から声が上がった。
「パパ」
リトが声の方に振り向くと、幼い少女が駆け寄ってきた。
「リトのお兄さん、パパは!?」
リトは答えられなかった。
茶色い瞳がよく似ている、ジースさんの娘。
いつもどうりの声で、リトは言った
「カレン、パパはもう帰ってこない」
少女は言葉が理解できなかったのか、まだこちらを向いている。
だか、リトが無言のままでいると、少女はゆっくりとリトに言った。
「必ず帰るって! パパは必ず帰ってくる、だからいい子でいてとパパは言ったよ、だからわたし、いい子でいたのに…… どうしてパパは帰ってこないの!?」
「……ジースさんは死んだからだ」
「嘘つき、パパは必ず帰ってくるって言ったもん!」
少女の絶叫が洞窟内に響いた。
「ジースは約束を守ろうとしていた、だか敵と遭遇し、ジースさんが囮になった、彼のおかげで僕は生きている。」
「そんなの知らない!」
ああ、彼女は正しい、そうリトは思った。
誰を守って、何の為には死んでも、彼女は知ったこおもない。
鋭い声が、飛んできた。
「リトが死ねばよかったのに」
若い女の声、ジースの妻、彼女の母がいつのまにかここにいて、リトの顔を睨んでいた。
リトはとっさに胸に触れ
大丈夫だ、問題ないはずだ、こんなことは慣れているはずた、なのに……
なぜこんなにも胸がいたいのだろう。