第2話ー暗闇の森と凍土の湖ー
吹雪の丘を乗り越えた4人を次に待ち受けていたのは、それはそれは大きな森でした。
4人はゴクリと息をのんだ後、恐る恐る森を進み始めます。
「ね、ねぇ。何も見えないよ。みんな、ちゃんといるよね?」
ここは通称“暗闇の森”。互いの顔すら見えないこの森では、ランプの灯りは不思議とすぐに消えてしまいます。そのため、この森に入ったら最後。進む道すら見えないため、迷い帰れない者が後を絶ちません。
怯えるリーフの声に答えるように、そっとルナがリーフの手を優しく握りました。
「ほら、こうすれば大丈夫。みんなも手を握り合いましょう?」
「あぁ、そうだな。ほらローズも手を握ろうぜ」
「ーーーうん。フレイの手、あったかい…好き、かも」
ローズの何気ない一言で、フレイの顔はみるみるうちに太陽のように真っ赤に染まっていきます。
「っ!!ほ、ほら行くぞ!」
それをフフッと笑いながらルナは、3人に言いました。
「それにね、真っ暗でみんなの進む道が分からなくても大丈夫!」
そう言い切るとルナは、繋いでいない方の手を上に挙げて叫びます。
「麗らかな春の日差しよ、道を照らす光となれ!」
するとパアァッと突然辺りが明るくなって、4人の上空に輝かしい光が出現したのです。その光はいつまでも消えることなく輝き続けています。
「すげー!これで暗闇の森でも迷わず森の真ん中へ進めるな!」
「さすがルナだね。僕には真似出来ないや」
「ーーーうん、きれいな光…」
3人からほめられて、ルナはちょっぴり嬉しそう。
でもそんな中、ローズの表情は少し寂しげでした。
(ーーーみんな、力を使ってみんなの役に立ってる…なのに私はーーー)
何かを冷やしたり凍らすことしか出来ない彼女の力は、今の寒い冬の季節では役に立つことはできません。そのことが、ローズの心を苦しめるのです。
しばらく森の中を歩くと、目の前が開けてきました。
「あ、見てみんな!塔って、あれのことじゃないかな?」
ルナの指差す方向には、大きな湖。そしてその湖の真ん中に、目的地である塔が建っていたのです。
「とうとう着いたんだな、俺たち!」
「あそこに魔女とルナのお母さんがいるんだね」
ルナもフレイもリーフも、みな目的地に無事着いたことを口々に喜び合っています。
「ーーーでも、おっきな湖…渡れない」
「「あ…」」
しかし小さくか細いローズの声で、3人は湖を渡る手段が無いことに気付かされました。
この湖は通称“凍土の湖”。泳げば身も心も凍ってしまうほどの冷たい水で出来ています。
かと言って船などがあるはずもなく、しばらく4人は途方に暮れていました。
一番弱気なリーフは、ため息をついて呟きます。
「水の上を歩けたら良いのに…」
その一言に、ルナが下を向いていた顔をガバッと上げて、
「それよ!それだわリーフ!!」
「そうか、それだぜリーフ!!」
続いて理解したフレイも、ルナと顔を合わせて笑います。
「ローズ、出番よ!」
「ローズ、出番だ!」
「ーーーへ?」