2.鼬柳神社
「ありがとうございました!」
気持ちのいいお礼を聞きながら俺はコンビニを出た。
右手には手には先ほど購入したおにぎりとパンを数個と、コーラ、ポテチが入ってる袋を握っている。
さて、まだ時間はあるし補習対策に勉強でもしようか
左手をポケットに突っ込みながら、さっきのお釣りを弄びながらそんなことを考えて、行きとは違う道を使い学校に向かっていたが、ふとある建物を見つけた。
「………神社?」
2 . 鼬柳神社
そう、決して大きくはないが鳥居があり、狛犬らしき像もある。 神社と言って問題ないだろう。いや、これは狛犬じゃなくて ……なんだこれ? 猫みたいな像だが、目が不気味だ。 形容するなら死んだ魚のような目、 とでも言うべきか
知らなくて別に不思議なことはない。普段わざわざこんなところには来ないし、神社なんぞ帰りに遊びに寄るようなスポットでもない。
だがその神社になんとなく惹かれた俺は、鳥居を潜り中へと進んでいった。
中は特に取り立てて言うような特徴はなかった。 おみくじや絵馬を売ってる所はないが、賽銭箱や、その上の名前をなんていうかは知らないがガランガランするでっかい鈴とかはある。小さな神社、という印象だ。
折角中に入ったんだしなんかお参りをするか、と考えた俺はポケットの中からさっきのお釣りを取り出した。 100円玉が一枚と他の小銭がいろいろ握られている。 少し勿体ないと思ったが、ここでケチをするべきではないと考えた俺はその小銭を賽銭箱に思い切り放り投げた。
「どうか俺を、進級させてください!」
パンッ! と手を合わせ、大声でそう言い放った俺は目を開けた。 まあ、特に他にお参りをする事も無かったので適当に言ったが、果たしてご利益はあるのだろうか。
なんて他力本願甚だしい事を考えながら俺は学校へと向かった。
「おっす、遅かったな どこまで行ってたんだ?」
学校へ戻ると、暇潰しにスマホを弄っていた近山にそう聞かれる。 もっとも我が校は進学校なだけあってスマホ禁止である。 その為筆箱の中にスマホを突っ込んで横目で弄るという、はたからみたら不自然極まりない格好で弄っていた。
「駅のコンビニ今改装中だろ? 遠くのほうまで行ってたんだよ」
「あーそうだったな。 俺も朝あそこで茶買おうと思って買えなかったわ」
「そうそう、 それでさーあっちのコンビニの方に神社あんの知ってたか?」
そう言って俺はさっきの神社のことを話した。
「願い事が進級願ってのはお前らしいな」
近山はハハハと笑うと、ふと思い出したようにこんな話をしてきた。
「なあ江原よ。 もしかしてその神社って、招き猫の像が無かったか? こう、2体」
これはあの狛犬のような像のことを言っているのだろう。
「ああ、あったぞ。 なんかちょっと不気味だったけどな」
笑いながらそう言うと、近山は筆箱の中からスマホを取り出しポッケに突っ込み、その後人差し指を立ててこう続けてきた。
「あの神社にはちょっとした言い伝えがあるらしいぜ」
ああこれは面白い まさか俺がなんとなしに入った神社がそんな大層なところだったとは
そんな事を考えながら苦笑すると、近山は少しムッとした顔をした。
「俺だって何も大真面目にこんな事信じてるわけじゃないさ。 ただちょっと面白いとは思わないか?」
確かに 能力を授けるだとか何だとかの話を信じるわけではないが、そういう話を聞くとそそられるのは男としての性だろう。
だが、今はそれよりも大事なことがあるのも確かだ。
「とりあえず、そろそろ来ヶ谷センセーのとこ向かいますか」
俺はそう言って伸びをしながら立ち上がり、教室の前に掛かっている時計に目をやった。
時刻は3時5分を指している。 そろそろ職員会議も終わっただろう。