生き延びる為
かつて、太陽は白い炎が輝いていた。
種族同士の『大戦』で大地は傷つき、空は赤く染まったと伝えられている。
その赤い色が示すもの、この星の悲鳴なのかもしれない……。
スミスは空を見上げ、山の向こうにある、碧い光で煌めく灰を見つめていた。
その碧い光は、本来人間には見えない光だと言われている。
空がそこだけ赤くないのはわからないが、本来の空というのは、赤ではなく青白いのだとか……。
「スミス。とうとう頭がおかしくなったのか?」
仲間の声で我に返り、大きく深呼吸をし、二人の仲間を見やった。
さっき話しかけて来たのが、ジース
自分よりも随分と若い青年である。
「休憩はすんだか?」
そう言った、先頭にいる、我らのリーダー(リト)に目を向けた。
我々の中で最も若い少年の表情はゴーグル越しに、闇のように何も映さない瞳が見えた。
「覚悟しといてくれ。この先からは何が起こるかはわからない。」
岩陰を縫うように走った。
食事もせず、睡眠もせず、ここまできたのは『敵』に見つからない為、どの種族の中でも最も弱い我々人間が生き延びる為。
そしてここに来る為。
スミスは黙って崖の下を見下ろす。
そこにあったのは、巨大なクレーターだった。