ープロローグー
初めて童話というジャンルを書いてみました。
なるべく難しすぎない表現を目指したつもりですが、温かい目で見守って頂けると嬉しいです(//∇//)
昔々あるところに、“季節の塔”と呼ばれし塔に春夏秋冬4人の女王様がそれぞれ交代で住むことによって、国にその女王様の季節が訪れる不思議な国がありました。
さらにもう一つ。その国には王族だけが知る、ある言い伝えがありました。
“先の見えない吹雪の丘の暗い暗い森の中。冷たい湖の真ん中に、大きな大きな塔がある。その塔の中には…悪い魔女が住んでいる”
ですが季節が 巡り続ける限り、この魔女は塔を出ることはできません。平和な日々が、過ぎていきます。
そして今の季節は冬。
冬の女王が塔に住み、国は辺り一面銀世界。
降り止むことのない雪がしんしんと全土に降り積もる中、国民達は蓄えていた食料を消費して春の訪れを待つのです。
今年もやがて凍えるような寒さが徐々に暖かさを帯びて、顔を隠していた太陽がそろりと顔を覗かせ、うららかな春の兆しが、国に訪れ始めるーーーはずでした。
ですが…
「春の女王が塔を訪れぬ…これは一体どういうことなのだ大臣」
焦りを含んだ国王の声が、城の大広間に響き渡ります。
「我々も国中を探しておりますが、未だーーー」
「…春の女王が塔を訪れぬ限り、塔の扉が開くことは無い。つまり季節は冬のままだ。このままではいずれ、蓄えていた食料も底をつくだろう。その上急がねばーーー魔女が塔から出て来てしまう」
「悔しいことに、我々だけで全土を捜索するのでは時間が足りません。王よ、どうか国民に触れをお出し下さい!!」
国民が安心してくらせる国を。
それが国王の気持ちであり、願いでもあります。
その気持ちを、ずっと近くで見守って来た大臣も、きっと誰よりも分かっていました。
ですが魔女がいつ塔から出て来てしまうのか、それは誰にも分かりません。数日後か、今日か、それとももう既にーーー。
だからこそ、大臣は国王に“触れ”を出すよう願ったのです。
そんな彼のまっすぐな気持ちは国王の心にもちゃんと届いて、
「…分かった、国民に触れを出す。春の女王を探し出し、見事冬の女王と交代させた者には褒美を取らせよう。よいな、大臣」
「はっ、お言葉の通りに!!」
こうして翌日から始まった“春の女王様さがし”は、国をあげて行われたのでした。
ですが始まってから1日が経ち、2日経ち、そして3日経った頃。国王は再び頭を抱えることとなるのです。
「…見つからぬ。まださがしておらぬ場所は無いのか、大臣」
「い、一カ所だけございます!ですが例の場所でございまして…」
口をつぐむ大臣の様子に、国王はさらに頭を抱え込みます。なぜならその例の場所とはーーー
「…魔女の住みか、か。あそこは何人たりとも足を踏み入れれば最後、帰って来れた者はおらぬ。その上果たして春の女王がいるのかすらも分からない」
そのような場所、一体誰が行くと言うのでしょう。
大広間の誰もがそう思い、下を向いて唇を噛み締めたそのとき、
突然タタタッと広間に近付いて来る複数の足音が聞こえて来たのです。
「「その役目、僕たちにお任せ下さい!」」
姿を現したのは、小さな4人の子ども達。
彼らは春夏秋冬、4人の女王様の子ども達でした。
「おぉルナ、フレイ、リーフ、ローズよ。気持ちは嬉しいが、お前たちはまだ子ども。危ない場所へは行かせられないよ」
「大丈夫!だって私には魔法があるよ。道を照らす、光になれる!」
一番年上の女の子は言いました。彼女は春の女王の子ども、ルナ。光の魔法が使えます。
「俺だって魔法が使えるぜ!みんなを暖める太陽になれる!」
男の子は言いました。彼は夏の女王の子ども、フレイ。炎の魔法が使えます。
「ぼ、僕も魔法が使えるよ!みんなを守る、盾になれる!」
男の子は言いました。彼は秋の女王の子ども、リーフ。風の魔法が使えます。
そして最後は女の子。透き通るようなか細い声で、女の子は言いました。
「私も魔法が使えます。だけど私は…みんなを助けることができないです」
彼女は冬の女王の子ども、ローズ。
使える魔法は氷の魔法。道を光で照らすことも、寒さからみんなを守ることも、みんなの盾となることも、彼女には出来ません。
そして少し寂しそうな顔をして、ぽつりとローズは言いました。
「だけどお母様に会いたいです…」
そんな子ども達の言葉を聞いて、国王様は思います。彼らの不思議な力があれば、たしかに魔女の塔までたどり着けるかもしれないと。しかし彼らは国王にとって、小さくて大切な子ども達でもあるのです。
「おとうさま」
「とうさま」
「とうさま」
「おとうさま」
まっすぐな瞳が国王を見つめて離しません。
「…分かった。気をつけて行きなさい。そして必ず帰って来るのだ。4人とも、頼んだぞ」
「「はい!」」
こうして、不思議な力を持った小さな4人の子ども達は、魔女の住みかがある“吹雪の丘”へと歩いて行ったのでした。