第1話 ー吹雪の丘ー
「ね、ねぇみんな。ほんとうにここであってるの?」
泣きそうな声でそうたずねたのは、秋の女王様の子供、リーフ。
「な、なさけないぞリーフ!おれたちの不思議な力があれば、こんな吹雪へっちゃらだぜ!」
ビューっと吹く風の音と、ごうごうとうなる吹雪の声に、強がりを見せるフレイの声も震えています。
ここは通称吹雪の丘。一度足を踏み入れたら最後、戻って来れる者などいません。
なぜなら季節に関係なくこの丘には吹雪が吹き荒れて、一歩進むごとにすぐに足跡も消えてしまいます。その上進む道すら吹雪で見えず、皆迷ってしまうのです。
「そうよ、大丈夫よリーフ!私に考えがあるの。あなたの風の力を使って、吹雪を操れないかしら?」
「ぼ、僕がこの吹雪を?!む、ムリだよ!こんなに強い風を操ったことないもん!!」
「ぜんぶを操る必要はないわ。私たちの周りの吹雪を操るのよリーフ!あなたの力が必要なの!」
「僕の力が、必要…」
みんながリーフを見ています。
怖くて、寒くて、震えて…。でもみんながリーフの魔法を信じて待っているのです。
(そうだ、僕たちはルナのお母さんを助けるためにここに来たんだ。こんな所で、止まってられない!)
リーフは大きく一つ頷くと、片手を空に向けて叫びます。
「風さん!僕に力を貸して!!」
その声に応えるかのように、ビュオーッと大きな風が一つ吹いて、思わずみんなは目を瞑りました。
(どうしよう、失敗してたら僕…)
「リーフ…目を、開けてみて?」
小さくか細い声で、ローズがリーフに言います。
そろそろと目を開けてみれば…
「吹雪が!!」
「やったなリーフ!成功だぜ!?ほら見ろよ、吹雪が分かれて丘の上がよく見える!」
「すごい!すごいわリーフ!」
みんなの喜びの声を聞いて、リーフはやる前から諦めずに挑戦したことを、心から良かったと思ったのでした。
ですが風は寒さまで防ぐことは出来ません。
寒さに震えながら丘を進み始ようとした3人を、フレイが元気に呼び止めました。
「待てよ!次は俺の出番だぜ?太陽よ、俺に力を貸してくれ!」
その声と共に、4人の身体が暖かな光に包まれました。
「わぁ、あったかい!」
「すごいねフレイ、ぜんぜん寒くないよ!」
「うん…とても…あたたかい」
こうして4人はリーフとフレイの力を借りて、無事吹雪の丘を越えることが出来たのです。