幸せの青い鳥
幸せの青い鳥は 世界のどこかをたったひとりでとんでいる
彼を探すひとには 彼をみつけることはできない
傷つき 悩み たったひとりで苦しんでいるひとのもとへ
あるひ ふわりと舞い降りる
幸せの青い鳥の青いはねには 小さな願いごとをかなえる力がある
大きな願いごとはかなわないけど ほんの些細な幸せをはこぶ力がある
あるひとは その日の暖かい夕食を
あるひとは 小さな恋のきっかけを
またあるひとは 失ったはずの一瞬の笑顔を
ちいさな青い鳥のちいさな青い羽は ちいさな願いごとを叶えるとまっくろになった
幸せの青い鳥は 願いごとを叶えるとまたすぐにとびたってしまう
彼は渡り鳥で 彼との出会いを待つひとたちがたくさんいるから
願いをかなえたひとたちは 笑い 喜び 幸せに彼を見送った
別れをおしむひとはいなかった
幸せの青い鳥は たくさんのひとの願いを叶えた
彼の羽はもうまっくろだった
たったいちまい 残った青い羽を ひとりの少女にくわえてあげた
少女は願った 「黒い翼のちいさな鳥が もうどこにも行きませんように」
幸せの青い鳥は 幸せな黒い鳥になった
時がたち 幸せな黒い鳥には 小さな黒い羽根のこどもができていた
あるひ 小さな黒い羽根のこどもが 小さな青い羽根を咥えてもってきた
どこにあったんだい? と聞くと 幸せそうなひとにもらったんだ と言った
つぎのひも つぎのひも 黒い羽のこどもはたくさんの青い羽をもってきた
黒い羽のこどもは 青い羽のこどもになった
青い羽の鳥は 大空にとびたちたい と言った
黒い羽の鳥は それはとても辛いみちだよ と言った
でも そう言った黒い羽の鳥は うれしそうに笑っていた
幸せの青い鳥は 大空たかくとびたった
傷つき 悩み たったひとりで苦しんでいるひとのもとへ
あるひ ふわりと舞い降りる
人に優しくすることは 見返りを求めることじゃない
俺ばっかり損してる
それを笑って言えるなら 幸せの青い鳥はやってくる